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第七話

 期間限定イベント:【魔王の軍勢、襲来】。

 異世界の魔王がこの世界に目を付け、侵略を開始してきた!

 期間中は《魔王軍》所属のモンスターが出現するようになるぞ! さらに《指揮官》と呼ばれる強力なボスモンスターも時折出現するようだ!

 魔王軍モンスターを倒すと《魔素》という《イベントアイテム交換所》で限定アイテムと交換可能なアイテムをドロップすることがあるぞ、沢山集めて強力なアイテムをゲットしよう!

 ※注意:魔王軍モンスターは通常のモンスターと違い非戦闘エリアにも出現し、非戦闘エリアを戦闘エリアに変えてしまう! 街中だからといって安全とは限らないぞ!


 …………。

 ……と、いうのが唐突に始まった期間限定イベントの詳細である。


 ようするに限定敵を倒して貰える交換用アイテムで限定アイテムを集めよう的なよくあるイベントだ。


 一ヶ月もイベントが無かったからこういうのは無いかと思っていたが、準備中だったのかな。

 神様にも色々事情があるんだろう、多分。


「いべんと! イベントだってマコちゃん! ユニちゃん!」

「い、イベント……?」


 見た目不相応、しかし実年齢相応にさっきゅんが目を輝かせてはしゃいでいる。

 一方でユニはゲーム自体に不慣れなためかイベントがどういうものなのか分かっていない様子だ。


「随分嬉しそうだねさっきゅん」

「ハマってるオンラインゲームのイベントと聞いて盛り上がらないゲーマーなんていないわよマコちゃん!」


 まあそれはそうか。

 かくいう私も、それなりにテンションは上がってきている。


 今日はもうクエストに出ないと決めていたのに、今から魔王軍を倒しに行こうと誘われたらホイホイ行ってしまいそうだった。


「ま、でもまずは確認しなくちゃいけないことがあるよね」

「「?」」


 私の言葉に、さっきゅんとユイが首を傾げる。

 ユイは兎も角として何故さっきゅんも分からないんだという気持ちを込めつつ、


 私も首を傾げながら、言う。


「イベント限定アイテムって何があるんだろう?」


 武器だったら私とさっきゅんは手に入れる意味が無いんだけど。






*****





 数分後。


「こんにちは! イベントアイテム交換所にようこそ!」


 朗らかな笑顔で出迎えてくれた金髪のお姉さんに適当な挨拶を返しつつ、交換所内を物色するように歩き出す。


 イベントアイテム交換所は、各町に一つずつ配置されているらしい。

 何処にあるのかは特に通知が無かったのだが、さっきゅんが「そういえばずっと準備中の立て札が立ってる建物があったわね」とか言うのでもしかしたらと向かってみたらビンゴだったのだ。


 あまり広くは無い店内だ。

 金髪のお姉さん――交換所用NPCがカウンターに立ち、その向こうには賞品らしきアイテムが立ち並ぶ。


 そしてこっち側にはアイテムリストや、各アイテムの性能・使い方などが壁に展示されていた。


 しかしまあ展示されているものを一々見て回るのも面倒くさい。

 私はカウンターへ一直線に向かうと、お姉さんに声をかけた。


「お姉さん、目玉賞品は何?」

「よくぞ訊いてくれました! 今イベントの目玉は現在手に入る武器の中でも上位の火力を誇る《魔装》シリーズです! お一人様お一つだけですが全武器種揃っているので――「はい解散、帰ろう」ええ!?」


 武器を持てない加護の悲しみである。

 いやまあユニのハンマーのために手伝いはするだろうけど……。


「お、お待ちください! 《魔装》シリーズは武器だけではなく防具もありますよ!」

「ゴテゴテの鎧かぁ……趣味じゃないなぁ」


 お姉さんが背後にある髑髏が装飾された黒い鎧を指差しながらオススメしてくるが、ちょっと趣味じゃない。


「じゃ、じゃあこれは魔素が余った人向けなのですが、各種消費アイテムとも交換できますが……」

「普通に店で買えばいいし……」

「ぐぬぬ……」


 なんだよもう、品揃えあんまし良くないな。

 これなら適当にユニの手伝いをしつつ、手に入った魔素は消費アイテムに適当に換えて終わりかな。


 最初の一回目だししょうがないけど、次イベントからは武器を持てない加護のことを考えて設計して欲しいものだ。


「さっきゅんは? 何か欲しいものある?」

「んー、私は特に……あえて言うならこのお姉さんが欲しい」

「……!?」

「お姉さんは非売品でしょ。ユニは? やっぱハンマー欲しい?」

「欲しいですが……魔素が二千個必要ってどれくらい魔王軍を倒せばいいんですかね? わたしでも手に入るものなのでしょうか……?」


 要求数二千か。

 魔王軍を一匹倒すごとにどれだけ魔素とやらが手に入るか分からないが、一匹につき一つだとしたら単純に二千匹倒さなければいけないことになるが……。


 無理そうならイベント無視して普段のクエストをこなしたほうが楽な可能性も……とか。


 そんなことを考えていたら、お姉さんがおずおずと自信なさげにあるものを取り出した。


「ぅう……あと一応マイルームグッズの《モンスタープラモデルver.魔王軍》とか《魔王軍紋章入り安眠マクラ》等々もありますが……」

「ちょっと魔王軍を蹴散らしてくる」

「「……ええ!?」」

「いえっさーまむ! あ、ところでお姉さん、そのモンスタープラモデルとやらは全何種類?」

「え、あ、十三種類ですが……」

「ぐっど! それくらいないと張り合いが無いわ!」


 急にやる気を出した私とさっきゅんに、驚くユニとお姉さん。


 しかしやる気が出てくるのも当然というものだ。

 私たちは強くなる装備よりも、マイルームグッズ等を買い漁り、部屋を充実させて生活を豊かにすることが最優先の《移住組》。


 攻略重視のプレイヤーとは目的も意識も違うのである。


「魔王軍倒すぞー!」

「おー」

「お、おー!」


 大きな胸を揺らして拳を高く突き上げるさっきゅん。

 内に多大なるやる気を秘めながらも(多分)やる気なさげに拳を振り上げる私。

 そして頑張ってノリに付いてこようとぴょんぴょんしながら見よう見まねで拳を振り上げるユニ。


 何が、なのかはあえて言わないが、見る人が見れば大中小トリオと称するであろう私たち三人による。


 初のイベントクエスト挑戦が、始まった。

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