キリストの生まれ代わり87
「ならば戦場でキリストが極限状況となった時、キリストは汝の敵を愛せよと命を投げ出しのでしょうか?」と私は尋ねた。
臆せず私は言った。
「しかし、例えば戦場で汝の敵を愛せよでは命が幾つあっても足りませんよね。と言うかキリストは殺さなければ殺されてしまう戦場で、汝の敵を愛し殺されに行くのでしょうか?」
坊主頭の厳つい警察官信者が答える。
「そんなのは当たり前だろう。キリストは汝の敵を愛せよで、人間の罪を一身に背負い、ゴルゴダの丘で十字架を背負ったのだから」
私は注釈を入れた。
「ちょっと待って下さい。キリストの言う汝の敵を愛せよという語句には、条件付きで人間全体の罪を背負う意味合いがあるのですか。無条件に汝の敵を愛せよではないのですか?」
カウンターの女子大生が警官の言葉を否定した。
「いえ、汝の敵を愛せよとゴルゴダの丘は無関係であり、無条件にキリストは汝の敵を愛せよと言ったまでで。そこに余計な含みは一切無かったと思います」
私は改めて尋ねた。
「ならば戦場でキリストが極限状況となった時、キリストは汝の敵を愛せよと命を投げ出しのでしょうか?」
女子大生が答える。
「それは無条件に投げ出したと思います。けしてそこには人間の罪を一身に背負う狙いなどなく、キリストは敵に殺されるでしょう」