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夢占い亭 霞の館  作者: ゆう
第二夢
10/37

~ねぇ、あなたは誰?~6

「こ…怖かった…。」


銃をおろしてもらい、ようやく安堵した睡魔は汗を拭った。


「いや、あんたの見た目の方が怖いから…。」


「あ、あぁそうだよね、うん、そりゃそうだ。」


千奈美のごもっともなツッコミにまでいちいち慌てる睡魔は乾いた笑みを浮かべて笑った。笑った顔は、やはり怖い。


「…で、睡魔…さん?で、いいのかい?あんた、何の話があるんだい?」


タエ婆ちゃんは、おっかない睡魔に対して怖じ気つく事なく尋ねると、睡魔も姿勢を正し、軽く咳払いすると話し始めた。


「いや、実は…俺、婆ちゃんの旦那さんが亡くなって心が弱ってるところに生まれたんだよ。」


そう言うと、ポツリポツリと説明し始める。


「最初はね、婆ちゃんが苦しむ姿が俺にとっては最高に幸せだったんだよ。…いや、漠の兄さんや、その怖い目はやめてくだせぇ…。仕方ないじゃないですか、それが睡魔って存在なんですから。」


睡魔の説明に冷酷な目を向ける漠。その目線に耐え切れなくなり、睡魔はおどおどとし始めた。


「話が進まないよ、漠ちゃん、今、睡魔さんが話してるでしょうが。」


タエ婆ちゃんが漠をたしなめると、漠も仕方ない、といった顔をして睡魔を見て、顎でタエ婆ちゃんを指した。続きを話せ、という意味だろう。


「ありがとう婆ちゃん。で、えーっと、戦争の夢とか、結婚を反対された夢とか見たのは覚えてるかい?あれは俺が見せた夢なんだ、ごめん。」


「おやまぁ、あの夢は睡魔さんが原因だったのかい。ほんと、勘弁してほしかったわ。」


タエ婆ちゃんの言葉に、睡魔はもう一度、ごめんと言うと、更に話を続けた。


「まぁそうやっている内に婆ちゃんの心の中に、ある人の姿が見えたんだよ。まぁ、その、あれだ、婆ちゃんの旦那さんの思い出だろうね。それが日に日に強くなって、ちょこーっとだけ、現実世界を覗いてみたんだよ。」


そう言って睡魔は見た世界を思い出す素振りをした。


『あなた…あなたが亡くなって…もう一年ですか…早いもんですねぇ…。』


「位牌に向かって、そう話す婆ちゃんの事を考えたら…俺、何だか自分のやってる事が悲しくなっちまって。でも、俺が出来るのは悪夢を見せるだけ…。」


そう切なげに語ると、なら、と言って三つ目の全てに涙をためながら言葉を続けた。


「ならさ…悪夢に、なる前に景色を途切れさせて…ちょっとでも旦那さんの姿になって…お、思い出に、浸ってもら、もらおうと…ひっく…した、んだよ…。」


泣きじゃくりながら、説明をする睡魔にタエ婆ちゃんも優しく微笑んで、そっか、そっかと睡魔の頭を撫でた。


「漠さん…こういう事例っていうか、同じような事ってあったんですか?」


千奈美はさりげなく漠に尋ねると、漠も首を横に振った。


「本来、睡魔に意志が宿って喋る事自体、今までなかった事だから…僕もびっくり…。」


四百年以上、この世に存在している漠ですら、初めての事のようだ。表情を見ても困惑しているのは明白である。


「お前さんは、そうやってあたしを気遣ってくれたんだねぇ…。あたしも嬉しいよ…ありがとう、ありがとう。」


「ううん…婆ちゃん、お、俺は婆ちゃんに辛、辛い夢を見させちゃ、て、ごめ、ごめんよぉ…。」


「いや、いいんだよ、お前さんはあたしに主人を見せようとした、その気持ちがあたしは嬉しいから、もう気にせんでいいんだよ?」


「あ、ありがと、あり、が、とう…。」


そう言って、睡魔は三つ目からたくさんの涙を流していた。

その姿につられ、タエ婆ちゃんも涙し、そして関係のない千奈美さえも泣き出してしまった。


「な…何だか収拾がつかなくなりましたね。」


「そうだねー。」


そんな三人(?)を漠と有村は、ただただ泣き止むのを待つのであった。


ーーーーー

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