キリストの生まれ代わり76
「概念としての無は限りなく存在感が希薄だからこそ、無であって、それ以外の何物でもなく、無に存在感を付与するのは根本的に失礼なのかもしれませんね…」と大学生は言った。
大学生が言った。
「しかし、あるという言葉を無いが支えているならば、あるは無いであり、無いはあるに通じて、そのままあるが無いとなり、両方共に消滅して行く唯々ならば、それはやはり単なる無の顕在化であり、だからこそ、存在と無ではなく、存在は無という方程式になるのかもしれませんね」
私はキリストを一瞥してから答えた。
「成る程。しかし無を存在として措定する事は可能だと思いますか?」
大学生が頷き答える。
「無という語句で捉らえれば、その語句自体の存在感としては存在しますよね」
私は尋ねた。
「概念では?」
大学生が首を傾げ答える。
「概念としての無は限りなく存在感が希薄だからこそ、無であって、それ以外の何物でもなく、無に存在感を付与するのは根本的に失礼なのかもしれませんね…」
私は再度キリストを一瞥してから言った。
「無の果てしない連鎖も単なる無の顕在化にしかならないという感覚ですか?」
大学生が頷き答える。
「そうですね」