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チャンス到来 4

いつもよりちょっと長いです。


 ジンを追った私たちは、すぐに彼らに追い付いた。

 彼らとは、ジンとユイジィンのことである。

 誰よりも早くネイビスを追った彼らは、しかし途中で見失ったと言った。だからジンは、人員を集めるために一度帰ってきたのだ。

 ユイジィンは捜索を続けていたが、ジンと合流したことで戻ってきた。

 私たちの間にあった微妙な空気について、ジンから何か聞いていたのかもしれない。私たちを見る目は様子をうかがうようだった。

 まあ、肝心のギアが既にそういう空気を引っ込めていたので、表面的には変わりないように映っただろう。



 とにかく、『救世術』の最大の手掛かりを見失った私たちは、宿に居た。前と同じ宿ではない。

 同じ宿に泊まり続けるのは、居場所を知られて危険らしい。身の危険、と言うより行動範囲が知られて、逃げられる率が高くなることを危惧きぐしているようだ。

 そんな事情は、私にはあまり関係ない。寝られれば良い。私の意見はそれだけだからだ。

 正直、逃亡する者を追う経験なんて皆無だから、意見を求められても困る。実際に求められたことはないけれど。


 それはともかく、此処はその宿の一室。私のために、と特別に一人用の部屋を与えてくれた。他の男連中は2人一組で別々の部屋に居る。

 ジンは仲間と一緒に未だ街中をうろついている。少しでも手掛かりを得ようと必死なのだろう。

 さっき食事をしたタクトたちから得た情報だ。ジンが走り回っているのに、私たちはのんびりしているのか。とそのことに、良心が痛まなかったと言えば嘘になるが、過去を経験してきた私はとにかく疲れていた。

 それが顔に出ていたのだろう。

 最初は私だけが、宿で休むよう言われていた。タクトたちとしても、この機会を逃すつもりはなかったのだ。が、それを止めたのはジンだった。


「お前たちも疲れてるだろ。顔に出てる」


 そう言って、半ば強引に宿に留め置かれたのだ。しかしこのジンの言い分は、真実にそくしてはいない。

 明らかに疲れた顔をしていた私。それと、ネイビスを追ったユイジィン。この2人に関しては正しいだろう。が、特に動いていないタクトや、体力馬鹿のクラークやギアまで休めとは、これ如何いかに。

