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プロローグ

術式発動の下りの表現修正



「ああ、ワタシの運命の人はどこにいるのですか…」



レウラ認・コボーヘト王国 王位継承者第2位のユリア・ノートリアは今日も呟いた。

王城の一室でそれを聞いている人間はいない。彼女は日の当たる窓際に置かれた椅子に座りながら今日も憂鬱そうに外を眺め続ける。



衣食住何不自由なく育てられたユリアは(よわい)16を過ぎた頃にある感情を強く感じるようになった。


それは「孤独」。


それまで国の民や国に仕える者達、そして他国の者にも敬られる日常に疑問も感じず満足していた。四大精霊レウラによって承認された国を治める一族としての誇りがそれを後押ししていたのは間違いない。しかし、齢を重ねたことで(たしな)むようになった大人向けの劇が彼女の人生観に新たな価値観を与えてしまった。


男と女が出会い、困難に立ち向かう内にお互いを愛するようになる定番の恋愛劇は娯楽を子供向けの絵本しか読んだことのなかったユリアには刺激の強すぎたのかもしれない。

そうして彼女は地位に対する敬愛ではなく、彼女個人に対する真の愛を強く求めるようになった。その結果、ユリアに歪みが生じていることに彼女と周りの人間は気づいていない。



チリンチリン


ユリアのいつもの呟きから1刻がすぎた頃、呼び鈴を聞いた侍女がユリアの元へ向かった。


「ネシュア、今日の予定をお願い」


ユリアは先ほどの憂鬱さを一掃し、ネシュアに対して微笑みを浮かべる。


「はい、姫様、今日はランペルガー公爵一家との昼食会、午後は公務としてハマー大図書館の改装記念式典にてスピーチが控えています。その後、兼ねてより姫様の要望であったカハボス様との面会を予定しています。」


もしもどこぞの誰かがこれを聞いたのなら驚愕するだろう。その対象は内容にではない。侍女ネシュアの世にも珍しい奇妙な声質持ちにだ。


「ありがとうネシュア。今日もあなたの声は心地よいわ」


ネシュアはゆっくりと頭を垂れる。

「ユリア様にお褒めいただけることが私の唯一の救いです。この声を気味悪がれ迫害されていた私に生きる意味を与えてくれたユリア様には本当に感謝しつくせません」


そう感謝と敬愛を示すネシュアに対してユリアは微笑みを浮かべる。ユリアは初めてネシュアとその声に出会った時の感情を思い出す。恐らくそれは、孤独を感じる者としての親近感だった。


「あなたの美しい声を理解できない人は本当に罪ね。さて…今日も王族としての義務を全うしましょうか。」

そして…

(ああ、王国一と称される魔術師カハボス。彼ならワタシの望みを叶えてくれるかしら)





@@@





それなりに長い時が経ち…


初老の男と高貴な女性、その侍女が王城のある部屋を訪れた。

その部屋は魔術行使のために作られた部屋である。


「この日をどれほど心待ちにしてたか」

ユリアが今まで内に秘めていた憂鬱は綺麗に消えていた。

なぜならば…


「随分お待たせしてしまいましたな。ユリア姫様。以前の面会でお願いされたモノの準備が整いました次第ですぞ」

魔術師カハボスが事を成したからだ。

カハボスは齢50過ぎ、かなりの齢を重ねている。また劇に出演するような魔術師役と似た服装していた。


(逆ね、劇の方がカハボスを参考にしたのね)

ユリアは気持ちが高ぶっているのもあって、こころの口数も増える。

「とうとうワタシは運命の人に会えるのね」


(正直にカハボスに話したのは正解だったわ)


恍惚とした表情で見渡すは自分の望みを叶えるために準備された部屋。


「ええ、王国筆頭魔術師の座のために頑張りましたぞ。わたくし随分の間寝てませんぞ。ハハハ 」

召喚、それは誘拐と同義である。

カハボスは得られる物を考えれば召喚を行うことに抵抗はない。それを望んだ姫様はその事実を気づいていないのか、気づかないようにしてるのか、カハボスには分からない。



「あらあら、それはそれは…。お父様にお願いした甲斐(かい)があったわね。もとより王国一と称されたアナタのもあって簡単に事が進んだわ」


実はユリアはお願いをしにいった時に国王である父上からカハボスを筆頭魔術師として招待することを検討している事実を知った。自分のお願いがなくともカハボスはその座を得ていただろうと内心で思う。


(ふふ、得しちゃった)



