決闘(魔人vsリオル)
かなり遅くなってスイマセン。
最近バタバタしていて、集中出来なかったせいで、文章も稚拙になっております。
門の上に降りて外を眺めてみると、普通のゴブリンよりも遥かに大きいゴブリンチャンピオンの大群がニタニタしながらこちらへと進群して来ていた。
見ると結構住人が外に出ていて、後ろの人が状況を分かっていないからどんどん後ろから押されていってる。
「ゴブチャンプか。面倒臭い奴等が群れやがって。」
ゴブリンチャンピオンはホブゴブリンが更に進化した個体で、肉体能力に優れている。
大体、平均的な成人男性の10倍程度の身体能力で、頭もそこまで悪くは無い。
「でも、ゴブリンチャンピオンと俺では相性が悪かったな。」
俺は門の上に立ちながら、魔力を溜める。
ある程度の幅はあるが、そんなに広くない場所に立てるのも修行の成果だ。
「【魔力吸収】【魔力合成】【目標把握】」
魔力吸収と魔力合成は自然に存在する少量の魔力を自らの魔力と混ぜ合わせて魔法の威力を上げる技術だ。
本来混ざらない自然の魔力を人の魔力に変換して魔力量を増やす、城の中でも出来る人は両手の指で数えられる程しか修得してない技術らしい。
そして目標把握はただ魔物を一体一体を同時に見る技術だ。
どっちの技術も魔法の師であるメリダの友人らしきちょっと不気味な女の人に貰った薬を飲んだら出来るようになっていた。
それが何かは知らない。怖いし。
「さぁ覚悟しろ脳筋共め。多重魔法広範囲熔岩池|超螺旋ファイアーランス」
ゴブリンチャンピオン達の周囲の地面から煙がモウモウと上がり、脚がズブリと地面へと沈む。
すると地面が真っ赤に赤熱して、ジュゥッと肉の焼ける音が生々しく聞こえる。
「グギャアアァァァ!!??」
身動きが取れないまま脚を地面から抜こうとするが、ガッチリ乾燥して固まった上に、皮膚が土とくっついて更に抜けにくくなっていた。
そこへ俺の超螺旋ファイアーランスが一体一体の頭に寸分の狂いなく命中する。
全てのゴブリンの頭が抉られ、身体ごと炎に包まれた。
「うわあああぁァァァっっ!!!!」
突然出てきたゴブリンに思考停止していた住民達は悲鳴を上げながら慌てて街中に戻ろうとするが、待っていた住民が詰まっていて街に戻れない事で更に錯乱する。
「あちゃ〜。前の人達の錯乱が全体に広がってるな。」
幸いな事に悲鳴と魔法が着弾した時の轟音で最後尾の人達も何かあったことを察知して教会などへと直ぐに戻って行った事が幸いだった。
「でももう敵は居ないし、根拠の無い混乱は長続きしないからじきにおさまるかな。」
そう判断した俺が門の上に腰掛ける。
ふと前を見ると、黒いマントを羽織った男が空中に立っていた。
白い山羊の角が頭から生え、カラコンでも入れたような真っ赤な眼が俺を真っ直ぐ見据えていた。
その男が右腕を厳かに俺へと向けた途端、強烈な殺気を感じて全力で横へと避ける。
「【獄炎弾】」
金属の門がドロドロに融解して、砦の壁も壊しながら一直線に進んで、街の中心にある領主の館の一部を吹き飛ばした。
頭に山羊の角がある事から悪魔の魔法だろう。
「ふざけんな。なんつー威力だよっ!!」
思わず悪態をつく俺をその悪魔はグリンと首を回して見てくる。
間接の動きを半ば無視した動きに気味悪さを覚えるが、そんな物を気にして隙を見せることはできない。
「それで?魔界に住んでるはずの悪魔様が一体何のご用件で?」
「‥‥‥下等な人間等と俺は対話などしない。」
怒りを無理矢理押し殺したような無表情で再び魔法を放ってくる。
人間を視界に収める事も嫌なのか、顔を反らしながら圧倒的な魔力量に任せて無差別に撃ちまくってくる。
「そんな適当な攻撃が当たるか!!」
足の指を巧みに使い、ヌルヌルと弾幕の合間を抜けていく。
この程度の弾幕なら、もっと速い剣の弾幕を訓練の時に数万回も食らってる。
「【覇拳】」
近づいて拳で殴る。
風で加速し、土で硬くし、火を纏わせ、水で穿く。
全ての魔法を使ったオリジナルの拳激を悪魔の顔面へと叩き込んだ。
ミシッと俺の拳が軋む。
感覚的に骨が折れたかも知れない。
「弱い。弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い!弱い!弱い!弱い!!弱い!!弱い!!!弱い!!!弱い!!!!」
悪魔がイライラした様子で、大声を上げて叫ぶ。
羽虫を振り払うが如く腕を振った風圧だけで俺は吹き飛ばされた。
「クソッ!何だよ鬱陶しいな!!」
悪魔が人間を襲うのは分かるが、それに苛ついたりする理由が分からない。
その上、わざわざ手加減する必要なんか無い。
ジワジワと甚振るのが好きだと言えばそこまでだが、それなら苛ついたりしない。
「おい!悪魔!!