 ジンの真意は、ユイジィンが教えてくれた。いわく「仲間ではないから」だそうだ。


 まあ、確かにそうだろう。ジンとは協力関係にあったが、気を許した仲間ではなかった。それに、彼には報告が入っているはずだ。

 突然現れた老人や『プルプラ』のことが。

 不可解な現れ方をした老人に、私は明らかに標的にされていた。目に見えて厄介なあの状況を伝え聞いた彼の考えを読むのは、存外簡単だ。

 余計な問題は遠ざけるに限る。

 今の彼らに、別の問題にかかわっている余裕なんてないだろう。それを考えれば、私たちを宿に押し込んでおくという選択は間違っていないと思う。


 私としても、落ち着ける時間があるのは有難ありがたい。心配されたくないから、タクトたちの前では疲れているだけだと言って早々に退散した。

 疲れ以外は見せていないはずだ。私の心中はとても穏やかとは言えない状態だったけど。



 消えた彼女らのことが気になっている。それもそうなのだけど、一つが気になりだすと、他の関係ないことまで考えてしまうのが私の悪い癖だ。

 今まで考えまいとしてきた漠然ばくぜんとした不安が、胸の内にくすぶっているのが分かる。

 それらを集約するに、私の存在意義に疑問が湧いてしまったのだ。


 こんなに次から次にいろいろ起こるのは、一重ひとえに自分のせいなのではないだろうか?そんな疑いを抱いたのがきっかけだった。

 と言うか、老人が現れたのは間違いなく自分のせいだ。

 そう思うと、ウジウジとどうしようもないことを考えてしまう。

 ああしていたら、とか、こうしていれば、とか詮無いことを思ってしまう自分が嫌だ。

 それに、答えの出ない問いを考えることにも疲れていた。


 結果として、ベッドに腰かけていたはずの私がいつの間にか眠ってしまっていたのも、仕方ないことだったと思う。




*************




 唐突に思い出す。

 私は此処ここに来たことがある、と。

 いや、本当は覚えていたはず。でも、今まで思い出すことは出来なかった。

 最初に此処に来たのは・・・、あの黒い人と出会った時だ。


『思い出したんだ』


 ぼんやりとした耳に、『プルプラ』の声が届く。

 周りをぐるりと見る。が、姿はない。それでも声は確かに聞こえてくる。


『捜さないでよ。今私、逃げてるから』


 逃げてる?誰から?

 そう思って、ぱっと脳裏に顔が浮かぶ。

 あの老人か。


『ぶっぶー。『カエルレウム』とは一応和解したよ。一応、ね』


 『カエルレウム』?

 ああ、あの老人も神様だったっけ。考えてみれば分かることだ。『プルプラ』と知り合いってだけで、その可能性が思い浮かばない方がおかしかったのだ。

 夢の中だというのに、頭は冴え渡っていた。

 今ならどんな疑問や悩みにも、答えを出すことが出来るだろうか。


『冷静だね。それに、此処が夢だって分かってる』


 それはそうだ。冴え渡る私の脳は、ごく当たり前に現状を受け止めていた。

 『プルプラ』の声が笑い声に変わる。とても楽しそうで何よりだ。

 頭は冴えていると言うのに、感情の方は動かない。普段の私だったら、何笑ってるんだって、むっとしそうなものだがそれもない。

 理性が勝り過ぎて、感情が抑圧されているのだ。

 私の頭が即座に答えを導き出す。


『私を追っているのは、『アーテル』だよ。追うって言っても、彼動けないんだけどね。でも見通すことは出来るから。ちょっと反則だよね、あいつの能力』


 思考が逸れ始めた私を呼び戻すように、『プルプラ』は話を続けた。

 しかし魔王の、『アーテル』の能力ってそんな万能なものなのか。

 無感情にそう思うって、ふと疑問が湧く。

 でも何でも見通せるなら、こうしているのもすぐ見つかりそうなものだけど。


『何でもは見通せないよ。一応範囲ってものがある。とは言え、長居すれば見つかっちゃうから、さっさと本題に入るね』


 うん、と頷く。

 見えているのかは分からないけど。

 一拍置いた彼女が、再び声を響かせた。


『元の世界に、戻してあげようか?』


 思考が止まる。

 あんなに滑らかに動いていた思考が。

 その隙を突くように、彼女は言う。


『あなたの元居た世界。在るべき場所。誰にも迷惑を掛けない、誰にも追われない、あなたがよく知るあなたの世界に』


 それは・・・、それは?


『暖かくて、安心できて、そこそこ心配なことがあって、でもなんとかなる世界。わけの分からないことに振り回されない生活。戻りたいでしょ?』


 それは、確かに私の・・・、私たちの旅の最終目的。

 それを目指して頑張っている。主にタクトが。

 いや、私も頑張っている。彼ほど熱心になれていないだけで。

 いやいや、そんなことは関係ない。

 ・・・・帰れる?今すぐに?


『そう。あなたが望むのなら、今すぐにでもかえしてあげるよ』


 何故。

 真っ先に浮かんだのは、戻る云々より、何故今になってそれを言うのか、ということであった。

 だっておかしいじゃないか。

 こんなあっさり帰すのなら、出会った時に帰せば良い。いや、元より呼び出さなければ良い。

 私は何もしていないのだから。


『したよ。いろいろと、ね。私の望みに忠実に、あなたは小さな変化を起こした。そしてそれはこの世界に受け入れられた。変化した時間は、正しき歴史となった』


 どういうことだ?

