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第二十六話

更新遅くてすいません。

「と、いうことでソニアの言うことは本当だと判断して、そしてマコのアイデアを採用して囮作戦を決行するわ」


 ナオミのその一声で、会議は終わった。


 あれから――ユニが怒ってからも、会議は喧喧囂囂(けんけんごうごう)と時に真面目に、時に脱線したり、時に脱線したり、時にイケメンちゃんが脱線を直したり、時に脱線したり、時に脱線したり、時に真面目に話したと思ったら脱線したり。


 そんな感じでとても有意義な会議が終わった結果、それが最善手だろうということで囮作戦を決行することが決定したのだった。


 《幸せ者》のフリをして、犯人をおびき寄せる。

 犯人の狙いが本当に(・・・)幸せ者だったとしたら、確かに有効な作戦だろう。


「成る程、つまりウェイ系のリア充のフリをして町を練り歩けば良い訳ね!」

「出来るならね」


 はい、無理です。

 と、いうことで私が出したウェイ系のリア充のフリをするという案は無事却下され、ユニが提案したカップルのフリ作戦が可決された。


 カップルのフリ。

 男性は凶夜くんしか居ないという問題を抱えたその案は、ユニの「女性が男装すればいいと思います」という私に熱視線を送りながらの一言で解決し、可決し、私は再び男装することになった。


「じゃああたしはユニ&マコのカップルを、そしてソニアちゃんはアロン&凶夜くんのカップルをそれぞれ遠くから見張ってるわね」


 酒場の外。

 会議を終え、外に出た私たちは入り口前で四手に分かれた。


 男装した私と、男装女子フェチのユニ。

 厨二病患者凶夜くんと、ミニスカートがよく似合うイケメン女子アロン。


 その二つのカップルと、それをそれぞれ見張るナオミとソニア。

 ソニアが滅茶苦茶不服そうというか、普通に機嫌悪くて若干涙目になっているが何故だろう。


(まあどうでもいいか)

「さあマコさん! 張り切って犯人を捜しますよ!」

「え? あ、うん、まあ」


 私と腕を組んでいる何故だかテンションが高いユニの言葉に、生返事しながら歩き出す。


 振り返ると、厨二病とイケメン女子のカップルは私たちとは別方向に歩き出していた。

 まあ同じ方向に行ってもしょうがないし当たり前か。ソニアが何か黒いかめはめ波みたいなのを二人に向けて放とうとしているけど大丈夫なんかなあれ。


 まあいいか。


 イケメンちゃんはあれでも高レベルの《剣神》の加護持ちだし、死にはしないでしょう。


 今はそんなことよりも重要かつ大事なことがある。


「……ねえ、ユニ」

「はい?」


 私はユニの手をぎゅっと握って、口を開く。


 ユニは真剣な顔で語り出した私を見て、不思議そうに首をかしげた。


「な、何ですか……?」

「あのね、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……」


 そして何より、怒らないで欲しい。


 そんな気持ちを込めて、私は次の言葉を紡いだ。





「面倒くさくなってきたから帰るわ」






*****






 というわけで、私とユニは仲良く手を繋いで帰路を歩いているのであった。


 私が面倒くさくなってきたから帰りたいと願った結果、優しい優しいユニはあっさりと快諾してくれて、むしろ積極的に私の手を引っ張ってギルド拠点への帰路を……。


「いやいやいやいやいやいや、地の文を利用して真実を捻じ曲げないでください! 帰るわけ無いじゃないですか! 帰させるわけ無いじゃないですか!」

「ちぃ……っ!」


 ユニが私の手を引っ張って、どうにか帰路とは逆方向へ行かせようとしているのを見て、私は思わず舌打ちをする。


 やはり正直に話さず、何だかんだ理由を付けてギルド拠点の付近まで行き、そこから猛ダッシュの方がよかったか……!


 でも何だかんだ理由を付けるのが面倒くさかったし、猛ダッシュとかもっと面倒くさかったんだ……!


「やだやだ私は帰るんだい! もう面倒なの! 今日のAPやら行動力やらは使い切って自然回復を待つの!」

「何の話ですか! 駄々を捏ねないでください見苦しい! ほら、デートっぽいことしましょうよ! アイスとか食べに行きましょうよ!」

「私は家に帰ってアイスを待ってるから買ってきてくれ」

「ぶっ飛ばしますよ!」


 くぅ……! チクショウ、これ以上アホなこと言ったらユニの憤怒系スキルが発動しかねない……!


 《怒神》のスキルは、使用者が状態異常の《怒り》状態になると発動する。

 つまりこういった言い争いでの怒りでは発動しないのだが、ユニが新しく覚えたスキル《怒りの境界線》を使えば感情的な怒りになっているときに状態異常の《怒り》状態になれるらしいのだ。


 それをされると、流石に手が付けられない。

 というか普通に死ぬ。さっきゅんの居ない今止められる者も居ないから下手すると町が半壊する。


「ぐぬぬ……分かった、分かったわよ。もうしばらく町を練り歩きましょう」

「分かってくれて何よりです」

「じゃあとりあえずアイスでも食べに……ん?」


 観念してデートを再開した私の視界に、一人の女の子が映った。


 連続殺人事件の影響で、がらんどうとなった街道のど真ん中。


 茶髪のボブカットに、大きな眼鏡。

 森ガールみたいなふわふわした服装が特徴的な女の子が、



 死体よりも死んでいる濁った瞳を持った女の子が。


 包丁片手に歩いているのが見えた。




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