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柳内警備保障秘書課別室  作者: JUN
6/45

注目(1)噂

 無事に客を送り出し、まずはホッと息をつく。

 有名歌手のコンサートの警備を請け負っていたチームから手が足りないと言われ、別室が手伝いに来たのだ。交通誘導、不審物のチェック、館内での巡回。

「疲れたぁ」

 涼真と湊は手分けして、トイレに残っている人や忘れ物がないかをチェックしていた。女子トイレは、悠花と雅美だ。雅美がどちらのトイレを受け持つべきかは意見がまとまらない所かも知れないが、取り敢えず、「美女」にしか見えない雅美が男子トイレに入ると、間違いなく騒ぎになるだろう。

 涼真は腰をトントンとして、

「異常無しっと」

と呟くと、トイレを出た。そして、次を目指す。

 その足が、止まった。

 数十メートル程先の廊下の角に立ち止まっているのは、一般人にも有名なカメラマンだ。その彼が、同じようにチェックして歩いている湊を見つめている。

 と、声を上げた。

「恵梨香ちゃんの息子さん?」

 それで、湊も足を止める。そんな湊に、彼は近寄って行った。

「ああ、若い頃の恵梨香ちゃんにそっくりだな。一目でわかるよ。

 柳内さんも元気?」

 余程嬉しいのか、大声で言いながら、肩や腕を叩いている。それに対して湊も何か答えているようだが、声の大きさが普通で、聞こえない。

 少し喋って2人は別れ、そこで湊は涼真に気付いた。

「そっちはどうだ」

「異常無しだよ。

 今の、有名な写真家だよね」

「らしいな」

「知り合いなの?」

「親が顔見知りだったらしい。よくは知らないな。

 次、行くぞ」

 湊はあっさりと言って、仕事の続きに戻った。


 仕事を終えて会社に戻ると、悠花はトイレに立った。これが異動後の初仕事で、以前の経理の仕事に比べて、当然だが体力が必要だと実感させられていた。

(体力作りをしてみようかしら)

 個室を出ようとした時に女子社員が入って来て、その中に財務課の時の先輩の仲間がいるのに気付いて、出るのを躊躇し、彼女らが去るのを待つ事になった。

「秘書課別室って、社長の一存でできたじゃない?」

「ああ、そうね」

 聞こえて来た内容に、ドキッとする。

「社長が愛人に産ませた隠し子のために作った部署って噂、本当かしら」

「愛妻家のあの社長がとは思うけど……」

「それがカモフラージュかも知れないわよ」

「だとしたら、今年入った2人のうちのどちらか?」

「竹内さんって事もあるわよね。異動が目的とか」

「だったら、木賊さんもじゃない?性別の事で、どこの部署も使いにくいって、人事課でも孤立してたし」

「それだったら、錦織室長も噂があるわよ」

「え。年齢がおかしすぎるでしょ」

「隠し子じゃなくて、同性愛疑惑。責任をとって辞める土壇場での新部署でしょ。錦織室長を辞めさせないためのものだったんじゃないかって」

 聞いていて、悠花は驚きの声を上げそうになって危うく堪えた。

 その後彼女らはひとしきり噂話をして、トイレを出て行った。

(え、隠し子?愛人?え?)

 混乱しながらも、今の噂の内容を反芻し、

(仕事には関係ないわ。プライベートは、別、別)

と、鏡に向かって己に言い、廊下に出た。

 と、それを見た。

 柳内と錦織が親密そうに談笑している。

「どうだ?不備はないか?」

「いいえ、ないです。ただ、会社の冷蔵庫にビールはどうかと」

「ノンアルコールだぞ?それに、仕事終わりに乾杯とか」

「よその部署でやってたらどう言います?」

「……社外で飲め?」

「そういう事です」

「ちぇっ。社内だったら俺がたまに混ざっても違和感が無いと思ったんだがなあ」

「あるでしょうよ、それは」

 2人は言いながら、歩いて行く。

 悠花は訊いたばかりの噂を思い出し、動揺してきたのだった。



 



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