 彼女の言うことが理解できない。

 いや、分かった。何にも阻害されない思考が、とある出来事を記憶から引っ張り出す。

 私は過去を変えた。タクトとクラークの出会いに干渉した。

 それが「小さな変化」であり、「変化した時間」ではないだろうか。


『正解!あなたの起こした出来事は、世界からすればとても小さい。でも、その些細な変化でさえ、めぐり廻って世界を滅ぼすことになりかねない。それが今までの私たちの、ヒトが『神』と呼ぶ者の考えだった。でもそれは違う。受け入れられない変化でなければ、どんな変化であっても歓迎すべきことよ』


 急にそんなことを言う『プルプラ』。

 私に聞かせているわけではない。ただ言いたいだけのようだ。

 私は黙って、彼女の言葉を聞いた。


『そして、有り得ないと思われていた変化であればあるほど、それがもたらす未来は大きく変化していく。私たちが予測できないほどに、大きく』


 彼女の笑う顔が目に浮かぶようだ。

 過去の世界で見た、恐れを抱かせる笑み。

 彼女は『神』なのだと、そう思うよりない笑みを。


『世界は変わる。そのきっかけをあなたは作った。だから、もう良いかなって』


 口調がいつも通りになる。

 軽い言い方だが、内容はとても重大だ。


『他の『神』がよく思わないのは想定内だったけど、それ以外が手を出してくるのはね、困るの。私たち『神』は、極力この世界の生き物に手出ししちゃいけないから』


 「『ルーテウス』はその辺適当だけどね」とくすりと笑う。

 笑い事ではないだろう。そう思うが、感情自体は動かない。

 頭の中では、納得しているのが不思議だった。


『ま、そういうわけで、どうする?』


 それは問い掛けだったが、答えを返さなければ問答無用で返還されそうな雰囲気があった。

 しかしどうする、というその問いに、何故か私の思考は上手く働いてくれなかった。

 いきなり言われた時とは違い、冷静さは戻っている。なのに、頭が動かない。

 どうする?問いが頭の中を回る。


 どうするか。どうしたいか。そう思っていたら、ふと思った。

 帰りたくない。

 いや、今すぐには、帰りたくない。

 いつかは帰る。でもそれは今ではない。

 気付けば、するすると思考は進み始めた。



 帰りたくないわけじゃない。帰れないわけでもない。でもまだ、帰りたくない。

 始まりは望まないままだったけど、此処までは半ば流されて来たけれど・・。

 今私自身が決めて良いなら、もう少しこの世界に居たい。

 タクトやクラーク、ギアやユイジィンと一緒に、一歩でも先へ行きたい。


 こんな所で終わるなんて、考えられなかった。

 選んで良いのなら、少しでも多く時間が欲しい。

 そうすればきっと、私は何か掴めると思うから。



 なし崩しでもなく、流されたわけでもなく、自分で選んだその選択を、口にする前に笑い声が伝わる。

 それは優しくて、暖かだった。


『そう。じゃあ、頑張りなさい』




*************




 目を覚ました時は、まだ夜だった。

