博士の夢
ここは、とある薬を開発するためにエヌ博士が、国家に秘密裏で作った地下研究所。
「やった!苦節40年、わしの研究が実り、ついに夢の薬が完成したぞい!」
そういってエヌ博士は、1人でこの研究所に大量の食料と共に篭り、人生の大半を研究に注いだ半生を振り返り、完成した薬を感慨深げに眺めた。そして、完全に自分に陶酔しきっていた。
興奮冷めやらぬままエヌ博士は、ようし! といって、早速その薬を自分に使ってみたくなった。
が、まずは、実験用のラットでその薬の効果を確認してみた。もちろん変化はみるみるの内に現れた。
「ガハハハハハ!」
エヌ博士は、笑いが止まらなかった。
その勢いでエヌ博士は、その薬を服用し、研究所の外に飛び出た。だが、エヌ博士は外の景色を眺め、「なんということだ…」と力無く言葉を発し膝から崩れ落ちた。
なんと、エヌ博士が地下で研究に没頭している40年の間に地上では、世界大戦が勃発し、核兵器により外は一面、焼け野原になり人類は、エヌ博士を残し絶滅していたのだ。
エヌ博士は、もう一度放心状態で呟いた。
「なんということだ。折角、夢の透明人間になれる薬を作ったのに、これでは、わしの銭湯の女湯を覗くという夢が台無しではないか……。」