無計画者の一生
これは現実じゃない。
それはわかってる。なのに、夢の中なのに苦しい。現実で居場所がないのに夢の中ですら居場所がないのか。でも現実の方がもっとつらい。ならばもう少し夢の中で微睡んでいたい。夢なら1つしかない現実と違ってまた新しい世界が見れるから。
アラームの音で目が覚める。
今日も会社に行かなければならない。会社にはもう居場所がない。
子供の頃は自分のことを頭がいいと勘違いしていた。親も褒めるし成績だってたいして勉強してなかったけど悪くはなかった。といっても、実際には中の上ぐらい。数学は得意、運動は苦手、大学には現役で受かった。
大学では勉強しなかった。親元を離れ、受験勉強の反動でたがが外れたようにゲームした。単位を落とし、留年して5年かけて卒業した。
就職活動はゲームしてたせいで出遅れた。ゼミの先生の紹介で就職したが、3ヶ月でやめた。
なんの根拠もなく何者かにはなれると思っていたわたしの甘い人生設計は、すでに崩壊し初めていた。
それから10年、チャットで知り合った相手と結婚した。初めて自分が何者かになれたようで嬉しかった。一生愛していこうと思った。経済的には楽ではなかった。それでも小さいながらも家を買い、なんとか生活していた。
仕事は辛かった。要領のいいやつにいいとこだけ使われるようなことが多かった。いつも最後は思ったより使えないやつ、って評価されるのが辛かった。それでも家庭があれば耐えられると思った。
それから10年、離婚した。きっかけは些細な喧嘩だった。子供もいたがあっさりと奪われた。相談できる友達も知り合いもいなかった。
わたしには何もなくなった。
仕事を辞めた。
保険を解約して貯金が尽きるまで引きこもった。やりたくても我慢してずっとやってなかったオンラインゲームを始めた。ゲームで出会う見知らぬ人達は優しかった。徐々に現実と向き合うことをやめ、ゲームの中に没頭し始めた。