story;1
「おぎゃあ、おぎゃあ」
赤子のなく声が聞こえる。
かなり近いな。しかし、こどもにしてはいい声だ。
声量も質も申し分ない。
…しかし、どこかで聞いたことがあるような。
俺はそう思いながら目を開ける。
「ねんねんころろ、ねんころろ・・・あら?目、冷めちゃった、廉次?」
そこには、どこか見覚えのある若い女性の姿があ・・・ん?
今、この女性は何と言った?
れんじ・・・レンジ・・・廉次!?
待て、よくよく見れば若いころのお袋じゃないか?…まさか
俺は真横に鏡を見た。
そこには、昔写真で見た幼い俺が映っていた
俺…あかちゃんになってる!?
「けぷっ」
「あら、ようやくげっぷしてくれたわね。なかなかしてくれないから、どうしようかと思ってたのよ」
そう言って笑うお袋。
おふくろは正直言って美人だ。
整った容姿を母親から引き継いだ弟はかなりモテた。
俺は、どちらかというと全体的おやじに似ていて、強面気味な感じだ。
さらによく見ると、今は弟が生まれるまで住んでいた社宅のようだ。
「あー、あうあう」
言葉をしゃべろうとしたが、うまく声が出ない。
赤ん坊だから当然だろう。
さて、・・・これは夢なのだろうか?
俺は確か、車にひかれて死んだ。
・・・と思う。
あの時の記憶があいまいなのだ。
まあ、いい。
とにかく、今特にできることはない。
夢でも、走馬灯ならば覚めるだろう。
・・・???・・・
次に目を覚ますと、俺は白い空間にいた。
ここはどこだ?やはり先ほどのは走馬灯でここは有名な黄泉というところなのか?
俺は周囲を見渡すもそこには何もなく無限に白い空間が続いているだけだった。
「その様子を見ると、過去への記憶転写には成功したのかな?」
気づけば目の前に白いドレスを着た黒髪メガネの文系少女が立っていた。
あなたは誰?
「私?私は文芸の神」
文芸の神・・・?それがどうして俺の前に?
「それは、私が私的な理由で君を使徒にさせてもらったからだよ」
使徒?神の眷属みたいな感じですか?
「それは少し違うかな?正確には神様から任務を与えられてもう一度人生をやりなおす中でそれを解決してもらう人のことだよ」
なるほど・・・しかし、なんで俺が?それと声が出ないのですが・・・
「ああ、それは今の君が魂の状態だから。そしてなんで君かというけど・・・私はネオルス戦記のアニメを完結まで見たいんだ」
・・・はい?え、ネオルス戦記?夏美・・・N&R先生(夏美のペンネーム)のですか?
「そうだよ。せっかく黒幕魔王が出て2期への期待がそう好調だったのに君が死んでしまったせいで、続きが作れなくなったのだから」
えぇ・・・まさかの理由。いや、さすが文芸の神というべきなのか。
「ふふ、やっぱり君は面白い。せっかくもう一度やり直すんだ。変えたい過去があるなら変えてもいいよ。最終的にちゃんとアニメを完結させてくれればね?」
まあ…わかりました。やるだけやりますが・・・
「OK.じゃ、がんばってね!」
神様がそういうと俺の意識が遠のいていく。
とりあえず、将来の職業は声優決定だな・・・
と思いながら俺は意識を失った。