第19話 他階層への入り口
「ここって…」
俺は、父さんに聞いた。
「禁じられた聖地、層状になっている空間を飛び越えるために必要な井戸だ」
空井で底が見えない井戸が、魔法人が書かれた部屋のすぐ隣にあった秘密部屋にあった。
「教師は、この世界を征服するつもりだ」
姉妹の父親も来ていた。
「どういうこと…?」
「この宇宙は5つの層からできている。それぞれの層は、第1階層から第5階層の守護者によって守られていた。だが、ある時、その層の壁を取り払い、相互に行き来をしようという動きができた。それが、塔だ」
父さんが、ずっと話を続ける。
「その塔の守護者は、誰なんだ」
「俺たちだった。今は違うがな」
姉妹の父親も話し出す。
「この守護者という地位は、世襲制なんだ。さきほどの集められた12人は、それぞれその資格を持っている。だが、そのなかでもとくに重要なのが、ここにいる3人、つまり君たちだ」
「俺たちだって?」
「そう言ったぞ。さて、塔の概念的な構造はさておき、おおざっぱに説明をすると、沿う同市の相互の行き来のために作られた塔なんだが、そこに魔力の源泉たる泉を作り、その塔を維持することにした。だが、そのようなものがあるという話を聞きつけた者たちが、塔を乗っ取ろうとした。それが1000年前の出来事だ」
「教師が言ってた、1000年も待ったって言うのは…」
「その時のことを言っているのだろう。まさか、あの人がかかわっていたとは思わなかったが…」
「別の層の人たちは…?」
「彼らもこの異変に気付いているだろう。もっとも、気付かなかったとしても強制的に集められるんだがな。それも自然な形で」
井戸を覗き込み、何か呪文を唱えている父さんに代わり、姉妹の父親が話を続ける。
「この階層は第5階層といわれる。もっとも源泉に近いところだ。だが、各階層の長たる存在は第1階層より選ばれることになっている。今は少女だと、聞いているな」
そこまで話した時、俺の父さんが詠唱を終えた。
「行くぞ。ここからは、塔で戦うことになる。直接第5階層まで飛ぶぞ」
言い終わると、井戸の中に足から飛び込んで行った。
「俺たちも行くぞ」
俺が言うと、姉妹たちは緊張した面持ちで一緒に飛び込んだ。