魔術師カハボスはユリア・ノートリアの望みを叶える。

それは彼女が望み求める人間を召喚する魔術を作成すること。

カハボスは王国魔術師頂点の座を得る。これで彼は魔術研究予算を思い通りにすることができる立場を得る。コボーヘト王国の魔術研究予算は他国と比べて飛び抜けているためにカハボス個人として願ったり叶ったりだった。


「さて(はや)る気持ちもわかりますが、まずは説明させていだたきます。この魔術根は召喚術式を主根(おもね)とし、姫様が望む条件の人間を見つけ出す術式を側根(そっこん)にしております。この16本の側根がユリア様が望む人間を召喚するための条件設定を行います。そのためにユリア姫様には側根から伸ばしたそれぞれのヒモを両手に持って頂きますぞ。」



「持っているだけで良いのね!」

心なしかユリアは、はしゃいでいた。


「ですぞですぞ。こころの中で求めるモノを強く想っていれば問題ないです。あとは起動動力として30ヘプシほどの魔力を姫様から吸い取りますのでご注意を」


カハボスは同意を求めていく。


「検索範囲は王国をはじめとして徐々に範囲を広げていくますぞ。召喚自体にはそこまで魔力は消費しませんが、検査範囲に比例して消費魔力が増えていきますな。なので十分に魔力タンク(・・・・)は用意していますぞ。魔力タンク(・・・・)調達の費用に関してはユリア姫様にお願いしますぞ。数にして1000、恐らくこの数は歴史上初めてですな」



「……ええ問題ないわ。さぁ早く始めましょう!! わたし、もう待ちきれないわ!!」

ユリアは少しばかり声を張る。


「もう少し説明をしたいのですが仕方ありませんな」

そんなユリアの気持ちを感じてかカハボスは作業に入る。




「準備は整いました。では始めますぞー」

16本の側根から伸びたヒモを持ったユリアは頷く。


カハボスは主根に対して魔術で振動を与えた。術式発動だ。


手に持ったヒモからかすかに痒みを感じる。魔力吸収だ。


召喚術式起動_

検索条件参照_

参照先確認_

参照開始_


淡く黄色い光を帯び始めた根を見たユリアは術式発動を悟り自らの鼓動を感じた。



(ワタシの運命の人!!)


ワタシと出会った瞬間に笑顔を浮かべてくれる…そんな人。

ワタシの代わりに世界を見てきてくれる人。

ワタシの知らない世界を教えてくれる人。

ワタシを笑顔にしてくれる人。

ワタシを解放してくれる人。


ワタシを…


光が強みを増す。

彼女の瞳に入り込み…

そして、その光をきっかけに彼女は押さえ込んでいた感情とともに暴走してしまう。



ワタシよりも背が高いヒト!


ワタシよりも頭が良いヒト!


ワタシよりも器の大きいヒト!


(ワタシのウンメイのヒト!!!)


《とにかくワタシよりも何でもでっかいヒト》





召喚術式発動_

検索開始_


一致対象なし_一致対象なし_一致対象なし_  魔力タンク1消費完了



範囲拡大 再検索_


一致対象なし_一致対象なし_一致対象なし_  魔力タンク9消費完了


範囲拡大 再検索_


一致対象なし_一致対象なし_一致対象なし_  魔力タンク24消費完了


範囲拡大 再検索_


一致対象なし_一致対象なし_一致対象なし_  魔力タンク40消費完了



範囲拡大 再検索_


一致対象なし_一致対象なし_一致対象なし_  魔力タンク151消費完了



範囲拡大 再検索_

1件一致_1件一致_1件一致_  魔力タンク720消費完了


対象マーキング完了_

対象重量測定_  630000ハポム 262.5ポム

対象圧縮変換_ 魔力タンク721消費完了

引き寄せ開始_  魔力タンク721消費完了  

障壁通過_ 

対象再構成_ 魔力タンク726消費完了

再構成完了_  魔力タンク728消費完了


出力行程開始_

出力先確認_

エラー_ 過大重量出力不可

エラー_ 過大重量出力不可


エラー_ 過大重量出力不可

エラー_ 過大重量出力不可

エラー_ 過大重量出力不可


出力先緊急変更_

マーカー検索_ 

マーカー検索結果_ ソバナ大平原 魔力タンク736消費

出力先 _ ソバナ大平原 

出力開始_



出力完了_  魔力タンク997消費完了


召喚術式終了_


主根の光が消え始める。

召喚術式が停止してから幾ばくかの沈黙。







「……………………………………カハボス。ワタシのウンメイのヒトはドコ?」




ポム

最も誕生を祝われたと伝えられる赤ん坊の名。その名と生まれた時の重量は重さの単位になった。

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