キリストの生まれ代わり88
「同じさ。キリストの死はキリストの死なのだから」と警官は言った。
警官が女子大生に向かって反論した。
「しかし、その論理はおかしいぞ。キリストは言わば復活する為に死ぬのであり、それをも立派な愛の成就の形ならば、汝敵を愛せよで、殺される事は、人間の罪を一身に背負い、復活して人間を救済するのが真の目的ならば、一連の救済する目的があるからこその汝敵を愛せよの、殺される事じゃないのか?」
女子大生が反論する。
「いや、それはあくまでもゴルゴダの丘に至るキリストの道標の中での、殺される事の汝敵を愛せよの関連性理論だから、今話しているのは、仮にキリストが戦場で極限状況に陥った時、相手に殺されるかどうかの話しをしているわけだし」
警官が怪訝な顔付きをしてから言った。
「だからその死をも、キリストの死ならば、一連の救済に繋がる死だからこそ、キリストは汝敵を愛せよと死ぬのではないのかね?」
女子大生が弁解じみた反論を重ねる。
「だから、その戦場に赴くキリストは一般人として措定されており、だからこそ、一連の救済という概念を排した死ぬ事だから、別項だと私は考えたわけであり…」
警官が駄目を押すように言い放つ。
「同じさ。キリストの死はキリストの死なのだから」