日常って実は大切 1
読みにくかったらすみません。
長々と地の文だけなのは、仕様です。
9/7 少し手直ししました。が、内容はほとんど変わっていません。
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私は、はっきり言って、面倒事を嫌う。いや、好きなことならその限りではない、という注釈は当然付くが。というより、その注釈も付かない人は、そもそも面倒事のことを考えたりはしないだろう。
ならば私は今、好きなことをしているか、と訊かれたらどうするか。その時は、否、と答えるしかない。
否、否否、である。
嫌だ、面倒だ、と思いながらやっている。
では、そんな気持ちになってまで、やっていることとは何か?答えは・・・・・履歴書の記入だ。
私は、もうすぐ来る春に、4年間不真面目(少なくとも、生真面目ではなかったので、非真面目と言うべきか)に通った大学を卒業する。
そう、卒業してしまうのだ。
なのに、私はその先、行くところがない。いや、家を追い出されたりするわけではない。私は大学へ、実家から通っていたのだから。そして、私の両親は、卒業と同時に家から追い出すような人達ではない。
つまり、就職先が決まっていない、と言いたいのだ。
「内定貰ったけど、第一志望じゃないし」
とかじゃない。
普通に内定すら貰ったことがない。
「こんなに頑張っているのに、内定の一つも貰えないなんて!!」
とかも、思っていない。
面倒だ、と思いながら書いているぐらいだから、かなり手を抜いてやっている。本気なんて小指の先ほども出していない。・・・いや、流石にそれは言い過ぎだが。
一応、志願するぐらいだから、それなりに本気で挑んでいる。しかし、心の何処かで、受かってもなぁ・・・、という気持ちがあるのだ。
詰まる所、私はやる気というものが足りないのだ。
やる気。やる気、か・・・。
周りがどんどん就職先を決定する中で、私は常々疑問に思っていた。
「何故、皆はあんなにも真剣に就職活動が出来るのだろうか」と。
いや、それはちょっと失礼な疑問だったかもしれない。ただ私は、なりたい職業というものがなかったのだ。「こうなりたい」という願望がないのだ。
故に、わからなかった。
真剣、真面目に、「この会社(あるいは「職業」とか、そんな内容のこと全般)を選んだ理由は?」と訊かれた時、何と言えばいいのか。
相手を納得させられる内容なら、考えつく。それらしく言うことも、出来る。
だが、駄目なのだ。
何だがそれでは、申し訳なくて、それでいて、卑怯な気がして。
真剣に会社勤めをする気がないのに、そんなことを言っていいのだろうか。本気で会社のために働く気もないのに、そんな・・・騙すようなことを言って、良い訳がない。
そう、思うのだ。
思い返してみれば、記憶の中で最古の進路話は、幼稚園での出来事になる。
誰だって、多分一度は訊かれる、「将来何になりたいのかな?」という質問だ。細部は違って当然だが、内容として、これを訊かれない子供はいないだろう、というぐらいメジャーな質問。
私のそれは、幼稚園に通っている頃だった。
誰に訊かれたのか、両親なのか、先生なのか、あるいは知り合いの保護者だったのかは忘れてしまったが。とにかく訊かれた。そして、当時の私は、人の顔色を窺う子供だった。いや、そんな卑屈な感じではないか。そう、他人が喜ぶのが嬉しい子供だった。
そんな私は、自分の気持ちではなく、どういったら相手は面白がるか、ということを考えて答えた。
何と答えたか?
