空を飛ぶ夢
子供の頃はよく空を飛ぶ夢を見ていた。
フワッと空に浮き上がり、ゆっくりと、時々早く空を飛び回る。不思議な体験だった。今考えると実際は寝てるだけで飛んでないはずなのに、本当に外を飛んでるような浮遊感があった。寝てるだけでも楽しかった。
大人になり、夢を見なくなった。
毎日通勤電車で往復して風呂に入って寝るだけの生活。離婚してからは特に通勤時間が堪らなく嫌になった。なんのために働いてるのか分からなくなってしまった。なので仕事を辞めた。
ゲームをまたするようになって、また夢を見るようになった。こんな時間いつまでも続くとは思っていなかったが、楽しい思い出も増えてきて、現実のことをいっとき忘れることができた。そんなある日、よく一緒に遊んでた子からリアルで会ってみないかと誘われた。
正直会いたくなかった。その頃には人と顔を合わせなくなってから1年ぐらいたっていた。何よりもう自分は結構いい年だ。あってもガッカリされるだけだろう。もう現実でがっかりされるのはいやだ。
そう思い最初は断っていたが、あまりにも何度も誘われるため、根負けして一度会うことになった。
池袋の水族館にいくことになり、待ち合わせし、共通の趣味の話題で意外に楽しかった。その後も何度かあったりしていたが、しばらくたって、連絡がこなくなった。ゲーム内でも連絡が取れない。心配になって連絡してみるが反応がない。
一緒に入っていたチームもいつの間にか辞めていた。一緒にカフェに行ったときにあった人のいるところに移籍したらしい。何も聞いてなかったのでショックだった。しばらくして、その人がやってきて少し話をした。
「その子に聞いたんだけど、お金ないんだって?」
一瞬なんのことかわからなかった。どうやら自分の私生活のことをその人達に話したらしい。加えて、ネット掲示板で悪口を流されていた。ショックだった。自分から誘ったことになってたり、全部根も葉もない話ばかりだった。
唯一の居所だったゲームもやめた。
現実逃避すら出来なくなり、わたしは意識朦朧としてフラフラと外に出かけたところで意識が途切れた。