全てに絶望した男
俺は何故こんなにも辛い状況に陥らなければならなかったのだろう。特に高望みをした覚えもなければ、努力を怠ったという覚えもない。毎日を懸命に生きてきたという自信はある。しかし、
「はぁ.....こんなの、もうどうすればいいんだよ...」
俺の手元には、一通の通知書があった。
【不合格】
そう大きく書かれたそれは、俺の人生にとって大きな意味をもつものだ。そう、大学の不合格通知だ。どうしてこうなってしまったのか、俺は振り返って考えてみることにした...。
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俺はあまり勉強ができる方ではない。彼女もいなければ、いたという経験すらない。よく考えてみれば、最後に幸せだと感じたのがいつだったかも思い出せない。何故俺にはこんなにも多くの不幸が襲ってくるのだろうと考えたが、結論はどうやったって出やしない。しかし、高校3年の冬休み中の俺は不幸だからという一言では片付けられない問題に直面していた。
「大学入試、か...」
そう、高校3年間のすべてが試される大学入試である。もうそれが目前に迫っている。
「まあ、今まで努力はしてきたし、自分のレベルを考えて丁度いい大学を選んだしな。失敗するはずもないか。」
俺はそう自分に言い聞かせ、受験までの残り少ない日々を過ごした。何も起こらず、無事に合格できる事を願って。
しかし、そんな俺を待っていたのはやはり不幸な現実であった。
朝から少し熱っぽかったセンター試験前日、俺は何かあってからでは遅いと母に勧められ病院に来ていた。
「うーん...。取り合えず検査はしておきましょう。」
そう言うと医者の先生は綿棒を取り出した。
「まあ、多分大丈夫だとは思いますけどね。」
そういって先生は安心させてくれたのだった。
待合室で、早く帰って明日に向けて最後の準備をしなくてはと思っていると、俺の名前が呼ばれた。
「田端玲央さん、田端玲央さーん」
「はい」
俺は気持ち早足で診察室へと入る。しかし、そこで待っていたのは、先生の暗い顔と、インフルエンザという診断結果であった。
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そうして俺は高熱にうなされながらセンター試験を受け、見事に酷い結果を出し、そのまま二次試験まで落ち込みを引きずり、いま手元にある現実と向き合うことになったのだ。
「くそっ....今まで頑張ってきたっていうのに....どうして俺はこんなにも不幸なんだ!」
近くにあった照明のリモコンを壁に投げつける。リモコンが壊れる乾いた高い音が部屋を満たす。しかし、もちろん俺の絶望が和らぐことはない。そのまま俺は現実から目を背けるようにしてベッドへと潜り込んだ。