〝使命と存在〟
Day『?』
気づけば俺は校門の前にいた。どうやら夢を見ているらしい。感情とは関係なく事が進んでいく。何とも奇妙な気分だ。
俺が俺を見ている。それも、俺がだれかと話している場面を……。
「久しぶりだね、ここ最近ずっと喋ってなかったよね」
声の主はそう言った。俺が見ている俺という存在へ向かって。懐かしくも、見慣れた顔だ。ややかすれながらも綺麗な声の少女に俺は返事を返していた。
「あぁ、言われてみればそうだな」
「うそ。自分でも気づいてたんでしょ?」
「知るかよそんなこと」
「なんか顔色悪いね」
「疲れてるだけさ」
「全部知ってるよ」
「え?」
「あなたが何をしているのか。どう考えているのか」
「何の話かさっぱりだ」
「ホントにウソをつくのが下手だね」
「……ちっ。おまえには適わないよ」
「やっぱり当たってたんだ」
「俺、どうすればいいかな」
「う~ん。よく分からないんだけど、
今していることは良くないことだと思うよ」
「早く終わらせないと、
俺が終わらせないと、取り返しがつかなくなるだろう!」
「声を荒げないで。落ち着いて。
使命にとらわれちゃ、見えるものも見えてこないよ」
「だけど……」
「もう時間がないなぁ」
―――待ってくれ。
俺はそう言いたかった。しかし俺の声は出ない。俺は傍観者で、言えば自分自身は彼女と話してはいない。もう話すことが出来ない存在なのだ。
「もう少しで、答えが出そうなんだ……」
「答えは、出ないと思うよ。それは誠次の力が及ばないとかじゃなくて、そんなことじゃないというか……あ、もう行かないと」
「そうか、もうしばらく会えないよな」
「そうだね、でも、私の心はみんなと同じだよ」
体感しているのは俺であって俺ではなかったが、心は同じく悲しかっただろう。彼女とはもう会えないだろうと。そう言った思いが廻ってくるのだ。
事件に関わりのない、生徒会の一員。
それが彼女、九条アヤノ であった。