さっきから何なんだよ!!この情緒不安定野郎がっ!!」
「あ?人間風情がっ!!
我等の存在がバレてはならない?こんな下等種族を何故警戒する必要などある?
我が手加減してこのレベル!!
我に命令しても良いのはあの御方と我自身だけだぁっ!!」
悪魔が急に激高したかと思うと、これまでとは比べ物にならない程の魔力のこもった風の刃が視認するのも難しい速さで、飛んできた。
「ふざけんなっ!?」
俺はあらゆる能力を上限まで上げて、風の壁を無理矢理展開して、反らすことでギリギリのところで身体をずらす。
それでも躱しきれずに、攻撃が頭を掠る。
「貴様、その髪の色は‥‥‥っ!王族かっ!!」
どうやらさっきの攻撃で髪の色を変える魔道具が、壊れたらしい。
亜麻色の髪が王族の証でもある銀髪へと戻っていた。
「ククク。ならば貴様は我が全力で殺す必要があるな。」
何かを納得したかと思うと、急に笑いだした。
苛ついた表情がニヤニヤ顔に変わり、凄まじいスピードで殴って来た。
「ぐあぁぁっ!!」
防御するのに手一杯で、織り交ぜて飛んでくる魔法の攻撃の余波で建物がボロボロに崩れ落ちていく様が見える。
「ぐはぁっ!!」
攻撃に当たった俺は瓦礫の上を転がって、距離を取る。
悪魔は一気に距離を詰めて再び攻撃を加えようとするものの、少しタイミングが遅かった。
「食らえ。」
カァッ!!と全方位に目を焼く光の魔法を発動させた上に火竜の血をぶっ掛けておいた。
光撃と灼熱の血を食らった悪魔は、目を押さえて空中へ逃げて俺の反撃を避けた。
「よしっ!目を潰した!!」
少し安堵したのも束の間、視力が戻っていないにも関わらず、正確に俺の居場所へと魔法を飛ばしてくる。
俺は瓶を袋から取り出して、近くの瓦礫へと叩きつけた。
中に入っていた紫色の液体が一気に広がって煙幕の様になった。
「魔力を含む煙か。人間が小賢しいっ!!」
ドンッ!!
という音を立てて悪魔が投げた大岩が、爆散する様子を俺は少し離れた場所で見守っていた。
「痛ぅっ!!
