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只今、異世界で自己改造中  作者: 獅子露
25/26

怪しい博士

更新遅くてスイマセン

長い時間かけた割に量も少なくなっております。


3/11 本文加筆しました。

ズシンと地面が響く

20mはありそうな大木が揺れる地面に合わせてユサユサと葉を落とす

その音の発生源は大木よりも更に巨大な魔獣だった


それは蜥蜴の魔獣で、希少種の突然変異体だった

二足歩行している人間という弱小種族に、何かを身体の中に無理矢理入れられると、何が起こったのか鋭利な牙や爪が備わり、凄まじい力を手に入れた

今まで自分の命を脅かしていた生物が、今では移動するだけで吹き飛んでゆくという万能感に抗う事など出来なかった。


だが、所詮は人工的に歪な進化をさせられただけのデクの棒

真にこの場所で王となるには、あらゆるものが欠けすぎていた


散らばった大木の根が蠢き、50mを超える体躯の恐竜の様になった魔獣に絡みついた

煩わしそうに根を引きちぎるが、植物の生命力は凄まじく、どれだけ引き千切られようとも新たな根がどんどん足を縛っていく


イライラした様子で魔獣が根を地面ごと踏み抜くと、20m近くのクレーターが出来て木が宙を舞って吹き飛んだ

煩わしい根を文字通り吹き飛ばした魔獣は口からエネルギー弾を撒き散らして、再び近寄って来た根を地面ごと抉り消す

満足そうに鼻息を鳴らした魔獣を影が覆う


それはあの時、カマキリを喰らっていた巨鳥だった

巨鳥は蜥蜴の魔獣よりも遥かに巨大で、壮大で、王者の様な風格がある

事実、この巨鳥はここら一帯の空の支配者で天空の王

だが、ここでは唯一絶対の個で無ければ生き残れない過酷な環境、今まで生きこられたからと言って今日生きれるかは分からない


そして巨鳥にとっての不運は、その唯一絶対の個が近くにいた事だった

蜥蜴を仕留めて意気揚々と丸呑みしている最中の巨鳥に先程とは比べ物にならないほど太い根が波のように押し寄せて来る


まるで森が意思を持って獲物を狩るかのようだった

巻き付いて地に落とそうとするそんな森の意思を巨鳥は光咆と呼ばれていた口からの攻撃で迎撃した


逸れた光咆が地面を内側から破裂させて、土やら草が爆風によって舞い上がるがそんなものに一切躊躇わず、極太の根が飛んでいる巨鳥の翼に巻き付いた

そのまま思いっきり地面に叩き付けられる

その威力は陥没した地面を見れば誰でも分かるほど深く、広い


しかしその程度では欠片の痛用も感じていないようで、翼を器用に動かして大空へと舞い戻る

根が追いかける様に空を埋め尽くし、巨鳥がした反撃ごと意にも介さず穿いたと思うと、網のように根が広がって外から見えなくなるまで覆い隠した


数秒後、ドクドクとうねっていた根が解かれた時には何もなくなっていた

全ての栄養が根を通じて森の中心の地下へと集まり、そこにポツンと育っていた黄金に輝く木に吸い込まれたのだった




深い眠りに落ちていた俺はパチリと目を開けた

そこはベットのようで、柔らかな感触が背中にあった


「ん゛ん゛?目を覚ましたかい?」


声をかけられた方を見ると妙にポケットの多い白衣を着た男が、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、メモのような物をとっていた

