表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

アリサの事情

久々に肉を食べれる!そう思っていたのに、このクマ恐ろしく逃げ足が早くて、めっちゃ苦労した。


もう3日ろくに食べてないし、絶対こいつで胃袋を満たしてやる、と思ったものの、このまま逃げられると追う体力もなくなるところだった。


カツカツだったが、スキル使う余力があってよかった。


血抜きしたいところだが、生憎とそんな余力はない。


解体用のナイフを取り出して、取り敢えず食べれそうなところから皮を剥ぎ、肉を切り出していく。


まずは腹ごしらえせねば何も始まらないのだ。


急いで火をつけて、切り出した肉を焼いていく。


少し焦げてしまったが、許容範囲だろう。


「うまあああああい!」


焼いただけだし焦げてるくせに生臭さがあり、とぶっちゃけ味はまったく良くないのだが、空腹は最大の調味料。


涙が出てきた。


---

ドワーフの国である、トライゼンは海を挟んで遥か南方にある独立国家だ。


ワタシの名前はアリサ。ドワーフのアリサ。


可愛い名前でしょ?可愛いって言え。


見た目と違っていい年だろ?とか思った奴、夜道には気をつけたほうがいいだわさ。


自慢はこのドリルヘア。


ドワーフのくせにドリルヘア?って思った奴、属性てんこ盛りとか言うな。


国を出たあとにこの髪型にして以来、正直面倒だと思ったことも一度や二度ではないが、普通の服を着ると知らない人がお姫様扱いしてくれることに快感を覚えてからは、面倒だと思っても頑張って維持していた。

決してお子様扱いではない。


むさくて酒臭い髭面どもに囲まれてるのが嫌になって、冒険者として旅立とうと思ったわけだが、ドワーフで冒険者を志すものは殆どいない。


皆無と言ってもいいぐらい。


ドワーフという種族は種族特性でアイテムボックスというスキルもあるので冒険者には向いているのだが、様々な事情で国外には秘匿されており、もっぱらインゴットを格納したり、鍛治に利用されるのみである。


だいたいは国の中で一生を終える。


それがなんで今やこんな木しか生えてような遥か遠くの国の山の中にいるのかと言うと、ちょっとした手違いがあったからだ。



発端はトライゼンを出たあと、人間の街に到着して冒険者登録しようとしたことから始まる。


登録が終わってクエストを探していると、自称先輩冒険者から声をかけられた。30前半ぐらいの人間の男性だ。


「見かけない子だね。初クエストを探してるのかな?」


この時は鎧ではなく普通の服を着ていたため、子供が背伸びして冒険者登録して、クエストを探してると思われたのだろう。


「そうなんです。どれがいいのかわからなくてぇ」


媚び売る必要もないだろうが、一応当たり障りない反応を返すと、何かを考えていたその男は、カバンから紙を取り出し、


「このクエスト、今受けようと思っていたんだけど初心者向けだから良ければ譲るよ」


とワタシに向かって差し出した。


中身を見てみると、薬草採取のクエストで、数人でまとめて移動して特定の場所で採取に従事する、と言ったもののようだ。


採取系にしてはそこそこのお金をもらえるようだし、1人じゃないのも初クエストには確かに悪くはないかもしれない、と思ったのが間違いだった。


カバンから出してきた時点で怪しいと思うべきだったが、それは後の祭り。


クエストは本来受注してから人に受け渡す事はできない。クエストカウンターで成功なり失敗なりの報告をしてから改めて張り出されているものを受けるものだ。


その男は手続きは自分の方でしておくから、とワタシの登録したばかりの冒険者カードを借りて行って、カウンターで何か受付に話をしていたかと思うと、こちらに向かって手を振ってきた。受付もこちらを見ている。手を振り返すと、暫くして戻ってきてワタシに依頼票と冒険者カードを手渡した。


待ち合わせ場所に行ってみると、粗末な馬車があり、その中に数名の子供が乗っていた。


それぞれ粗末ながらも冒険者に見える装備をしていたので駆け出し冒険者なのだろう。


薬草採取とは言え、郊外には魔物が出ることもあるので当たり前の心構えだ。ワタシも採取クエストなのでフルプレートではないが、革鎧をつけている。武器の類はナイフを携行してるだけで、アイテムボックスの中だが、まあ使う機会もあるまい。


そのまま馬車に乗ると、御者の男が水を手渡してきた。


「採取場所に着いたらおしらせします。では出発します」


まだかなあ、と思っていたら、いつのまにか寝ていた。



…起きたら奴隷として売られてた。



ドワーフだと気付かれなかったのが幸いして、縄は引きちぎって逃げてやった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