絶望は死なないっ!?
本来ならギアスを使っても俺とカマキリほど強さにの差があれば、覆す事はかなり難しい。
呪いの装備、加護、等のギアス以外の力を使うなら話は変わってくるが、普通にギアスのみの力を使うのならば最低でも数百のギアスを重ね掛けする必要がある。
その問題を解決する手段がノーウィンギアスとデメリットギアスだ。
名称は適当なのだが、
デメリットギアスはギアスの代償や条件を他のギアス等で補った出来なくする事で、効果を上げるもので
ノーウィンギアスはギアスの遵守、条件を意味の無いものにする事で、そこに新たに掛けるギアスの効果を高めるものだ。
俺が四肢を全部失う事で得た特別ボーナスギアスは【四肢の力を凄まじく上げる】だった。
そこに【四肢の力を失う代わりに、魔力を得る】ギアスを積む。
こうする事で普通に四肢がある状態で積むよりもギアスの効果が高まり、優に数十倍の魔力が得られる。
更にデメリットギアスで両腕、両脚の再生、回復、代替の不可を条件にして、【四肢の回復と再生】のギアスを積んで、そこに【四肢を回復、再生させる力を失う代わりに魔力を得る】等の様な同じ事を繰り返す。
その上で普通に【本気で殺したいと思った相手にしか使わない】や【知恵ある相手にしか使わない】【圧倒的格上にしか使わない】と言った誓約を積みまくる。
「さぁ思いつく誓約とギアスは全て試した。
更に!!」
周囲の地面がせり上がってそのまま上まで閉じる。
暗闇の中、俺は魔力を込めながらオリジナルの詠唱を掠れる声で詠う。
「土よ。地よ。そこに秘める大いなる力を我が為に震わせろ。全ての大地よ。全てが還る生命の素よ。
我が矛となり、龍を象れ。
敵を穿ち、万象等しく大地へと還せ。」
【破砕地龍之咆哮】
中二病的な詠唱も魔法名も魔法を強力にするギアス。
実際の詠唱もこんなものだが、自分で考えたせいか羞恥心が凄まじい。
だが、それ故にイメージも補完され、相乗効果で凄まじい威力となった。
周囲からも魔力を掻き集めると、せり上がった土が崩れ落ちる。
その瞬間に発動した魔法は、土砕流の身体を持つ全長30mほどもありそうな巨大な龍になり、カマキリに猛スピードで食らいついて遥か彼方へと吹き飛ばした。
‥‥‥‥‥‥‥かと思った。
あれほどギアスを積んで強化したのにも関わらず、カマキリは5mほど地面に身体と細い脚の跡だけ残して微動だにしなくなった。
ピシッと嫌な音を立て龍に亀裂が走り、凄まじい勢いで全身へ拡がってゆく。
「嘘‥‥‥だろ!?」
『無駄ムダ。』
崩れ落ちた龍の前にはかすり傷すら付いていない姿のままのカマキリが悠々と立っていた。
「あり得ねぇ‥‥っ!マジで5年間続けて来たギアスすらも失ってまで強化したんだぞ!?
コイツを潰して、地形を変えながらここから数百km移動するくらいは余裕で出来る筈だ!!」
『ククク。その技法は確か魔法トかだったか?
そんなもンを使ってル奴はここら辺ニワもういねェよ。何故だか分かるか?』
急に流暢な喋り方になった声が語り掛けてくる。
その言葉はイヴに禁断の果実を食べさせる蛇の誘惑とも、見下した人間の愉悦的な声のようにも聴こえる。
『通じないからサ!!
あらゆる魔力による攻撃は触れた途端に崩壊して消えちまう!!
それは俺達ダケじゃなく、ここらに生きてる奴等も一緒さぁっ!!
その酷くみみっちい行為を嘲笑う様に、圧倒的な身体能力に任せて全てを喰らい尽くして終わりだ。』
「魔力が崩壊‥‥‥?
魔法が‥‥‥何も‥‥通用しないのか‥‥‥。」
目の前がだんだん暗くなっていく。
血を大量に無くしているからでは無い、感情が壊れかけて来ているのだ。
『そうだぁ!!
つ〜ま〜り〜腕も脚も失くなった。いや、自ら失くしたオマエは‥‥もうなす術が無い。』
諦めて絶望し泣き喚け。
自分の心までが、もう折れたくて、諦めたくてか、そう語り掛ける
もう無理。死ぬ。嫌?避けられない。運命?ふざけるな、何が、どうして、理不尽だ。
どうでもいい!!!!
そんな事で迷うくらいなら、こいつを殺すギアスを探れ。
ただただ死の淵までもがいて、殺すっ!!
前世と今世の全てを賭けると誓ったんだ!!
『あ〜?』
「‥‥‥俺は絶望しねぇ。」
『アヒャハハハ!!そんな台詞を言いやがった奴は喰うとイケルやつばっかだったぜ?
皮を少しずつ剥いでいけば‥‥‥直ぐにみるみる美味くなっていきやがる。最期には身体中から色々と垂れ流しながら懇願するんだよ。
死にたくなぁ〜いってな。』
「お前に喰われるくらいなら‥‥‥‥っ!!」
空っぽになった魔力を振り絞る。
その魔力を身体の中心を集めて、圧縮する。
『自爆か!?』
爆発すると判断して、殺そうとして来るのを魔法で起こした爆発で避けると、強化した咬筋力でカマキリに喰らいついた。
『がぁっ!?テメェ〜!!』
ミシミシとカマキリの身体に歯が食い込む。
そのまま力の限り食い千切ると、カマキリから透明な血が辺りにばら撒かれた。
『うがあぁっっ!!赦さねぇぞボケがぁッ!!』
「ギイイイイイイッッッッッッ!!!!」
突然どこから現れたのか、ここら一帯を覆う程の巨鳥が降りてきて、カマキリを啄み、喰らい始めた。
視界が緑に染まる程のカマキリ達は、衝撃波が出る斬撃や直接乗り込んで叩き斬りに行ったが、まるで羽虫の様に振り飛ばされグチャグチャに潰されていた。
『はぁ!?このタイミングで来るかよ!!クソ鳥がっ!!』
その言葉が聴こえたようなタイミングで、グリッと巨鳥の眼球が横たわる俺とカマキリを捉えた。
嘴を大きく空けると、キィィッという充填音をたてながら口元に光が集まってどんどん巨大に膨れ上がって行く。
『おいおいマジか。光砲だと!?』
光が地面に放たれた。
地面が光咆の威力に負けて膨らみ、耐えきれずに爆発した。
「がああああぁぁっっ!?」
光咆の余波がすぐ近くの俺に来るのも、まさに一瞬の事だった。
俺はめくれ上がった地面と共に、どこかにふっ飛ばされてしまった。