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異世界転移名探偵 ~快刀乱麻に事件を解決~  作者: 春華
ウィンク屋敷殺人事件
3/13

安楽椅子探偵

「…む?」


ここは… 牢の中か?

…捕まってしまったようだな。

牢の外に設置してある窓から日差しが射し込んでいる、朝だ。

どうやら、朝まで気絶していたようだ。


「お、起きたみたいですね」


牢の外で見覚えのあるメイドくんが、強張った表情で私を見張っている。

いきなり警察署に連行された訳ではなさそうだな。


「メイドくん、ここは家の中かい?」

「…お、お屋敷の牢部屋です」


ふむ、ここは屋敷だったのか。メイドや執事がいるのも頷ける。

…ということは、被害者は著名人だったのだろうか?


「君、被害者のことを詳しく教えてくれないか?」

「し、知らばっくれて…! この殺人者!」


吃音の多いメイドくんはプイッ、とそっぽを向いてしまった。

やれやれ… 聞く耳を持ってもらえないな。

仕方ない、現状を把握することにしよう。


手錠と足枷がかけられていて、身動きが取れない。

おや? 腰のホルスターに銃が入ったままだ。取られていると思ったのに。

…まぁ、この状況で銃を持つことは不可能だが。


…私を見ようとしない、メイドくん。

栗色の髪の毛に、緑色の目、彫りの深い顔立ち、どう見ても日本人ではないな。


また、彼女は靴を履いている。日本の家屋で、家の中でも靴を履いているのは珍しい。

勿論、日本でも靴を履いたままの家はあるだろう。ここは屋敷のようだし、尚更だ。

だが、窓から見える家…

中世ヨーロッパの頃にあったような風貌だ。

少なくとも、日本ではほとんどないだろう。


ここは日本ではないな。

どうやら、私は眠っている間に外国に連れてこられたようだ。


…となると、どうしてメイドくんは日本語を喋れるのだろう?

彼女だけではなく、執事さんやコックくんも日本語を喋っていた。

やっぱり、メイドくんには色々と聞いてみたい。


「メイドくん、ここは何という国だい?」

「………」


参ったね… 完全に犯人扱いだ。

まずは、彼女の疑いを晴らさないといけないだろう。


「…君は、私がご主人を殺したと思っているのかな?」

「………」


…ここは少し、ハッタリを使おう。


「私が犯人だとして、血痕はどうしたんだい?」

「…え?」


メイドくんが、私のほうへ振り向く。

よし、彼女の興味を引けたようだ。


「凶器は死体から引き抜かれていた。当然、激しく出血したはずだ」


十中八九、犯人は帰り血を浴びただろう。


「私のコートに血痕は付着しているかね?」

「な、ないです…!」


メイドくんは牢越しに私に近づいて、座っている私にあわせてしゃがみ込んだ。

まじまじと私のコートを見つめている。


「私は事件現場からここに連行される間気絶していた。当然、着替えなどする時間など存在しなかった」

「………」

「当然、この部屋を見張っていた君なら、私がこの牢で着替えるのは、不可能だと知っているだろう?」


まぁ、実際は殺人現場の床には一切の血痕が無い。

方法はわからないが、凶器が引き抜かれても出血はしなかったと考えるべきだ。

おそらく、真犯人にも血痕がついていない可能性が高いだろう。

つまり、服に血痕がついていないのは、真犯人ではない証拠になりえないのだが…


「あ、あなたは犯人じゃない、ってことですか?」

「うむ、その通りだ」


…私は飄々とした顔で頷いた。

メイドくん、騙されてくれたまえ。


「で、君に聞きたいことがあるのだが…」

「そ、それじゃあ!」


む!?メイドくんが急に慌てて飛び上がった!


「た、たたた、大変です!あと数時間で警備兵がこのお屋敷に!」

「何だって!?」

「あ、あなたが犯人として連行されちゃいますぅ!」


こ、これは最悪にまずい状況だ!

私が犯人として連行されれば、真相は闇の中…

探偵として、それだけは許せない!


「ど、どどどど、どうすれば…!?」

「…真犯人を見つけるしかない」


警備兵がこの屋敷に来る数時間の間に、この事件を解決する!

それしかこの状況を打開する方法はない…!


「私は海東乱馬、探偵だ。ご主人の無念を必ず晴らしてみせる!ここから出してくれ!」

「え、ええっ!? け、けど…」


メイドくんは困ったような顔で考えこんでいる…

くっ…! 流石にそこまで私を信じられていないか…!


「ならば、君が持ってくる情報を元に、牢の中で推理する!それからばどうだ?」

「…そ、それだったら…」


私は安楽椅子探偵ではなく、自ら調査するのをポリシーとしているのだが…

この状況では文句を言っていられない、この牢の中で事件を解決する!


「よし!それでは早速、情報を教えてもらおうか」

「な、何をですか?」


ふむ… 事件がどういう流れで判明したか気になる。

それに、私は容疑者を知る必要があるな。


「そうだな… 事件発覚から、今この時間までの詳細を教えてくれ。それと、このお屋敷に住んでいる人物についてもだ」

「わ、わかりました」


彼女は頷いて、事件の流れを話し始めた…


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