逃避
「ひっ」
思わず声が出た。びっくりした。目があった。
さっき寝返りうったときは気がつかなかったが、動物の死骸?…なんだろうか。なんでこんなのがあるの。物凄い形相でこっちを見てるけど、ピクリとも動かない。よくみると周りにドス黒いものが飛び散っている。
慌てて立ち上がろうとするが、やっぱりふらついてうまく体が動かせない。それでもなんとか立ち上がり、自分の格好に改めて気付く。
どう見ても家を出たときの格好じゃない。普段ジャージだし。ワンピースのような服だけど、どう見てもコスプレしてる感じの服装だ。いや、これもワンピースの一種なんだろうけど!って誰に言い訳してるんだわたしは。ちなみにコスプレなんてしたことはない。
体もなんだか小さくなってる気がする。手を見てみると、学生の頃のような綺麗な手をしている。
服にはなにかこびりついてる。体に痛みはない。傷は無さそう。こんなところに寝かされてたから少し覚悟をしていたけど、ざっと体を調べる感じそういうこともなさそうだ。まあわたしみたいなのに興味あるのはよほど趣味が偏ってるだろうしな、って無駄に卑屈な気持ちになる。っていうか自分の体じゃなくないこれ。
とりあえず死骸のそばからフラフラと離れ、木に寄り添うようにして座る。
頭の整理をしようとするけど、うまく頭が働かない。とりあえず…
…寝ようかな。
多分リアルな夢だろうから目が覚めるかもしれないし。いい考えのように思い、奥の人目のつかなさそうな場所に移動して木に寄りかかりながら、わたしはそっと目を閉じた。