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キリストの生まれ代わり100
「慈愛や慈悲も差別偏見に満ちていると貴方は言いたいのですか?」とキリストは私に尋ねた。
落とし所を探す所作に何とか逆らうが如く、私は話しの渦中に身を投げるように話し合いに加わって行った。
警官が言った。
「キリストに関して言えば、罪の無い人間は一人としておらず、罪を我がものとしている人間に他の人間を裁く権利は無いと示している部分もある以上、それはある意味、差別感や偏見はキリストには有り得ないというところに繋がっており、それは人間存在の悪しき矛盾を突く、慈悲の顕在化だと思うんだ」
私は反論した。
「でも現実問題、法を作るのも法を行使するのも、不完全な人間が為しているわけです。それは取りも直さず、慈悲や慈愛もその不完全な文律、不文律で出来ていて、そこから逸脱出来ないならば、そこには逆説的に人間の差別感や偏見は不可避に存在するものですよね」
キリストが言った。
「慈愛や慈悲も差別偏見に満ちていると貴方は言いたいのですか?」
私は頷き答えた。
「そうです」