キリストの生まれ代わり104
「貴様、何を仲間を馬鹿にしているのだ。殺してやる、表に出ろ!」と警官が私に向かって怒鳴った。
私は警官に尋ねた。
「汝、姦淫する事なかれは、所謂売春を禁じている法なのでしょうか?」
警官が頬を引き攣らせ、悪意を込めた眼差しで鋭く私を睨みつけてから言った。
「そんなの当たり前じゃないか。汝、姦淫する事なかれは全ての不純な性の在り方を禁じている戒律、法なのだから」
私は反論した。
「でもキリストは例えば淫らな不倫や売春をしている女性でも、けして迫害差別したりせず、救済の手を差し延べたのですよね?」
この問い掛けにはキリストが答えた。
「それはそうですね。キリストはけして身分や階級、職業で人を蔑む事は無かった筈ですから」
警官が不遜なる態度のままに自分の意見を付け加えた。
「当時のユダヤ教の戒律では、汝、姦淫する事なかれの立法が厳格に機能していて、例えば不倫など犯した者には石を投げ付け、撲殺、死罪にしたのさ。キリストがそれを助けたエピソードがあるじゃないか」
ここで私は警官の聖書に対する知識蘊蓄が私と同様、信憑性を欠く事をそぞろ感じ取りつつ、カウンターの中にいる女子大生に向かって言った。
「ではここでは売春婦もけして差別されたりしないわけですね。だったら女性には生まれもっての売春性向がありますよね。貴女は自分の中にある売春性向を認めますか?」
この言葉を聞いた直後、警官がいきり立ち、怒鳴った。
「貴様、何を仲間を馬鹿にしているのだ。殺してやる、表に出ろ!」