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第三十一話

 類は友を呼ぶ。


 そのことわざを、私――ユニは結構気に入っています。


 いや……気に入っているという表現は少しおかしいかもしれません。

 気に入っているじゃなくて……痛感している?


 その通りだなぁ、と痛感しています。


 教室の隅に一人。

 冒険小説を読みふけっている小学生の頃の自分を見ながら、そう思います。


「…………走馬灯?」


 ぽつりと呟きます。

 自分の身体が、薄い。まるで幽霊みたいです。


 まあ心臓刺されて死んだから、多分私は幽霊なのでしょう。


 ということはやっぱりこの目の前に流れている映像は、走馬灯ですね。

 走馬灯にしてはゆったりしてますが……。


「…………」

「…………」


 この頃の私には友達がいませんでした。

 というか生まれてこの方、ゲームの世界に入ってマコさんたちと会うまで友達はいませんでした。


 類は友を呼ぶ。

 ならば私の周りには、同類がいなかったのでしょう。


 誰とも友達になれる気がしなかったし、なろうとも思わなかったのです。


 だから孤立して、それが原因でいじめられて、怒りに任せていじめっ子を半殺しにしたりしましたが――まあそれについては後悔も反省もしていませんし、理性がぶちぎれていたから憶えていないので割愛しましょう。


 走馬灯は、やがてゲームの世界に移ります。


 怒りに任せて父親を殺害してしまったから仕方なくゲームの世界に逃げてきたので、当初は右も左も分からず簡単なクエストをこなして生活していましたね、懐かしい。


 そしてやがて、私は出会います。


 生まれて始めての同類――マコさんと、さっきゅんに。


 大罪を背負った女の子。

 生まれて始めて仲良くなれそうだなんて思い、生まれて始めて他人に歩み寄りました。


 言葉では上手く表せませんが……共感? 共鳴?


 自分の語彙力の限界を感じますが、兎も角。


 場面は今日に移ります。


 嫉妬女、登場。

 私を殺した相手。


 実のところ、あの嫉妬女にもマコさんたちと似たような感覚を覚えたので、あの子も大罪を背負っているのでしょう。


 だからなのか分からないですが、殺されたことに関してはあまり怒って無いのです。


 ああそういえばあの嫉妬女も『あなたたちにはあんまり嫉妬しない』とか言ってましたね。


 出会い方が違えば、きっと友達になれたでしょう。

 とても残念です。


 さて、じゃあそろそろ走馬灯も終わり。


 天国とか地獄とか、無ければいいなぁ。

 あの父親には二度と会いたくは――――。


「――《死のタナトス》」

「え?」


 瞬間、私は何かに引っ張り上げられた(・・・・・)






*****





「ユニ、死後の世界ってどんな感じだった?」

「んー、なんか全然憶えてないんですよね……」


 そんなもんか、と私は頷く。


 現在。

 私は蘇生したユニと凶夜くんと一緒に、移動中である。


 イケメンちゃんは戦闘不能のナオミを担いで教会へと向かってもらった。


 この中で一番嫉妬女への勝率が高そうなイケメンちゃんをナオミの救援に回したことには、当然理由がある。


 ユニが言ったのだ。

 「私が決着をつける」、と。


 怒っているから、と。

 やられたからにはやり返す、と。


(まあ、殺されたとあればそりゃ怒るよねぇ……)


 さっきは瞬殺されたユニだが、まあ怒っているなら話は別だ。


 《怒神》の加護は、怒れば怒るほど強くなる。

 あっという間に殺されてしまうことは……流石に無いだろう。……無いよね?


「気をつけろよ、俺の蘇生スキルは一人につき一度だけ……もうお前が死んでも、生き返ることはできない」

「はい、分かりました。……でも、怒りっていうのは理屈で抑えられるものじゃあないんですよ」

「…………」


 ユニの目が据わっている……こんな表情、初めてみるなぁ。


 ……って、この子とはまだ数ヶ月程度の付き合いだったか。

 そりゃ見たこと無い表情があって当然だ。


 何でか分からないけど、ユニはさっきゅんと似た感じがするんだよね。


 いや、性格とかそういうのは全然違うけど、なんていうか……。


 初対面の頃から、抵抗無く仲間として受け入れることができた。

 さっきゅんと初めて会った、あの日のように。


「…………ユニ、やっぱ私がやるよ」

「はい?」

「私なら一回死んでも凶夜くんが生き返らせれるし……」

「いやマコさんじゃ相性最悪じゃないですか。むしろ足手纏いなんで帰っていいですよ?」

「…………」


 本当に帰ってやろうか。


 とかそんなことを言っている間に、私たちは目的地に到着した。


 《モンキーフォレスト》。

 猿型モンスターたちが住まう、森のダンジョンである。


「森に逃げ込んだってわけか……俺に付いて来い、ソニアにナビゲーションさせる」


 頷いて、先頭を走る凶夜くんに付いていく。

 道中現れるモンスターは、死神の鎌によって薙ぎ払われた。


 《死神》の加護お得意の、《即死》スキル。

 不遇とされているスキルだが、成る程雑魚モンスターに構っていられない状況の場合結構役に立つんだな、と。


 そんなことを思いながら進むこと、数分。


 木陰に隠れている、ソニアちゃんを発見した。

 彼女の視線の先には、当然。


 眼鏡をかけた美少女――嫉妬女が佇んでいた。

マコがギルド内ではユニが一番マトモだと思ってるので、ユニは比較的マトモな感覚を持っているものだと描写されてきましたが、ユニも大概頭おかしいです。


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