当然覚えている。
私はこう答えた。
「パンダさん!!」
・・・・・・一応、弁解するなら、これは決して馬鹿発言ではない。当時の私は、『パン屋』と『パンダ』の音が似ていることを気に入っていたのだ。そして、そんな私を、大人たちは微笑ましい目で見ていることも知っていた。
そう、当時の私はそんな感じで、他人が良く思うような受け答えをしていた。
賢しい、と言えばいいのだろうか。特に特典を狙っていたわけではない、・・・なかったと思う。ただ、求められていることをすれば大人は喜ぶ、という純然たる事実に従っていたにすぎない。というより、大人の思惑通りに育っていたと言えないこともない。
で、何が言いたいかと言うと、一事が万事そんな感じだったから、私は自分の将来について、真剣に考えたことがなかったのだ。いや、正確には、考えたが両親に認められないんじゃないか、と穿って考え、結局無難なものを選んできたのだ。
別に両親を責めるつもりはない。
こんな、主体性の薄い私に育ったのは、自分のせいだ。
こうしたら良かった。ああしていれば良かった。というのは、考えるだけ無駄且つ面倒なのでしないが、やっぱり後悔、というか、悔い、のようなものは残る。
残るだけで、どうしようもないが。
とにかく、私の苦手な就職活動は、全く上手くいっていなかった。
いつもの如く、志望理由で手は止まる。
さて、今度は何て書こうかな。
3秒考えて、ペンを放り投げる。いや、本当に放り投げたりはしない。ちゃんとペン先を引っ込めて、優しく机の上に置いた。
凝り固まった背筋を伸ばす。
ああ、面倒だ。何だって私は、こんな物を書いているんだ。無性にイライラする。椅子に座っていることが我慢できない。
立ち上がって、室内をうろうろする。ベッドに寝そべる。また、立ち上がる。うろうろする。
何だかますますイライラしてきた。・・・漫画でも読もうかな。
私は、自他共に認める読書家だ。もちろんそれは、漫画だけを読む者には当てはまらないことだ。私は、漫画も小説もハードカバー本もネット小説も、果ては新聞記事から教科書まで読む。・・・後半はただの冗談だが。
思うに、私は活字が好きなのだろう。いや、活字というより、ストーリーが好きなのだ。ストーリー性のあるものだったら、どんなつまらない説明文でも読む。とりあえず、読みはする。
好きなのは、まあ、予想できると思うが、ファンタジーだ。だが、ホラーや推理小説にもストーリーはある。だから、それも好きだ。ただし、怖がらせるだけ、推理するだけ、な話は好みじゃない。
ストーリーは大事だ。
むしろストーリーが大事だ。
推理とかは、別にどうでもいい。怖いのは、読んだ際のおまけだ。それが、嘘偽らざる私の本音だったりする。
いや、全くどうでもいいわけではなく、極端にウェイトが軽いのだ。
そんなこんなで、私は本棚から漫画を一冊引き出す。
年間に一冊出せば良い方、というほど筆の遅い漫画家の、小さな本屋ではまず置いてない、マイナーな出版社から発売されている漫画だ。
内容は・・・、良い感じにデフォルメすると、普通の高校生である主人公(♂)の周りに癖のある美少女達が溢れる学園ファンタジーだ。・・・・デフォルメしすぎたか?何だかよくある感じになってしまった。まあ、内容はあまり関係ないか。
そうそう、私はこの作品の中では、眼鏡をかけた異世界から来た猫耳少女が好みだ。ちょっと引っ込み思案で、ドジっ娘なところが可愛い。・・・普通にこんな娘が学校に居たら、むしろ関わり合いになりたくないが。
しかし、どうでも良いが、好きな相手に言われたからって、自らパンツを見せたりする心理が理解できない。いくら好きな相手でも、気持ち悪いだろう。二次元はこれだから怖いのだ。現実とのギャップは開くばかりだな。
なんてどうでもいいことを考えて、漫画を閉じる。
何だか読む気が失せた。
私はインドア派、どころか引きこもり派だが、部屋の中に居ては、気が晴れないことを認めることにした。
少しだけ、外へ出よう。
そう、ちょっと図書館まで行ってみよう。・・・今日は月曜日だから、開いていないが。
そうと決まったら、出かけよう。
簡単に身支度して、外へ出る。
今日は晴れているからまだ良い。曇りだったり、雨だったら、気分なんて何をしても晴れなかっただろう。
そんな感じでとりあえず、上向きな考えで歩き出した。




