エピローグ一話 邂逅
処女作品です。
誤字、脱字、矛盾などありましたら申し訳ございません。ご指摘ください。
「っ……ん? ここは……」
ぼやけかかった目頭を擦りながら身体を起こす。
次いで鈍った半身を反らしてパキパキ、と気持ちの良い音を鳴らすと左右へ視線を巡らせる。
「……見覚えの無い場所だな」
呼吸音一つ聞こえない空間は、視界全てに闇色が染めらていた。
人の気配も感じられず、ますます自分がここに居る理由が分からない。
「えーっと、確か車に轢かれそうになったお年寄りを庇ったのは記憶にある……ということは、死後の世界なのか?」
俺こと『長谷川カミト』は心の声を無意識に口で言葉にしていた。
大学二年生で二十歳、一応有名と呼ばれる大学の学生。
身長は170cm前後の顔は普通並み、髪は自然体の色でこれといって取り柄はない。
親が政治家で、学校ではいじめられた頃もあった。
趣味というか娯楽は、せいぜい異世界系のラノベを読み漁ることくらい。
「その通りです。ここは俗に言われる"あの世"と呼ばれる場所ですね」
突然、背後から声がしたので反射的に振り向く。
するとそこには、俺と同い年ぐらいの女性がいた。
流れる水のように手入れが掛かった銀髪に、映した者を冷静に分析する瞳。
膨らんだ乳房は、彼女が全身に纏っている無垢な白服の上からでも十分に強調されている。
そして、モデルのように整った顔立ち。
完璧という言葉は彼女に相応しい、そんな女性だと感じた。
「うふふ。褒められても何も出ませんよ?
まぁ、私の美貌に見惚れるのも納得ですけどね」
ん? 今俺は何も言葉を発していないはずだが。
無意識に何か話していたかな?
「これはこれは失礼しました。私にはあなたが今考えていることが、分かるのです」
目の前の女性は、真剣な視線で捉えてくる。
一体この女性は何を言っているのだろうか。
というか、まず誰だ?
「そうですね。名乗るのが先でした。
私は『女神アトラ』俗に言われる神ですね!」
急に神様と言われても何かイマイチピンとこない。
あの世と言ったら、神が審判を下すとかなんとかあるから、これもその一つのなのか?
「ええっと……突然過ぎて話に追いつけません。なので、少し質問をしていってもいいですか?」
「そうでしょうね。
どうぞお好きに質問して下さい」
女神アトラは涼しそうな声で、なおかつ微笑みながらどうぞと言わんばかりの顔をする
「分かりました。それじゃあ、まずなんで俺がここにいるんですか……?」
「ふふっ。それは私があなたをこの場所へと呼んだからですよ」
女神アトラは、俺がそう質問してくると言わんばかりの顔をしていた
「ではなぜ、俺を呼んだんですか?
俺は今世で悪い事した覚えありません……よ?」
少しの間があったのは気のせいだ。決して何かあったわけでは……ない。無いはず!無いはずだよね?!
「それはあなたは私が管理する世界に適合したからです。このところの一千年間は適合者が現れなかったんですよ〜。もう、見つけた時は嬉しくて思わず叫びましたね」
世界に適合? 一千年間? 話の方向がぶっ飛びすぎている。
しかし、彼女が冗談を言ってるようには思えないが……。
「私の説明が下手でしたね。
あなたは私が管轄する世界『リトラス』に適合したのです。適合というのはリトラスに入れることが出来るという事です。」
まだやっぱり理解は出来てない部分はあるが、 要するに、今話してることはガチってことか。
ライトノベルを良く買って読み漁っているため、そのような展開だと言うことは分かった。
「そのえーっと、『リトラス』に入る事が出来るから俺を呼んだって解釈で問題無いですか?」
「えぇ。話が早くて助かります。
なのであなたにはリトラスに是非、いえ!!
絶対に入って貰わないといけないのです」
身を乗り出してこちらに訴えかけてくるのでカミトは背を逸らす
「な、なんで俺だけがリトラスに入る対象なんですか?」
「それは先程説明した世界に『適合』したからです。カミトさん以外の方は『リトラス』に入ろうとすると、途端に突然死します」
「どういうことですか?」
「それが原因不明なのです。しかし、稀にカミトさん見たいに入っても死なない方がいらっしゃるのでお呼びしているんです」
それって本当に俺が入っても大丈夫なのか?
でもまぁ神様が言ってるんだから間違いはないか。
「『リトラス』には肉眼ではみられない、毒ガスみたいなのががどこからともなく発生します。
そして、少しずつ世界を覆っていくのです」
「それって摂取して害が無いんですか?
流石に俺は、そんな毒を吸いに行きたくは無いです……」
「その点は安心して下さい。今から説明いたします」
女神アトラは微笑むと、口を再び開く
「毒ガスが一定の量を超えると、少しずつ大地が緑を失い、最期は枯れ果てます。更には人に限らず、全生物の命をも食い尽くしていくのです」
目を伏せ、悲しみに閉ざされたかのような声を振り絞りながら女神アトラは説明した。
自分の世界。いわば子供みたいな感じなのなのかもな……
俺は黙って聞くことしか出来ない
「そうならば、手遅れになり世界ごと破滅するでしょう。そんな事態を防ぐため、カミトさんには『リトラス』に入ってもらう必要があるのです」
胸に両腕を合わせ、伏せていた目を俺と視線を交差させる女神アトラ。
鳥肌が立つ。放たれるプレッシャーが凄いのだ
「仕組みは分かりませんが、毒ガスを薄める効果が異世界人には備えられています。なので、カミトさんみたいな人が欲しいのです」
「……話の大まかな内容は理解出来ました。俺が入らないと、世界は滅亡するということですね」
「はい。その通りですね」
頭で肯定する女神。
俺は手に顎を立て、言葉を発する
「では、もし俺が断った場合はどうするんですか? 無理矢理にでも、入らせるんですかね」
「そうですね……私も無理強いをしてまで、わがままで振り回すのは、良くないと思っていますので。先方の意見を尊重します」
そこまで言い切ると、女神アトラは首を傾げた
「どうされました? 突然笑いを堪えてますけど……」
あぁ、嬉しさのあまり顔に出てしまっていたか。
話の途中から、俺が異世界に行けるって分かって嬉しさが止まらないんだ。
なにせ俺は一応ラノベオタクを自称している。
地球だとモテなかったが、異世界ではハーレム作れるか、なんて妄想を膨らませたり。
男子諸君なら一度はあるだろう。
ーー既に答えは決まっているようなものだ
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