名探偵、華麗に事件を解決
…満天の夜空の下。
犯行現場となった、空き地。
いわゆる、シャーロックホームズスタイルの服装をしている探偵… 私がいた。
空地には私以外に、警部くんと、その部下の警察官が何人か…
…そして『夜の帳殺人事件』の犯人がいた。
「犯人は本松 天藤! 君だ!」
私は犯人に、指を突き付ける!
…犯人は、くやしそうに歯を食い縛る。
「く、くそがああああああ!」
む!?
激情した犯人が、懐からナイフを取り出し襲いかかってきた!
「ら、乱馬!」
警部くんの慌てた声が聞こえてくる。
やれやれ、警察なんだからこうなる前に私を守ってほしかったよ。
…それはともかく!
「くっ…!」
急な攻撃をかわしきれず、左腕を切りつけられてしまった…
…が、私はその左腕で、ナイフを持った犯人の腕を掴んだ!
「どっせい!」
私はもう右手で犯人の胸ぐらを掴み、投げの体制を取る!
そして、犯人の勢いを利用し、いわゆる背負い投げの形で犯人を地面に叩きつけた!
「ギャッ…!」
投げられた衝撃で、犯人は気絶した。
…かじった程度の初心者だが、柔道をやっていたのだよ。
「か、確保ー!」
「はっ!」
警部の一言で、警察官が犯人を取り抑える。
…これで『夜の帳殺人事件』も解決かな。
「乱馬、大丈夫か!」
「警部くん、私は問題ない」
…とは言っても、中々大きな切り傷をつけられてしまった。
血がダラダラと垂れている。
「医療班!」
警部くんの命令で1人の警察官が私に近づき、腕を治療し始めた。
「…まったく、お目こぼししてやってんだからそれを使えよ」
警部くんが私の腰を指差す。
コートに隠れて見えはしないが… ホルスターに入った銃ことを言っているのだろう。
「ははっ、すまない。どうもギリギリまで使う決心がつかないんだ」
私はこれまで数々の難事件を解決してきた。
…それと同時に、何度も命の危機に晒されたのだ。
それを心配した警部くんが、特別処置として渡してくれたのだ。
「私がコレを使ったら、警部くんは後処理が大変だろう?」
「そりゃそうだがよ… というか警部くんって呼ぶのをやめろよ」
警部くんが不満そうにぼやいた。
まぁ、かれこれ5年の付き合いになる。
確かに他人行儀だが…
「すまない、人の名前を覚えるのが苦手でね」
「ヒデェな…」
いや、流石に警部くんの名前は覚えているよ。
確か… えっと、不破 雷銅だったはず。
…まぁ、咄嗟に思いだせないから、警部くん呼びなのだが
「乱馬さん、治療できましたよ」
「む、すまない」
雑談をしている間に、治療が完了したようだ。左腕が包帯でグルグル巻きにされている。
「さて、そろそろ私も帰らせて貰おうか」
「もう深夜だ、電車は動いていないぞ」
「近くに宿を取っている。問題ない」
歩いて15分もしない場所だ。
今日はそこに泊まって、朝になったら家に帰るとしよう
「それでは、ブエナス・ノーチェス!」
「おう、またな」
…警部くんと別れた私はしばらく歩き、宿へとたどり着いた。
私の名前は海東 乱馬。
5年前、彗星のごとく日本に現れた、探偵だ。
数多もの殺人事件を解決し、何人もの怪盗や怪人と戦った。
そして、いつの間にか『名探偵』と呼ばれるほど、有名になっていたのだ。
今や、日本で私の名前を知らないものはない。それどころか、海外にもその名は広がっている。
そのおかげで、たくさんの依頼が来るのでとても嬉しい。
そんな私だが、今日泊まる宿は大分ボロっちい。
今日泊まる部屋に入って、ため息をついた。…スペースが2畳しかない上に、ベッドと机と椅子でぎゅうぎゅうだ。
理由は、昨日になって今日泊まれる宿を探し始めたからだが…
…やれやれ、だから私は生活レベルが低いと馬鹿にされるのだ。
私はトランクから予備の服を取り出す。
切られてしまった服と、全く同じ衣装だ。
その衣装に着替えるついでに、左腕の包帯を交換する。
む、1人じゃやりづらいな…
…触らなければいいか、包帯をつけるのは諦めよう。
椅子に座って、記帳を机の上に置く。
私は解決した事件を記録しておくのだ。
…よし、記録完了。
…しかし、ふわぁ… 眠くなってきたな。
ベッドに行くのも面倒くさい、椅子で寝るか…
…ぐぅ。