2「カーディナルとトランプタワー」
カーディナル視点。短いです。
トランプを組み合わせて大きな三角の物体を作る。そんな非生産的なことに心血を注ぐ。
何故私がそんなことをやっているのか。理由は簡単だ。やってみたいかったから。それだけだ。
と言うのは冗談だ。これをやり始めた時は、この酒場『モーリスの店』の店員に負けたくない一心だった。
暇さえあれば・・・、いや、忙しい時でさえ遊び呆けるこの店員は、手先が器用だ。特にバランスを必要とする、このトランプタワーなるものなどを作らせたら右に出る者はいないほどに。それが悔しい。悔しいと言うか負けたくないと言うか。とにかく対抗心が燃え上がったのが運の尽き。昨晩からトランプと向き合う羽目に陥った。
何故だ。何故私には出来ない。
先程、休憩と言う名の逃亡を図った私は、奴が、あのやる気の見られない店員が、その手でトランプを高く高く組み上げているのを見て絶望した。
何故私にはその器用さが備わっていないのだ。理不尽な憤りを胸に自室に戻って、以降トランプと再び向き合う時間が過ぎた。
私が出来ないのは分かっていたことだが、それを証明するのがまた自分であると言うのが納得できない。
「・・・・」
諦めた。数時間、いや最早一日と言って良い時間を無駄に過ごしてしまったな。何もすることがなかったとは言え、ちょっと贅沢に過ごし過ぎた。
反省をして、トランプをしまう。と、ジョーカーのカードに目が行く。気紛れに渡したこれが戻ってくるなど思っていなかった。いや、正確には戻ってくるのはもっと先だと思っていた。奴がこれを必要とするのはもう少し先の話だと思っていたのだが・・・。
まあ、ままあることだ。世の中そうでなくてはつまらない。特に私のような者は、こういったイレギュラーが一番の楽しみと言っても過言ではない。
さて、あの娘たちは今どうしているのか。
見えない未来が待ち遠しくて仕方ない。




