表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第5話

 「・・・ダイスケ?どうしたの?」

「え・・・?」

「ネクタイ、落ちたわよ?」

「あ、ごめん、ごめん、なんか寝ぼけてた。」

「もう、しっかりしなさいよ?受験生なんだから。」

「うん・・・。」

そこは家のリビングだった。今はなかなか会えなくなったお母さんが、僕のブレザーの埃をとってくれていた。僕はというと、ネクタイを結んでいるところだったようだ。・・・ネクタイ、どうするんだったっけ?んーと、ああ、こうして、ああして・・・。よかった、覚えてた。それにしても、懐かしい。我が家だ。僕の家族がそこにいる。

「はい、じゃあ、行ってらっしゃい。」

「・・・ありがと。行ってくる。」

「なによ、気持ち悪いわねえ。がんばっておいで!」

「おう!」

僕はセーターを着て、ブレザーを羽織ると、革靴を履いて家を出た。本当に懐かしい光景だった。今はない朝の情報番組のラストを見て、今では遠く離れた自宅を出る。たった2年前なのに、なんでこんなに懐かしく思うのだろう。

僕はそのまま自転車にまたがった。時刻は8時1分。急げば間に合う。僕は左右に注意して、自転車を漕ぎ出した。

「あら、大島くん。おはよう。」

「おはよう、高木さん。」

「寒いねえ、今日。」

「うん、先週まではブレザーなんかきてられなかったけどね。」

まるで先週まで本当にブレザーをきていなかったかのように、僕は自転車置き場で会った高木さん、上履き忘れの張本人と話していた。この時になって、僕は当時の記憶が次第に、鮮明に戻ってきつつあった。実際僕は息が上がっていた。飛ばせるところは飛ばして、7分で着いた。額に汗をかいているが、まだ寒さが勝る。

「早く入っちゃおっか。」

「そうだね。寒い。」

僕は彼女を先にして、靴箱へ。ええっと、僕のは、と自分の靴箱を探していると、彼女があっと言った。

「どうしたの?」

「えへへ、上履き、忘れちった。」

「上履き?」

冷静に、冷静に。だが僕の鼓動は早まる。


つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