第1話
僕が大学生になった今、上履きなどという奇妙な履物を履く必要がなくなり、同時に「上履き忘れ」も消滅してしまった。そんな今、僕は最近夢を見るのだ。小学校、中学校、高校で僕が目にした数々のその瞬間。女子が校内を上履きを履かずに歩き回るその光景を。幾たびもそんな光景を目にし、僕はすっかりそんな女子を見ると、心拍数が上がり興奮し出すようになってしまった。フェティシズムを感じるのだ。しかしせっかくそんな機会に恵まれても、僕にできることはは見送るだけであった。そしてあとあと、もっと良く見ておけばよかった、ちょっとだけでも後をついて行けば良かったと後悔することになる。だから夢に出てくるのだろうか。
そんなある日、大学の部室の個人ロッカーを開くと、見慣れぬ真っ白な箱があった。なんだろう。開けてみると、数字の大きな目覚まし時計のような機械が出てきた。
「何だこれ?」
身に覚えのない物体。なんで僕のところに入っていたんだろう。僕がそれをよく観察しようとすると、先輩が僕を呼んだ。
「おい、大島!急げ!あとお前だけだぞ!」
「ああ!、すいません、すぐ行きます!」
僕は一旦その箱をカバンにしまうと、素早くサッカーユニフォームに着替え、練習を始めた。僕は大学のサッカー部に所属している。
帰宅後。僕は殺風景なワンルームアパートの一室で、小さなテーブルに先ほどの箱を置き、考え込んでいた。間違えて持って帰って来ちゃったけど、これは一体なんなのだろう。まあ、爆発はしないだろう。どう考えても、これは動いていない。電池を入れると動くのかな、ちゃんと。いや、USBポートがあるから充電式かな。誰かからのプレゼントなのか。それとも間違えただけなのか。はたまた・・・。
説明書などは入っておらず、時計本体のみがそのまま箱に入っていた。にしても、やけに高性能な時計だ。年、月日、時刻が一発でわかる文字の大きさ。その一桁ずつを調整できるから、時間合わせも楽だ。小さくて場所も取らないし。じゃあ、早速時間を合わせてみよう。僕は部屋の充電ケーブルを時計につなげると、"TIME SET"と書かれたボタンを押し、今の時刻に合わせた。そしてもう一度、そのボタンを押す。
ポチ。
つづく