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キリストの生まれ代わり80
「しかし神は死んだと言って命を失った実存主義者がいましたか?」とキリストが私に尋ねた。
私は反論を連ねた。
「しかし神を賛美肯定するのも哲学ならば、それを否定するのも立派な哲学だと自分は思うのですが。と言うか、キリスト教徒が神を否定して、神の加護から抜ける行いというのは正に命懸けの行為であり、それだけで賞賛に価する事だと思うのですが、違いますかね?」
キリストが真っ向否定する。
「いえ、それは分を弁えない人間の驕り高ぶりであって、自分を神的存在だと暗に言っている所作だと私は思います。それは明らかに越権行為であると言い切れますね」
私は否定した。
「いえ、実存主義者は己の中にある神性をも否定して、神は死んだと宣わったと思うのですが。だからこそ、それは命懸けの行いであると自分は言いたいわけです」
「しかし神は死んだと言って命を失った実存主義者がいましたか?」
私は首を振り答えた。
「いえ、それはいません…」