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キリストの生まれ代わり5
彼の言葉と私の見た夢の符牒が見事に合い私は暫し絶句した。
喫茶店の中を見渡すと、一般客は全くおらず全て彼の信者よろしく、私と彼の会話に耳を傾けており、私はそれを牽制するように一つ咳ばらいをしてから再度尋ねた。
「どのようにして啓示を受けたのですか?」
彼が冷静な口調で答えた。
「瞑想をしていて天から天命というか詔を受けたのです。これを読めば分かり易くその啓示の内容が描かれています」
そう言って彼がパンフレットのような体裁を施した小冊子をカウンターの上に差し出した。
彼がそのパンフレットを開き、天国という項目を細やかな手つきで指差してから言った。
「まず天国には乗り物で行くのですが、救いの意味は、その乗り物が定員一杯にならないと発車しないから救うのです。言わば救いというのは他人ばかりではなく己の為でもあるのですね」
私は恭しく頷き尋ねた。
「天国というのはどんな処なのですか?」
彼がパンフレットから指を軽く離し答えた。
「神々が無邪気に遊んでいるだけなのです。それが天国ですよ」
彼の言葉と私の見た夢の符牒が見事に合い私は暫し絶句した。