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キリストの生まれ代わり23
「仕方ないのです。それが戦争ですから…」とキリストは歎き言った。
私は強く主張する。
「国家の全体主義思想で洗脳されても、各自の個人的な事情は潰えないと言いたいのですか?」
「それはそうです。幼い子供を残して空襲で亡くなる母親の無念は国家の大義名分では括り切れませんから…」
私は涙ぐみつつ論う。
「それはそうですが、幼子とも死に別れ、天にも行けず地獄行きならば、余りにも悲し過ぎるではありませんか?」
固唾を飲む間を作りおもむろにキリストが答える。
「仕方ないのです。それが戦争ですから…」
「仕方ないでは済みませんよね。そんなのは国家が余りにも無責任ではありませんか?」
「仕方ないのです。それが人間存在の宿命ですから…」