 妙にすっきりした気分だ。何か、大きな決定をしたような、なんだかとっても誇らしい気持ちになっていた。

 疲れも取れて、目が冴えていた私は、静かに部屋を出た。

 この宿の一階は、軽く食事が出来るようになっていた。遅い時間だけど、何か飲み物ぐらいは貰えるだろう。

 そう思ったのだ。


 一階では、灯りを最小限に落として談話をする者がちらほら見えた。

 意外に起きてる人いるんだなぁ、と何気なく見ていたら、見知った顔を発見した。


「タクト、クラーク」

「あれ、サエ?どうしたんだ、こんな時間に」


 小さな机を挟んで座る2人に近付く。

 2人は何か飲んでいた。タクトはオレンジ色の、クラークは琥珀色の飲み物をそれぞれ持っていた。

 クラークが、食事以外で何か口にしているのは珍しいな、とじろじろ見てしまった。

 私の思っていることに気付いたのか、タクトが笑いながら杯の中身を教えてくれた。


「なんとなく眠れなくて飲んでたんだ」

「お酒?」

「クラークのは、な。俺はアルコールは駄目なんだ。これはオレンジジュース」


 手にした杯を軽く振る。ちゃぽりと揺れるそれは、確かにオレンジジュースっぽい。

 しかしタクトはアルコール飲めないのか。私も強い方じゃないが、一体どれくらい弱いのだろうか?気になったので、手近の椅子を引き寄せながら尋ねてみた。

 すると「たった一杯で、記憶が飛ぶくらい酔う」とのこと。

 さすがに私でもそこまで弱くはないぞ。タクトにお酒はタブー、ということを覚えておこう。今後役に立つかは分からないけど。


「それで、サエはどうして起きてきたんだ?」

「さっき起きちゃって・・。あまりにすっきり目覚めたから寝直すのがもったいないな~って。で、何か・・、ココアとか飲もうかなって思って来た」

「ああ、そうなんだ。でも此処、夜はほぼアルコールしか出してくれないよ。アルコールじゃないのは、これか水くらい」

「え、そうなんだ」


 折角座ったのだし、ちょっと2人と話していたい。と言うことは、オレンジジュースか水を頼まないとなー。

 いや、その2択なら迷わずオレンジジュースを選ぶけどね。


 そんなわけでオレンジジュースを手に入れた私は、ちびちび飲みながら2人を眺める。

 まあ、特別変わったところがあるわけではないのだが、過去の2人を見た身としては思うことがないこともないのだ。



 思ったのだが、彼らは私のこと、覚えてないのだろうか?

 あの過去が何時のことだかは分からないが、見た目からしてそう遠い日ではないはずだ。なら彼らが、あの日のことを記憶していても何の不思議もないはずだ。

 あの日のことがどのように記憶されているのか、私は知らない。が、全く何もなかったということにはなっていないだろう。

 しかし大きく何か変わったのなら、今この時や私が体験してきたことも変わっているだろうし・・・。

 いや、そもそもそれをどうやって尋ねようか?記憶しているなら、普通に訊けば良いだろう。けど、何も知らなかったりしたら、いきなり「あの日のこと覚えてる?」って訊いても何言ってんだって顔されるだけだろうし。

