人に会う
「うお!?」
思わず叫んだが、暗さはもうなくなっていた。すぐにその場から離れて転移した所を確認する。
渦巻き状のものも消え、ピンクスライムもいない。うん、ゲームの時もモンスターは転移してなかったな。
落ち着いた所で辺りを見回すと、今度は木や森がある。遠くには崖も見える。
しかし村や町はなく、人もいそうになくて、振り出しかと思うと軽く気分が落ちる。
少し休憩して気分を落ち着かせた後、探索を開始する
。
しばらくすると、ピンクスライムが移動してるのが見えてくる。少し離れて回り込み、正面に向き合うが、そのまま明後日の方向に去って行った。どうやら二回目に遭ったピンクスライムだけが特別だったみたいだ。
再び探索をしていると、今度はピンクスライムの色違いなモンスターを見つけた。しかも赤、青、橙、緑、銀、紫と様々な色のを立て続けにだ。
場所とモンスターに変化があったことに少し気分があがっていくのを感じていると。
「こんにちは。こんな所でどうされたのでしょうか? レベル上げですか?」
いきなり後ろから声をかけられて、驚いて首が回りそうな速さで振り返ると。
そこには身長は俺とさほど変わらないが、金髪の髪が背中まであり、ベールはないが足元まで長さのある長袖で、紫色の修道服を着た女性が立っている。
胸はやや大きめで、なかなかスリムだ。
ただその修道服には、大胆にも腰までぐらいのスリットがあり、太ももが見えている。
痴女? いやいや、修道服を着ている痴女はいないと思いたい。
そんな事を考えながら反応が遅れると。
「どうしました? もしや体調が優れないか怪我等されてませんか? お困りなら回復させていただきます」
「あ、いえ、申し訳ないです。ちょっと初めて人に会ったのでびっくりしたので……」
どうやら優しそうな人だ。
「そうでしたか。それは失礼しました。でも初めて人に会ったとはどういうことなんでしょうか? 着ているものもここら辺では見たことないものですし」
「えーとですね、着てるものはジャージで、遠い所からやってきて今まで誰にも関わることなく、初めて会ったのがあなたで」
とっさに考えたにしては、なんとか言い繕ことができた。せっかく人と会えたのに、怪しまれたりして去られたら、この先どうなるかわからない。
「じゃーじ? というものは知りませんが、遠い所から大変でしたでしょう。何かお困りのことはないですか?」
「でしたら近くの村か町を教えて欲しいのですが……」
「では近くの町まで案内いたしましょう。そのほうが早いですし」
教えてくれるどころか、案内までしてくれるみたいだ。やっぱりこの人は優しいな。初めて会ったのがこの人でよかった。
「それじゃお願いします。あ、すいません、まだ名乗ってもいないですね。俺はプルートと言います」
相手の名前がわからないのでとりあえずゲーム時代の名前を教える。苗字とかないかもしれないし。
「御丁寧にありがとうございます。私は神官のアウラと申します。どうぞよろしくお願いします」
やっぱり苗字がなかった。日本風の名前でもないし。
「それでは参りましょう。 テレポートゲート!」
地面から青く透明な円柱状の光が輝く。この光の中に入れば一瞬で移動する、転移魔法だ。
「さあ、どうぞ早くお乗りください」
それの中に入ると光に包まれる。次の瞬間、また目の前が暗転した。