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prologue
この世界には嵐がない。干害もない。病も、人食いの獣も、何もーーー、人を害するものがない。ただひとつの、例外を除いて。
それは影のように静かに、死のように確実に、首を刎ねて持っていく黒い怪物ーーー、人はそれを首狩りと呼ぶ。
彼奴らを駆逐し、この世界から取り除こうという試みは多々行われ、その悉くが失敗した。この不条理は、われわれがなにをしようとも首を盗んでいくのだ。
我々は、この不条理を受け入れるのしかないのだ。
…という諦念を、
神こそが、首狩りなのだ。
...という逃避を、抱いて生きねばならないのだ。
「否!我々は如何な不条理に対しても、反抗せねばならない!」
その、口先ばかりの、形而上の反抗は、やがてある形を為した。
彼と、その遺志を継ぐ者たちを、首守りと云う。