出会いは突然に。
私は、花山莉音。16歳。私は、特別頭が賢くもないし、ましてや運動も得意でもない。
栗山学校に入学してからも、教室ではいつも一人。所謂、ぼっちと言うやつ。当然、学校も楽しくないわけで、不登校になりかけだと、自分は思う。
そして、今日の帰りに、事件は起こった。
スマホで、曲を聴いていたら__________________急に、激痛が体に走った。
「いっ・・・・・!」
私は、無気力にその場に倒れ込み、体を起こそうとしても動かない。体内から溢れんばかりの血。
運転手らしき人が私に向かって走ってくるけど、視界が、ゆらゆらと揺れて私は、目を閉じた。
ああ。完全に死んだのだろうと思った。まぁ、未練はないし、いいかなと思っていたけど、こんなにあっさりと死ぬなんて思ってもなかった。
『・・・貴女は、まだ死んでない』
「は?私は、死んで・・・・」
『死んでなどないから、妾と喋れるのだ』
「ほんとだ。喋れてる?てか、貴女は誰?」
『私は________だ。これから貴女は見知らぬ世界に降り立つだろう。』
「え?どういうこと?それって天国?」
『天国ではないが、まぁ、着いてからわかる。それではな』
「うっ・・・・眩しいっ」
「ここは、どこだろ?」
目がさめると、そこは青空が広がっていて平原だった。
つまり、森しかない。
「大人の人を探そう。そして、住むところを・・・・」
「ねぇ、おねーさんだぁれ?」
「わっ。え?どこ?」
「ここだよ。うしろー!」
「ん?・・・え!?よ、妖精!?」
「うん!ようせい!ぼくは、このもりにすんでいる、ククルよろしくねー!」
「よ、よろしく・・・?」
「で、おねーさんの名前は〜?」
「わ、私は、莉音だよ。」
「リオンっていうんだー!ねーねー、リオンは住むところはないのー?」
「あ・・・・そういえばない」
「なら、このもりの主様のところに行って、挨拶してもらおうよー」
「主様・・・?というか、ここは?」
「主様は、このもりの歩いたところにある湖の主様だよ〜」
「湖!?」
「そして、ここは、ドラゴンが住む世界もちろん人間もいるよ、アンリミナルワールドだよ。
ここでは、ドラゴンと人間が共存し合うところなんだぁ。でも、あまりドラゴンは人間に懐かないんだ。」
「なんで?」
「・・・・嫌いだからだよ。でも、リオンなら大丈夫!!!」
「それこそ、なんで?」
「リオンは、特別だから!!!!!」
特別か・・・言われたことなかったな。少なくとも、生きてた時はね。
なんにせよ、私は普通の平凡な生活をしてきたからね。
「私が、特別・・・?どういうことなのそれ?」
「リオンは、不思議な力を持っている。そこらへんの人間とは違うチカラを」
「そうなんだ・・・」
「リオン!とにかく行こう!主様のところへ!」
「そうだね。行ってみないとわからないもんね」
「うん!行こ行こ!」
「それにしても、平和なところだね」
「・・・ここは平和でも、王国は平和じゃないよ。」
「え?どうして?」
「シュベルツ王国というところなんだけど、そこの王子様が問題なんだ」
「問題?何かやらかしてるってこと?」
「なんというか、ドラゴンを片っ端から手懐けてる。それも、強引に」
「・・・・ひどい。強引にだなんて」
「僕たち妖精も、珍しいから王都には、たくさんの仲間やたくさんの珍獣たちもいる。」
「なにその王子様。全然王子様じゃないじゃん」
「王妃を探してるらしいんだ。未来の王妃を」
「へぇ。誰がなるんだろうね」
「ねぇ、リオン。」
「なに?ククル?」
「僕は、リオンを王都のあんな身勝手王子のところには行かせない。リオンも行かないよね?」
「え!?行かないよ。特に、生物とかに優しくしない人のところには」
「よかった〜!リオンはここに住んでもらうんだからね!」
「まぁ、いいかな。ここの森の中の動物さんは可愛いし、ククルもいるし、楽しそう」
「リオンは、ここにいて!」
「いるよ。ずっとね」
「このもりにはね、ユニコーンとかいるよ。リオンなら、乗せてくれるよ!可愛いから!」
「えっ・・・・可愛いの?わたし」
「ん?可愛いよ!美人さんだし王子が好む女性!」
「え」
「あっ。ごめんね」と、しょぼーんとするククルの姿は、可愛いそのものだった。
わたしは、こんなところに住むのかと思うと、多分落ち着かなくなると思う。
「ついたよ!ここが、湖!」
「きれい・・・・!」
水面は透き通り、湖の中が見える。生きていた頃の湖の中は全然違う。
この湖がなくなったら、どうなるんだろう?きっとわたし、泣きだすなぁと思っていた。
「きれいでしょ。ここの湖」
「うん。きれい」
「ここに、主様がいるよ」
「え?でも、いないよ?」
『ククル。誰なのだ?そこの人間は?あの忌々しい王都のやつか?』
「いいえ!違います!あの、身勝手自己中なクソ王子ではありません!」
なんだろう。今、汚い言葉がこの妖精の口から出たとは信じたくない。
こんなに小さい子が。クソだとか自己中とか言いだすなんて・・・。
『なら、誰だというのだ。』
「あ、あの。私、リオンって言います!」
『リオン?妾は姿が見えん。その水の中に入れ』
「え。服が濡れるけど、いいや」
「大丈夫だよ。怖がらなくていいよ」
「うん。」ちゃぽん
冷たい・・・!でも、なんか、そこまで冷たくなくて足が痛くない。
むしろ、平気?