 最悪、頭がどうかしちゃったのかと思われる可能性もある。

 ここは慎重に質問するべきだろう。



 密かに頭を悩ませる私のことなど露知らず、2人は今後のことを話していた。

 暢気のんきなものだ。

 いやいや、話の内容を考えれば、私の方がよっぽど暢気か。

 小さく首を振った私の視界に、お酒を飲むクラークが目に入る。見れば見るほど珍しい。思わずまたじろじろ見てしまった。

 視線に気付いたクラークが私を見る。無言で目を合わせる私たち。


「そんなに珍しいか?クラークが酒を飲んでるのって」


 タクトが私たちを見て、首を傾げる。

 いやそりゃあ、君から見たら慣れた光景かもしれないけど、私からしたら初めての姿なんだよ。

 心の中で反論しつつ首を縦に振る。


「よく飲んでるの?」

「そう言えば、サエが居る時には飲んだりしてなかったな・・。こいつ、実は酒好きなんだよ。初めて知りあった日の夜も、食事もそこそこに酒飲みだしてたし」

「ふーん・・」


 相槌あいづちを打ってはっと気付いた。これはチャンスだ!と。

 タクトは、ちょうどよく出会いの日を思い出してくれたようだ。自然に2人の出会いを訊くことが出来る偶然に、ちょっと鼻息が荒くなる。

 興奮をなんとか隠して、口を開く。


「ふ、2人って、どういう風に、出会ったの?」


 彷徨さまよいそうになる視線を必死で抑える。心臓の音がやけに気になる。何をそんなに緊張しているのか、自分でも分からなくなっていた。

 興奮気味の私に気付いているのか、どうなのか、タクトはいつも通りの表情だった。

 小さく「言ってなかったっけ?」と言っていたが、今の私はその次に続くであろう言葉が気になっていて答えられなかった。


「・・・知っているだろう?」

「えっ?」

「お前も、その場に居たのだから」


 ぼそりとクラークが零した言葉に、だらしなく口が開いてしまう。

 そういう可能性も考えていたとはいえ、実際にあの過去を覚えているとは信じていなかった。だって今まで一度もそんな話は出なかったから。

 だけど、と言うことは・・・、やはり未来は変わっていたのか。私は、危うく2人の出会いを無かったことにしてしまうところだったのか。

 思い出して、冷や汗がどっと出た。

 それはつまり私の存在も危うかったということだ。

 今だからこそ余計に思う。危ないところだった・・、と。


「と、言うことは、タクトも・・?」

「あー、ううん。実は俺、あの時余裕がなくて・・・、その、自分のこと以外何も考えてなかったんだ。だから君を召喚してしまった時は、気付いてなかった。後でクラークに言われて、「あの時のか」って。なんでサエがあそこに居たのかは分からなかったけど」

「あ、そうなんだ」

「うん。今更だけど、あの時はごめん。結構敵意むき出しだったって言うか・・、冷たかったよね?」


 「ごめん」と頭を下げるタクトに、何と返したら良いのか分からなかった。

 ただ謝られるのは違うと思う。何せ悪いことをしたのは私の方だ。彼らの道筋を、ほんの少し(だと思う)とは言え変えてしまったのだから。

 タクトが頭を下げるなら、私も頭を下げなければならない。


「謝るのは私の方だよ。私のせいで、2人の出会いがなくなるところだったから。・・ごめんなさい」

「へ?いや、君が居たから俺たちは出会えたんだ。君が謝るのはおかしい」

「うん?いやいや、それは違うよ。私がタクトに声を掛けたせいで・・・」


 と、2人してお互いの言葉を否定し合う。

 しばらくそうして噛み合わない会話をした後、冷静に整理してみた。

 つまりタクトの主観では、私が干渉した方の過去が本当になっているのだ。一方私は、変わる前の時間から、変わった後の時間へ戻った。そのせいで、彼らの知らないことも知っている状態なのだ。

 正確には、今の彼らが体験しなかったことを知っていることになる。


 ネイビス逃亡で説明できなかった今日(と言って良いのかは不明)の出来事を2人に話す。そうすることで頭が整理され、私としてはすっきりした気分になれた。

 要するに、結果良ければ全て良し、の考えである。

 が、タクトはまだ納得できていないらしい。難しい顔で考えている。


「えっと、タクト?説明、よく分からなかった?」

「ん、いや、そうじゃない。ただ、記憶にないことを引き合いに出されても、俺たちには判断しようがないからさ。だから・・、やっぱりサエが謝る必要はないよ」

「タクト・・」

「俺たちは、君のおかげで会えた。それが本当のことなら、むしろ俺たちは君にお礼を言うべきだ」


 タクトの優しさが、私の胸に暖かさをもたらす。

 許してくれるだけでなく、感謝までしている。そのことが、嬉しかったし、ちょっとむず痒い気分を産んだ。

 凄いことなんて一つもしてないし、汚名を返上したようなものなのに。

 でも私はそれ以上タクトの言葉を否定しなかった。したくなかった。


「ありがとう、サエ。君とまた会えて良かった」

「・・・・私も、ありがとう」


 嬉しかった。

 お礼の意味が分からずきょとんとしたタクトに、笑顔を向ける。するとタクトも笑ってくれた。クラークも、何処か笑っているようで余計に嬉しくなった。



 胸の暖かさが心地良い。

 ほかほかした気分で、眠りにつくことが出来た。





サエは夢のことを忘れていますが、頭の何処かにはうっすら残ってます。なので思考や気分に夢のことが反映されることがあります。

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