第20話 階層破壊の始まり
井戸を抜けると、見知らぬ人がいた。
小さな部屋のようなところだが、数十人は十分に入れるほどだった。
「ここは…」
「どこ?」
父親たちは透明な壁のような向こう側に立っていて、俺たちのところへ来ることはできないようになっているようだ。
「お前たちは有資格者なんだ。だからこそこの壁の内側に入ることができた」
「父さん、どういうことだ」
「すぐにわかるさ」
その時、向こうのほうから俺たちは呼ばれた。
「あなたたちは?」
その女性は、アスール・スペシアと名乗っていたが、身長30cmぐらいの妖精に見えた。
俺たちは、その場にいる人たちに、自分たちの名前を名乗った。
「さて、どうなってやがるんだ…」
面々を見回してみても、俺が知っている人はほとんどいない。
壁の向こう側にいる父親たちと、俺の背中で縮こまっている二人の姉妹ぐらいだ。
「私たちがいた世界以外からの人たちが多いみたいだね」
「というか、ほとんどそうみたい」
姉妹と俺が話していると、瞬きをしたときのように、一瞬辺りが暗くなり、一人の老人が立っていた。
「それは、君たちにしかできないことがあるからだ」
その人が叫ぶ。
「何をするつもりなんだ!」
誰かがその人に向かって叫び返した。
「…汝、我が望みを叶え、世界を再び一つにせよ。全ての階層を統一し、何人たりとも我が命に叛く事の無き様にせよ!」
その人が叫ぶと同時に、バンッと音が鳴り、白い蛇が部屋の中央に落ちてきた。
別の人がその蛇にひもを巻きつけると、蛇は人に変わった。
「レオ!」
女子が叫ぶ。
それからのやり取りはほとんど聞こえなかったが、あっという間に終わった。
なぜなら、床が割れ始めたからだ。