召喚した者、されたモノ 4
途中で語り部が変わりますので、ちょっと短いです。
次の『◆タクトの話◆』より先にお読みください。
タクトの話は続く。
「第三者は、両国を対立させたい。できれば、戦争してほしいと思っている。そのために、魔法を利用した」
「魔法を?重要人物を操ったとか?」
「いや・・。魔法は万能じゃない。操られていたなら、レイルが気付くよ。というより、レイルはそのためにこんな国境近くまで出向いたんだ」
魔法は、魔法を使う者には隠せない、らしい。まあ、そうかもしれない。誰に対しても隠せていたら、犯罪し放題になってしまう。
冗談ではなく、『魔法使い狩り』が行われてしまいそうだ。
中世ヨーロッパ。見た目が同じだけに、笑えない。
タクトは悪い人じゃない。でも、それが伝わらなかったら・・・。
いや、怖い想像は止めよう。
一応、この世界では、魔法は受け入れられている。それに、本当に超常的な力を使えるなら、危険を回避することなんてわけないはずだ。
魔法は万能ではないかもしれないが、便利であることは確かだろうし。
「じゃあ、どうやったの?」
「魔法以外にも、人を惑わす術はあるんだよ。確信はないけど、それを使ったんだろう」
「ふうん。それってどんな術なの?」
「さあ?詳細は分からない。術者の力も関係あることだし・・・、途中で変化してしまうこともあるから」
途中で変化?何だそれは。よく分からないけど、不安定な能力なんだろうか。
タクト自身も確証がないらしい。というか、何か誤魔化しているみたいな・・・。何かを避けてる?ような。
いや、そうだな・・・・、ぼかしている部分があるようだ。
「ぼかしてる」ってバレてる時点で、失敗しているような気もするけど。まあ、そこは気付かなかったことにしよう。追求しても答えてくれるとは限らないし。
「とにかく、その能力を使えば、魔法使いにも気付かれずに誰かを操ったりできるってこと?」
「概ね、そうかな。訂正するとすれば、誰にも気付かれないわけじゃない、ってことだけだ」
分かる人がいるのか。やっぱりそれも万能ではないようだ。
というか、分かるなら何でこんな状況になった。分かる奴は世界で一握りだけとか、そういう展開か。
「うん、まあ、そうかな?そういうのが分かるのは、術者と能力者だけだから」
またも曖昧に良いおったよ、こいつ。そもそも、術者と能力者は同一人物じゃないのか。
意味が分からん。これは、訊かずに済まそうとした私が悪いのか?とりあえず訊いてみる、が正解だったかもしれない。
ということで、遅ばずながら訊いてみた。
「あ~・・・、えっと、うん。術者と能力者は、違うよ。違うんだけど・・・」
違うんだけど、何だ。
タクトの目が思いっきり泳ぐ。忙しなく視線を移している。とても怪しい反応だ。一体こいつは私に、どれだけのことを隠しているんだろうか・・?
答えずに済む方法を探しているであろうタクトを、じっとりと見つめてみた。
あっちの答えは待つつもりだが、こっちの疑問まで待たされるのだろうか。それは勘弁願いたい。
疑問だらけで精神が崩壊するかもしれない。・・・さすがにそこまではいかないだろうが、確実に眠れなくなるだろう。
私の安眠のためだ。さくっと答えてもらおうか。
更に視線で責め続けると、とうとう音を上げてクラークに助けを求めるタクト。
「クラーク」
「・・・・」
ですよねー。答えるわけないですよねー。絶対に、助けを求める相手を間違えてるよ。
ほとんど彫像と化しているクラークから、タクトに注意を戻す。タクトは、尚もクラークの方を見ていたが、諦めてこっちを向いた。
観念したらしい。
「・・・さっきは待ってくれるって言ったのに」
「いじけないでよ。ていうか、さっきの問題と関係あるの?」
「ある。・・・と言うより、こっちの方が言い難いことに直結してるんだ」
「・・・・で、言えないって?」
「・・・・・」
だから、クラーク化しないでってば。対応に困るから。
彫像2になったタクト。彫像1を見ると、こっちを見ていた。
驚いたよ、もちろん。
今まで我関せずの態度だったのに、どういう風の吹き回しだろうか。
いや、そんなことより、ガン見は止めて欲しいんですが。
ドキドキしちゃうよ、テストの時の先生の視線並みに。あれ、嫌だったんだよね。カンニングなんてしないから見るな、と言いたかった。本当に言えるわけないが。
そんな視線が、しばらく私たちの方に向いていた。が、ふと視線を外された。そして、彼は何も言わず(言ったらびっくりする用意は常にあるんだけど)、部屋を出て行ってしまった。
今部屋の中にいるのは、彫像2と途方に暮れる私だけだ。
どうしてくれよう、この空気。というか、私は早くも後悔していた。
訊かなければ良かった。
居心地が良かっただけに、この何とも言えない空気がすごく嫌だ。
もぞもぞと動く。そこでようやく、タクトが彫像モードから解放された。
私を真っ直ぐ見る瞳に、強い意志を感じる。何かを決意したようだ。
自然と高まる心音を感じながら、息を呑んで待つ。
「・・・何から話したら良いのか、分からないんだ。だから最初から話す。少し長くなるけど、聞いてほしい」
「う、うん」
とうとう話す気になったのか。それが良いことなのか、どうなのかは分からない。でも、これで前へ進めるような気がした。