科学者のような格好をしているが、頭に掛けるサングラスと伸びまくった髭のせいで整った顔が台無しである


「‥‥‥あんた誰だ?」


四肢を全部無くして動けないから、せめてもの意地で虚勢をはる

警戒一色の視線を感じたのか、少しだけ俺から離れるとバッと大袈裟に腕を広げると狂気的な笑みを浮かべながら叫んだ


「ようこそ。我が研究室へ!!」

「研究室?」

「あぁ‥‥‥我が至高の実験材料(息子と娘)達がいる知識の宝庫さっ!!」


奥の方に目を向けてみれば、凄まじい数の魔物の素材や薬品、何に使うのか分からない機械やいかにも何かありそうな武器が乱雑に並んでいた


「あれはっ!?」


その中にカマキリの鎌が無造作に100個単位で置かれているのを見つけて絶句する

あれほどギアスを積んだのにも関わらず一体も倒せなかった身としては観念するしかない


「あんたが俺を助けてくれたのか?」

「その通り。こんな辺鄙な場所にいるとは一体どんな事情なのかね?」

「‥‥‥実は、」


俺はここに至るまでの経緯、ピクニックに行くと盗賊に襲われてその最中に不気味な男が投げてきた石を魔法で迎撃した途端、何処ともしれないこの地にやって来たことを話した


「それで一体君はどうするつもりなんだね?」


そう言われて、俺は悩む

俺がやりたい事は思いついたその場で、すぐに実行していた

だからこそ目標といった事が思い浮かばない

カマキリとあの巨大な鳥型魔獣にリベンジしたい気持ちもあるが、正直ギアスを何度重ねようとも届くイメージが湧かない


「‥‥‥分からない。だが‥‥‥強くっ!なりたい!!

自分の力不足で、後悔する様な事をしたくない‥‥‥っ!!」

「なら、我に協力してはくれまいか?」

「え?」


その言葉に俺は耳を疑った

協力?

今の俺が何か役に立つなんて欠片も思えない

だが、もし何か出来る事があるなら‥‥‥っ!

しかし‥‥‥


「‥‥‥俺にはもう四肢が無い。」


「そんな君には最高性能の義手と義足をプレゼントしようじゃないかっ!!

義手に慣れるまで無償で食糧も快適な生活環境もあらゆる娯楽も君が望むものは全て用意しようっ!!

もちろん何か君に強制させるつもりも絶対条件(ギアス)をつけるつもりもない。」


「なんでお前は‥‥‥俺に親切にしてくれるんだ?」


あまりにも都合の良い、もとい都合の良すぎる条件を出されて警戒心は収まるどころか高まっている


「何を水臭いことを‥‥‥。我が実験材料(むすこ)おもんばかるのは当然ではないか!?」

「っ!!」


やはり俺を騙すつもりか!?

と身構えそうになったものの、仮にも命の恩人だ。

その恩は返さなければ俺の気が済まない


「俺を使って何をするつもりなんだ?」


コイツは俺の身体を使って何かしたいようだった

ジロジロと隠す気もなく視姦(かんさつ)してくるので、なんとなく嫌悪感を覚えてしまう


「んん?いやいや!?我は何もするつもりなど!?」

「いや、言動でバレバレなんですけど‥‥‥。」

「ま、まままままさか我がそんな初歩的なミスを犯すわけがなかろう!」


乱れまくった口調でそう言うが、別に抵抗するつもりなど最早無かった

それに勘としか言いようがないが、この人は俺に危害を加えるつもりは無さそうだと感じたのだ


「あ〜もう分かった!じゃあ俺からあんたの実験に協力するって形ならいいだろ?」


それを聞くや否やグリッと首を半回転させマジマジと愛しい実験動物を見るような目で見つめてきた。


「ほう?それでどこまでやって良いのかい?人格は変えても?身長5㍍超えにしても?身体中の孔を広げたりするのもありかい?」

「い、いや。流石にそこまでは‥‥‥。」


どうやら俺の勘は当てにならないらしい

かなりヤバそうな事を俺にするつもりだったようだ


「まぁ何でも良かろう。だが実験協力と言っても寝たきりでは貴重な時間が無くなってしまう上に生体維持の手間が掛かる。

雑務をする奴隷も居ないわけではないが、そろそろ手が足りん。」


そう言いながら移動して、溶液に浸してあった白い手袋を手に装着すると、中にたっぷり薬品の入った注射器がいつの間にか握られていた


「それでは人という原型を留めたままで、君の肉体は改造(ちりょう)しよう。」


ブスッと雑に注射器が刺されると共に、意識が薄れていく。

最後に見たのは、口角を上げながら欲に塗れた顔で嗤う男の姿だった。

読んでいただきありがとうございました。

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