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第三十六話

「じゃあ、改めて自己紹介しましょうか。

 あたしの名前はリヴ。《妬神》の加護を受けたプレイヤーで、レベルは98です」

「レベル高っ!?」


 嫉妬の化け物がNPCを襲うという事件から翌日。

 一夜経て各々が冷静になったところで、ギルド【ふかふかベッド】のメンバーはギルドハウスのリビングに集まっていた。


 当然、新メンバーである嫉妬の化身リヴもである。

 ソファの上で二人、さっきゅんと腕を組んでいる彼女は死んだ魚のような目すらしておらず、昨日とは別人のような有様だ。


 瞳きっらきらで正直可愛い。

 さっきゅんも見た目だけは最高級だから、綺麗どころ二人が仲良く並んでて……なんというか、目の保養になりますね。


 と、そんなことより……。


「98レベル? …………さっきゅん、今確認されてる最高レベルって幾つだっけ?」

「んん、確かどこぞの廃人プレイヤーがレベル120達成! とかSNSで呟いてた気がするけど……それでも98レベルは廃人プレイヤーたちの中でも相当高い方よ、凄いわね」

「えへへ……」


 さっきゅんに頭を撫でられて、へにゃりと嬉しそうに顔を歪ませるリヴ。

 マジで昨日とは別人だなこやつ……。


 そういえばユニもこのギルドに入る前はウジウジしてたのに、最近は全然そんな感じしないよな。


 そんなことを思いながらユニの方を見ると、青髪の幼女はジト目でリヴを睨んでいた。

 少女にジト目で睨まれるとか、一部の紳士には堪らないご褒美なのだろうか。いや私には良く分からんが。


「……どしたの? ユニ」

「……いえ別に、お二人がいいのなら私もこの嫉妬女をギルドに入れることを認めますが……それでも警戒だけはしておこうかと」

「ひえっ……」


 ユニに釘を刺されて、リヴはぎゅうっとさっきゅんにしがみつくように腕の力を強めた。


 どうやら怒るユニに吹き飛ばされたことがトラウマになったらしい。

 ……まあ《怒神》の攻撃力……というか攻撃性はえげつないからなぁ。何よりも容赦が無いしスキルエフェクトで鬼みたいになってるのが怖いからトラウマになるのは仕方ないね。


「ま、まあ仲良くしようよ。アナタだって《こっち側》でしょう?」


 さっきゅんの陰に隠れながら、リヴは言う。

 《こっち側》、という言葉が指している意味は……まあ、明言せずとも分かる。


「ぐっ……確かに異常に親近感は感じますがそれはそれ! 他人を平気で傷つけられる人を信用なんてできません!」

「他人って……たかがNPCじゃない。流石にあたしも生身の人間を殺すとしたら躊躇の一つくらいするわよ」


 しれっと自分が一度殺した相手にそんなことを言い放つリヴ。

 まあ本人的には正当防衛だったつもりなのだろう。やっぱ頭おかしいわこいつと思う反面、私とてNPCなら別に躊躇いなく殺せる人間なので黙っておく。


「なんかこの子……ユニちゃん? ってあたしたちの同類にしては随分とマトモというか……優しい子ね」

「優しい子ほど怒った時に怖いでしょう? そういうことよ」

「成る程」


 さっきゅんの言葉に、納得したように頷くリヴであった。


 優しい人・大人しい人程怒ったときに怖い。

 だからこそ――《怒神》の加護はユニに合っている加護だと言えるだろう。


「ところで話を戻すけどさ、レベル98って相当高いけどどうやってそこまでレベリングしたの? リヴってもしかして結構なゲーマー?」

「うん?」


 私が何気なく放った質問にリヴはきょとんとした顔で返す。


「いや別に……ゲームはスマホでパスルゲームくらいしかやったことないわよ?」

「へえ? それなのにレベルがそんなに高いのか……一体何をしたらそんなレベルになるの?」

「……ああそっか、普通知らないわよね。ええっと、実は――」


 警官って滅茶苦茶経験値くれるのよ、と。


 恐らく通常プレイでは手に入らない貴重な情報を、リヴは軽いドヤ顔で言い放った。


「…………さっきゅん」

「ええ」


 私はゆっくりと立ち上がり、さっきゅんもそれに続いて肩慣らししながら立ち上がる。


 そんなこと言われちゃ、仕方ない。

 私は善良で普遍な一般人だが――その前にゲーマーだ。


 効率的に経験値が得られる相手を、見逃すわけにはいかない。


「協力してくれリヴ! さっきゅん! ユニ! これから毎日警官をぶっ殺そうぜ!」

「やー! 無限湧きの敵にビームを撃ちまくる簡単なお仕事ね! 燃えてきたわ!」

「え? え? 折角死んで犯罪者属性消したのに……いいの? 貴方達がいいならあたしは別にいいのだけれど……」


「いいわけないでしょうが」


 ぞくりと、背筋に電流のようなものが走って、振り返る。


 そこには、《怒神》のスキルエフェクトが纏わり付いて、黒い鬼のような姿へと変貌したユニの姿があった。


「…………」

「…………」

「……えーっと」

「…………」

「ジョウダンデスヨ?」


 私がカタコトでそう言うと、さっきゅんとリヴも全力で頷きまくる。


 私は――否、私とさっきゅんは、知らなかったのだ。


 怒り状態の《怒神》に睨まれる事が、こんなにも恐ろしいなんて。


「…………なんだ、冗談ですか」

「いえすいえすいえす、冗談に決まってるじゃないアハハー」

「ブクブクブク…………」

「ああっ! リヴが泡吹いて気絶してる! 完全にトラウマになってるじゃん!」


 どうやらギルド内の力関係が若干変わってしまったようだ。

 ユニ、逞しくなりすぎである。黒鬼状態で睨まれたら逆らえる気がしない。


 とまあ。

 そんなこんなで、新しくリヴが加わった私たちのちょっと変わったゲーム内スローライフ。


 心機一転、なんかは絶対しない怠惰な私である。

 しばらくはのんびりしたいなぁなんて私の願いを邪魔するように、突如お知らせウィンドウが私たちの前方に浮かび、


 イベントクエスト、第二弾のお知らせメールが運営から届いた。

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