第二章 初依頼7
三人とも時間通りに集まったようだ
「あ、カ、カミト!」
シルフィーが俺を見つけて嬉しそうに手を振ってきた
やあ、と振り返しながらみんなの元へと近づいた
「みんな早く集まってたんだね
待たせちゃったかな?」
「ううん。カミトお兄ちゃんの来た2分前くらいに着いたから大丈夫だよ」
「良かったよ。
女の子を待たせるのは男として悪いからね」
俺達四人は揃って女将さんがいるカウンターの左側の食堂へと向かった。
ちなみに左側は数部屋と2階に続く階段がある
「お、来たね!
今、晩ご飯出すから待っててね」
カウンターの奥から女将さんが現れた
「はい、楽しみにしてますね」
女将さんは、期待してなよ!と奥へ消えてった
食堂には人や頭の上に耳が生えてる種族が数人座っている。何かの話で盛り上がっていた
ここにしようか、と俺達は四人がけのテーブルを選んだ
「みなさん、2時間弱の間各々何をなさってたんですか?」
シルフィーが話題を振り、それから少し四人で雑談していると
「お待たせね〜
今日は歓迎も込めて、少しだけ腕によりをかけたんだよ」
トレーでご飯を持ってきた女将さんが言った
「そうですか
それは早く食べたいです。女将さんのご飯は美味しいって聞きましたから」
「私の事は『ソニア』でいいよ
女将さんだと呼びにくいからね」
「では、これからはソニアさんって呼ばせて頂きますね」
そんな会話をしながら食事が並ぶのを待った
「熱いから気を付けて食べるんだよ〜」
四人全員に配膳し終わったのを確認して、
俺は手を合わせ
「いただきます」
と、言ってご飯を食べようとしたら、三人は不思議な顔をしてこちらをみていた
「ん?みんなも食べようよ
冷めちゃうよ?」
「その『いただきます』って、何ですか?」
そうか、この世界には日本と違ってそういう習慣が無いのか
「ああ、これは俺の故郷の習慣でね
食事を作ってくれた人や食材になった生き物達に感謝するって意味があるんだよ」
「そんな風習があるんですね
じゃあ真似して」
いただきます、と見よう見真似で言い、シルフィーとヒーナが食べ出した。
が、なぜかフィーナが顔をうつむけて食べようとしない
「フィーナ、苦手な食べ物が入ってるかな?
もし良かったら、俺が食べるけど……」
声をかけたが手が動かない。
どうしたんだろうと思って顔を覗き込もうとしたら、
ポロポロ、と涙をこぼし始めた
「ど、どうしたの?!」
声を振り絞りながらフィーナは説明し始めた
「私は、幼い頃から満足にお腹いっぱいご飯を食べられませんでした。人間が私達を連れて行くため、みんな怖くて里の外へと出たがらないんです」
それから、フィーナの話をまとめると
そんな中、フィーナが役に立てるならと挙手して外へ食料調達をしに行った。初めは里のエルフ達も心配してたらしいが、毎日フィーナが帰ってくるのに安心して、徐々に納得していったらしい。
月日は流れ、ヒーナが生まれ、ヒーナと一緒に調達をするようにまでなったらしい。
しかしある日、ヒーナと一緒にいつもと同じように食材を手に入れて里に帰ろうとしたら、森の中で座って休んでいたシルフィーを見つけたんだそうだ。
そこで少し話し込んでいた隙に、あの奴隷商人達に襲われ、ここに連れてこられたらしい。
「なので、私はこんなご馳走を食べた事がありません。ましては、カミトさ、カミトにお金を払ってもらってまで。私凄く嬉しくて……」
「俺はエルフだから奴隷にしたいとか思わないし、種族が違うからって差別もしない。
俺はモンスター襲来時に三人と出会えて、助けて、ここまでの関係になった。全て運命だと思っている」
一人一人の顔を見つめて、そして
「俺はみんなが人間に怯えなくても過ごせるようにしてあげたい。それが俺の望みだよ
今はとりあえず、美味しいもの食べて、寝て、それで四人でギルドの依頼をこなして、っていう平穏な日々を過ごす。それだけで十分。考えるのは先だよ」
俺は今も溢れてる涙が治らないフィーナの口にフォークを伸ばして
「んぐ?!」
食べ物を放り込んだ
俺はみんなと違って、最初から強いからその辛さが分からない。けど、守る事なら出来る。俺に出来ることをするまでだ
「ふふっ
フィーナ、ご飯冷めちゃうぞ。」
みんなも、と言って俺はご飯を食べ始めた
三人ともそれに伴って食べ始めた。
「カミト、ありがとうございます」
フィーナがボソッと言ったような気がした
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