逃げるは出来そうだが、何も出来ずに逃げるってのは気に食わないな。」
俺は袋から小さな珠を二つ取り出す。
漆黒の禍々しい珠と、高貴さすら感じる真っ赤な珠。
「これは使い捨ての切り札だから使いたくなかったんだよなぁ〜。」
二つの珠を手で握り込む。
そのまま残った魔力をすべて注ぎ入れる。
すぐにひどい脱力感が襲ってくる。
「そこかっ!王族のガキめっ!!」
身体ごと猛スピードで俺が隠れている場所へと突っ込んで来た。
俺も覚悟を決めて悪魔の正面へと躍り出る。
「わざわざ殺されに来たか!!」
悪魔のガチの意味の魔の手が迫る。
その手が俺の胸を貫くかといった瞬間、手に持った二つの珠を思いっきりぶつけた。
「ゲバァッ!?」
赤い珠がぶつかると、そのままの勢いで悪魔の身体にめり込み、吹き飛ばした。
そしてある程度の距離、俺から離れると封印された炎竜王の炎(眉つば)が悪魔のみを飲み込んだ。
30秒ほど、獄炎の牢獄に囚われていた悪魔は四肢の一部を消し炭にして地面に落ちる。
「ふぅ〜。流石は炎竜王の炎とやら。
使うのは初めてだが、塵も残さず焼き殺すと思ってたけど、意外と原型を留めてるもんだなぁ〜。」
俺は悪魔の亡骸に近づいて、チョンチョンとそこら辺の枝でつつく。
すると、ピクッと悪魔の身体が動いた。
サッと距離を取る。
「ぐ‥‥ぁ‥‥っ!!」
うめき声を上げる悪魔は懐からポーションを取り出して、自分の身体にぶっ掛けた。
シューシューと煙を立てながらみるみる傷が治っていく。
「糞がぁぁぁぁっ!!!」
手を地につけながら起き上がろうとしてくる悪魔だったが、その途中で悪魔の腕が曲がってはいけない方向へと曲がっていた。
「よっしゃぁっ!!悪魔にも問題なく効果があったな!!」
「グゥ‥‥っ!!貴様ぁぁぁっ‥‥何をした‥‥?」
悪魔が地に這いずったまま喚くが、それを言うほど俺馬鹿じゃない。
と言うか言わなくてもすぐに分かる。
「ウギャァァァッッッ!!!!」
ボトリと悪魔の腕がグチャグチャになって落ちる。
その腕は瞬く間に、何かによって食い散らかされた。
「グゥッ!!【煉獄炎煌】」
自分の身体に炎を放って、体内の何かを無理矢理焼き尽くそうとしているみたいだが、ダメージを受けているのは主に悪魔自身で、体内の何かは炎の中でも何事も無いように悪魔の肉体を貪り食っていた。
「地獄の炎すら耐性を持つかぁ!!【神炎絶滅】」
黒い炎が悪魔の身体を容赦無く焼いていくが、身体にいる何かも黒い炎には耐えられなかったのか、焼き焦げてボトボトと肉の隙間から落ちていた。
「ガフッぅ!ガハッぁ!!はぁはぁっ。
よくもやってくれたな王族め‥‥‥。かなり体力を削られたが貴様を殺すくらいの体力なら残っているぞぉっ!!」
どこからか取り出したポーションをガブ飲みして、焼け爛れた身体を回復させると、俺を睨みつけながら角からバチバチと雷を迸らせる。
「がはぁっ!!」
悪魔が魔力を使うと、大量の血を口から滝のように吐き出した。
再び力を無くしたように倒れ込むと飽きる事なく俺を睨んでくる。
「何をした?」
「え〜と、確かかなりの数の難病に罹ってるんだ。
ポーションでも病気は治せないし、身体を焼いても病気が完治したりはしないからな。」
俺が説明すると、ゆっくり血を拭いながら立ち上がった。
病気でも、怪我の具合でも、人間では意識を保つことすら出来ない程の重症だから悪魔の馬鹿げた生命力が伺える。
「ゴホッ!!ガハッ!!!!
‥‥‥ぐぅぅ〜っ!貴様ぁ〜!!
我が貴様の息の根を止めて、人間共を皆殺しにする!!
覚えておけっ!!」
悪魔は黒い羽根を取り出すと、フォンと音を立てて転移していった。
俺はふぅと安堵のため息をつきながら、地面へと座り込んだ。
そして空を見上げながら言った。
「あぁ、これで明日、父上に怒られなくて済む。」
悪魔がちょっと情緒不安定なのには理由があります。