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キリストの生まれ代わり79
「それが最高峰の哲学ならば、神の誉れもさぞ高かったろうと私は思いますが、いかがでしょうか」
キリストが続ける。
「と言うよりは、神は死んだという格好付け、美辞麗句の中には、明らかに当時のヨーロッパ弁証法哲学の急先鋒ポーズ取りがややもすると窺え、鼻持ちならない感じがするのは私だけですかね」
私は反論を重ねた。
「と言うか、大前提、小前提、帰結の三段論法から必然的に演繹されたのが神は死んだと言う語句であり、そこには確かに鼻持ちならないポーズじみたものも窺えるのですが、これは真正の実存主義哲学という範疇の産物であり、それ以外の何物でもないと思います」
キリストが鼻で笑い言い放つ。
「神が死んだと帰結するのが、己のキリスト教徒たる事実を棄てた証拠。それが最高峰の哲学ならば、神の誉れもさぞ高かったろうと私は思いますが、いかがでしょうか」
私はキリストを直視して尋ねた。
「皮肉ですか?」
キリストが答えた。
「いえ、皮肉というよりは誹謗中傷です」