第5話 佐々木
英和辞典だった俺の美少女メイドは学校では、俺の双子の妹ということになっている。
カレンが俺のクラスメイトや先生にカレンを俺の双子の妹と思わせる魔法をかけたからである。
なので、わざわざ転校する必要性がなく、はじめから俺のクラスにいたというわけだ。
少なくとも、周りの友達はそう思っている。ただ、一人を除いては・・・
「あんなかわいい子、俺たちのクラスにいたか?」
昼飯を食べている俺の隣で1人の俺のクラスメートであり、俺の数少ない友達が突然言い出した。
もちろん、かわいい子とは、カレンのことである。
そして、そんなことを言った彼は、佐々木である。
「あの子の名前って何だっけ?」
「カレンだよ。」
「お前、よく知ってるな」
「クラスメイトだろ・・・」
カレンは女友達4,5人と仲良くお弁当を食べている。俺の弁当もカレンに作ってもらった。
「そして、俺の双子の妹でもある。」
「うそつけ、お前には双子の妹なんていないはずだぞ?」
カレンの魔法は佐々木には効いていなかった。佐々木、お前は何者だ。
「いやいや、俺には、昔から双子の妹がいたんだよ。」
「何言っているんだ、お前は昔から一人っ子だったぞ。勉強のしすぎか、アニメの見過ぎで頭がおかしく
なったのか。」
ごまかそうとしたが、佐々木は気づいていた。
もしかしたら、佐々木のほかにも気づいているやつがいるのか・・・?
全員に確認したい。”カレンは俺の双子の妹だよな?”と。
クラスにいきなり金髪の美少女が現れたら、何かしら反応があるだろう。
気づいているのは、佐々木だけだと願いたい。
このあと、俺はクラスメイト一人一人にカレンのことをたずねた。
どうやら、カレンのことを気づいていたのは佐々木だけらしい。
翌日から、俺はカレンのことが大好きなシスコンだとクラスメイトから認識されてしまった。
放課後、俺は佐々木と帰っていた。 俺と佐々木は帰宅部だ。
「お兄ちゃん。一緒に帰ろう!」
カレンが後ろからやってきた。学校では俺は、カレンの兄なのでカレンは俺のことをこう呼んでいる。
周りからみれば、仲のよすぎる、双子の兄弟だが、佐々木にとっては違う。
これは、カレンのことを話すしかないか・・・
「佐々木、実はカレンは・・・」
俺は今までの出来事を佐々木に話した。頭のおかしいやつだと思われただろう。だが、佐々木は、黙って
俺の話を最後まで聞いてくれた。
カレンも不安そうに俺の話を聞いていた。
「以上だ。佐々木。信じられないと思うが、この話はすべて本当のことだ。」
佐々木が口を開いた。
「なんだ、そんなことか、確かに変だと思ったんだよな。お前に双子の妹がいるってこと。」
「信じてくれるのか、俺の話を・・・」
「こんなかわいい子が人間なわけないじゃん。」
佐々木が意味不明なことを言いながら笑っている。 この瞬間、カレンの正体を知る人間が1人増えた。
カレンの正体を知る人間が増えることが何を意味するのかは俺にはわからない。
だが、俺は少し寂しい感じもした。
「これから、よろしくね。カレンちゃん。」
「はい!よろしくお願いします。佐々木様!」
カレンは笑っていた。本当の自分をしる友達ができたことについて。
それにしても、佐々木はすごいな。話したことのない女の子とこうやって話せるなんて。
佐々木はこの日から俺と同じ英和辞典を使い始めた。美少女に変身するかどうかはわからないが。