『おお・・・そなたが、リオンだな?』
「は、はい」
『我の名は、水の龍。アクア・マリンだ。さて、そなたは、不思議な力を持っておるようだな。
特別に、妾のそばに置いてやろう』
なんか、、、上から目線のような気がする。それに、、どこにいるんだろう?
声は、女の人っぽいけど、姿も見えないし………………………。
『すまないな。姿が見えなかったであろう。見せるから、湖の外で待っておれ』
「は、はい」
「どうだったー?優しかったでしょー?」
「いや、優しいかどうかはわからないけど、ドラゴンって聞いてたから、もっと厳ついのかなぁって
思ってたけど、名前も可愛いし予想を上回ったって感じかな」
「ん?厳ついよ?」
「え」
『あ、いたのじゃ。湖の外には出ろといったが、森の外にまで出てもらっては困る。』
「か………………」
『ん?なんだ?か?」
「かわいい!!!!!」
『うわっ!抱きしめるではない!もう少し力を緩めてはくれぬか!』
「ドラゴンって、こんなに小さいんだね!パートナーって感じ!」
『ぱーとなー?相棒じゃないのか?』
「パートナーは、相棒ってことだよ。え、これからずっと一緒にいるの!?」
『当たり前でおろう。あの、王子を倒すためならばな』
え………?たおす?どういうこと?私、勇者になるの!?
い、いやだよ!?絶対にいや!
「リオン〜!落ち着いて〜、勇者にはならないから〜。代わりに魔導士になるんだよー」
「ま、魔導士?」
『妾と、リオンの力を合わせて、奴を倒すのじゃ。大丈夫だ。妾が教えてやるからの』
「魔法使いかぁ、なってみたかったんだよね!」
『その心意気じゃ。ならば、まず住む場所を妾が建てるから見ておくのじゃ。』
「え?建てる?」
「アクア様は、凄いんだよー。」
『それ!』
ドン
「一軒家……割と丈夫な」
『さ、中に入るが良いぞ。』
「お邪魔しまーす。」
「リオン、その言葉なに?」
「家とかに入るときは、必ず言うんだよ。」
「そうなんだー」
『家具とかも揃っておる。ここで、のんびり魔法のことを勉強したら良い。たまには、あの、王都に
買い出しをしなければならないが』
「それなら、アクア様は、ここでお留守番してたらいいよ。私が行ってくるから。」
『お主一人だと、危ない!ククルと一緒に行け。』
「あいあいさー!」
「分かりました」
『さて、お前らは、王都に行って来い。下調べだ』
「では、行ってきますね」
『うむ。あ、これは王都で使える金だ。持って行くといい』
「ありがとうございます。じゃ、行こう?ククル」
「うん行こー!」
『あ、待つのじゃ、服を着替えてから行ったほうがいいぞ。その服だと怪しまれるからな』
「そうか……確かに、異国人みたいだもんね。でも、服がない……」
『妾が、出してやる』
ポン
「このワンピース着ていいんですか?」
『いいぞ』
「綺麗すぎて私には似合わないなぁ」
「似合う似合う!リオンにぴったり!」
「ありがとう。ククル。それじゃあ行こう」
『王都の奴らだけには気をつけるんじゃぞー!』
「はーい!」