森の中のドワーフ
おひさしぶりです。
山じゃなくて森だし、斧じゃなくてハンマーだった _( _`ω、)_
「なんだって?」
聞き間違えかと思い、ユマに尋ね返す。
「だから、森の中で、ドワーフをみたんです。何かを追ってたみたいで、すぐ見失っちゃったんですけど」
どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。
ドワーフ自体は珍しくはない。ただこの辺で見かけるはずがない、というだけで。
良くも悪くも一年を通して寒暖差が激しいこの地域はドワーフが生活するには向いていない。
小柄な彼らは南方が主な生活圏で、そして非常に排他的だ。鍛治を主な生業にしており、里から出ることも少ないため、彼らの生息域以外で見かける事は殆どないのだ。
ユマが見たと言うのはほんとにドワーフだったんだろうか。
そう疑問を口にすると、
「間違いないです。鎧着て大きな槌を抱えてたし、子供じゃないですよ」
冒険者が紛れ込んだのか?
レアなケースではあるが、ドワーフの冒険者というものも存在はする。それでも彼らは寒さを嫌がるし、この辺りに来る事はほぼないはずなんだが…
ユマを見ると、ワクワクしている。この子は村から出たことがないから初めて見たドワーフに興奮しているのだう。
「冒険者ならこの村にも来るだろう。その時は歓迎してやらないとな」
そう言うとユマはニッコリ笑って、
「ドワーフさんの冒険のお話聞きたいから楽しみ!来てくれるといいなぁ」
とそう言った。
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一方、森の中。
そのドワーフらしき影は、自分の何倍もあるかのようなクマの魔物を小一時間追いかけ回していた。
傍目には幼女がクマを追いかけてるようにも見える異様な光景だ。
実際には身体が小柄なだけで、成人ドワーフなのだが、身体的な特長だけ見れば幼女判定されてもおかしくないだろう。
ヒゲもないし、胸周りもそれなりだ。
やたら頑丈そうな鎧とハンマーがなければドワーフだとわからなかったに違いない。
両手両足をかって必死に逃げるクマは身体のあちこちに打撲跡が出来ていた。
傷をつけた相手は後ろから追いかけてくるドワーフだ。
「いい加減観念しろ!」
彼女はそう叫ぶと、何かのスキルか、一段と加速してクマに追いつき手に持ったハンマーを頭の上から思い切り振り下ろした。
壮絶な打撃音が鳴り響き、かわしそびれたクマはもんどりうって倒れ込んだ。
「やっと仕留めれたあ!久々のおにくだわさ!」
いい笑顔でハンマーを下ろして、一息つくと、徐に解体用のナイフを取り出して、解体しはじめた。