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宇宙戦記パイロット無双

 西暦2XXX年。

 地球は宇宙人――ベイダー星人による侵略の危機に瀕していた。

 卓越した科学技術を有するベイダー星人は、『βアームズ』と呼ばれる戦闘兵器を使った無差別攻撃を行い、邪魔な地球人を排除しようとしたのだ。


 だが、地球人もただ指をくわえて侵略されるだけではなかった。

 なんとか撃墜した『βアームズ』からベイダー星人の技術を盗み、対『βアームズ』用人型兵器『Σカスタム』の開発に成功した。


 これによって互いの軍事力は拮抗するようになり、地球軍とベイダー軍による戦争はより一層激しいものとなっていった。


 そして現在、ここ――ネオ広島でも『βアームズ』と『Σカスタム』による戦闘が行われている真っ最中だった。


「ヒャハハハハ! この新型『βアームズ』の装甲にビーム兵器など無駄無駄無駄ァ! 一方的な殺戮! 最っ高ォォォオオ!!!!!」

「うわぁあああああ! 逃げろ逃げろぉおおおおお!」



 通常とは異なる漆黒のフレームに覆われた『βアームズ』から逃げているのは『Σカスタム』の訓練機。

 

 ネオ広島の市街地から離れ、延々と荒野を追いかけっこしている。装備の充実した新型『βアームズ』に引き換え、こちらは装備どころか機体のスペックが大幅に制限されている訓練機では相手になる筈がない。不幸中の幸いは追ってきてるのが一機だけという点だろうか。


 訓練機のパイロット――ラムダは、半泣きになりながら操縦桿をグリグリ動かして、後方から放たれるレーザー光線を避けていた。


「くそぉおお!!! 訓練機のメンテが早めに終わったから、コックピットで昼寝してただけなのに、なんでこんな目に!?」


 彼が昼寝をしている間に、訓練所には避難命令が出ていた。未だ訓練中の者を無暗に戦場に送り出すわけにはいかない。当然の判断といえよう。現にけたたましいサイレンも鳴っていたのだが、そんなことは意にも介さずラムダは眠りこけていた。


 訓練所の人間も点呼の際、ラムダの不在に気づき探しに戻ろうとしたが時すでに遅し。

 ベイダー星人たちの攻撃が始まってしまった。

 そこでようやくラムダも目を覚まし、慌てて訓練機を運転して逃げ出したというわけである。


「おらおらおらっ! ……ちぃ! すばしっこい野郎だなぁ!?」

「ひぃぃいいいい!? お助けぇえええええ!!! 俺は非力でか弱い訓練生なんですぅぅうううう!!!!」


 新型『βアームズ』が標的をホーミングするミサイルを放つも、岩場を上手く盾にしてラムダは一発も被弾することなくやり過ごす。まるでミサイルの軌道が見えているかのような対応。ラムダには普通の人間には感知できない「何か」を感知することができるのだった。


 しかし『Σカスタム』の燃料にも限度がある。訓練機ならば、なおさら積んでいる燃料も少ない。

 逃走を続ける間に燃料は底をつき、「プスップスッ」とブースターがかすれた音を出したかと思うと、訓練機はみるみる速度を失い、バランスを崩して地面に滑るように倒れた。


「うぁああああああ!? ……くそ! くそ! 動け! 動けよぉ! 動かなきゃ死んじまうじゃんかよ! なあ! ……頼むって……おい!!!!」

「ヒャーッハッハハハ!!! どうやら万策尽きたようだな地球のウジ虫ども!!!! てめーらは俺らベイダーに駆逐される運命にあるんだよぉ!!!!!」


 新型『βアームズ』の銃口が訓練機のコックピットへと突きつけられる。

 駄目だ。このままじゃ殺される!

 なにか……なにか手はないのか!? この窮地を切り抜ける方法は!


「ヒャハハハ! 恨むんならそのゴミみたいな性能の機体を恨むんだな!!」


 ……そうだ。搭乗しているのがこんな訓練機じゃなかったら、もっと……!!!!


「辞世の句は詠み終わったか? じゃ、あばよ! 人間(ウジ虫)

「……だったら、俺自ら戦ってやらぁぁああああああ!!!!」


 ビームライフルが放たれる刹那、ラムダは操縦桿をすさまじい腕力でもぎ取り、ライフルめがけて投げつけた。操縦桿はコックピットを突き破りライフルへと命中。ライフルの軌道が逸れ、ビームは明後日の方向へと飛んでいった。


 間髪入れずラムダはコックピットから出ると、訓練機の腕を引きちぎり、新型『βアームズ』へと投げつける。突然の出来事に動揺するベイダー星人であったが、反射的に飛んできた腕を払いのける。


 その一瞬の隙が命取りであった。


 ラムダは訓練機が唯一装備していたビームサーベルを引っこ抜くと、爆発的な脚力で新型『βアームズ』へと飛びかかる。引っこ抜かれると同時にセーフティが外れ、ブゥンとビームサーベルが起動。漆黒のフレームの隙間めがけて、ビームサーベルを槍のようにぶん投げた。スポンジに爪楊枝を差すがごとく、いともたやすく新型『βアームズ』を串刺しにした。


 機体のもっとも脆い部分をラムダの持つ感知能力が探り当てたのである。


「ロボよりパイロットの方が強いって……どんだけぇぇぇええええええ!!!!!???」


 ベイダー星人の断末魔と共に、新型『βアームズ』は爆発四散した。

 パーツ片が飛来する荒野へとラムダは華麗に着地する。


「……フッ……おしっこちびるかと思ったぜ!」


 ガクガクと生まれたての小鹿のような足取りで、ラムダは避難所を求めて歩き出した。





 ご覧いただいたように、ラムダには人智を超える戦闘能力が秘められている!


 だがしかし!!!


 彼が『Σカスタム』に乗ってパイロットとして戦い続ける限り、その戦闘力は埋もれ続けていくのであった。


 そのことに人類が気づく日がくるのか……今は誰にもわからない。




おしまい






俺は止まらねぇからよ!

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