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エイシスト  作者: 翔陽
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暗黙の領域


ましろと別れた後、

いつきは街を徘徊していた。


もちろん、アルゴスに会うために——



———ビルの屋上



いつきが、辺りを見渡す。


「あれ?おかしいな....」

「....カラスしかいないや。」


どれだけ探しても見当たらないことに、

いつきは、深くため息をつく。


その時、背後から足音が鳴る。

振り返るいつき。


「あ、あんたは....」


「何を探してるの?」

「"神殺し"の少年。」


「なんで、ここにいる?」

驚くいつきを他所に、モイラが話しかける。


「あなたと、話がしたかったから。」


「今度は何?」

そう言うと、

いつきは屋上からの景色を眺める。


「"力"。使うんでしょ?」


「なんでそれを?」

いつきはまた、モイラに視線を戻す。


「あなたに惹かれちゃったから。」

モイラは当たり前の様に伝える。


「答えになってないし。」

「惹かれるって、この"力"だろ?」


モイラは視線を空に向ける。

「んー、どうかしら。」


そして、視線をいつきに戻す。

「それより、"神"を前にどうするつもり?」

「受け入れる?」

「それとも———」

「抗うの?」


その言葉にうつむくいつき。

「.......。」

「"神"になっても、大事な人は救えないだろ?」


そして、いつきが空を見る。

「だったら、」

「俺は、俺の大事な人を守りたい。」


「だから、正直どうでもいいよ。」

「ただ......」


「ただ?」

モイラはいつきを覗き込む。


「なんでもない。」

そう言って首を横に振る。


「そう?"神"があなたと同じ、」


「———人間だと、しても?」


「人間⁉︎"神"が?」


「いけない。」

「これは、秘密よ。」


「秘密なら、なんで。」

モイラを見つめるいつき。


「つい、喋っちゃったわ。」

「あなたが悪いのよ。」

そう言うモイラの表情は、平然としていた。


「でも、人間って....」

「じゃあ、どこにいるの?」

「"神"も死ぬってこと?」


「落ち着きなさい———」


陽は少しずつ沈んでいた。


「この世界にある大陸は、知ってるわよね?」


「うん。」

いつきは、指を折りながら答える。

「ベルグラド。」

「マルシエ。」

「フレイト。」

「ロゴス。」

「ネクロス。」

「そして、ここヒカリノ、でしょ?」


「じゃあ、宗教は?」


「宗教?」

首を傾げるいつきに、

モイラは軽くため息をつく。


「えぇ、」

「各大陸に存在する宗教。」


「マルス教。」

「ファルバ教。」

「ヴォータ教。」

「マリスト教。」

「エレボス教。」

「神教。」


「何か気づかない?」


「もしかして?」

いつきの眼が開く。


「そうよ。」

「六の大陸、六の宗教、そして、六人の"神" 」


「六柱神の存在を知ってるなら、」

「それくらい分かりそうなものだけどね。」

モイラは肩をすくめる。


「なにが言いたいの?」

いつきの眉間に、しわが寄る。


「何でもないわ。」

モイラが軽く微笑む。


「だから?」

いつきが少し強い口調で返す。


「それだけ、信仰者が居るってことよ。」

「何万、何億という人の想いを背負ってる。」


「生半可な"想い"じゃ、抗えない。」


「..........。」

いつきが黙り込む。


「大丈夫よ。」

モイラは優しく伝える。


「大事な人を守りたい。」

「素敵だわ。」


それでも、いつきの表情は曇る。

「でも、今のままじゃ.....」

「扱い方も代償も想いも......」


「信じなさい。」

「自分を、その"想い"を」


「でも、なんで俺に"力"なんて....」


「それは分からないわ。」

「でも、選ばれた。」

「その"力"に———」


「なら、使ってみれば?」

モイラの眼は、挑発するようだった。


「同じ様なこと、誰かにも、」

「言われた気がする。」


「.....待ってよ。だからって、」

「"神"に抗いたい訳じゃない。」


モイラは軽く答える。

「すでに抗ってるわ。」

「天照との一件、もう忘れたの?」


「なんでそれを?」


「見てたから。」

モイラは微笑む。


「もしかして、ずっと?」


「えぇ。」


「なんでそんな。」


「大好きだからよ。」

モイラのその声、その表情は、

優しさに包まれていた。


その時いつきは、

どこか懐かしい感覚に包まれる。

「.....あ、ありがとう。」


「お礼を言われる様なことじゃないわ。」

「自分を信じなさい。」

「わかった?」


「.....うん。」


「でも、どうしたらいいの?」

不安を隠せないいつき。


「それは自分で決めること。」

それでも、モイラは鋭い口調で言った。


「大事な人を守るんでしょ?」

「だったら、それを貫き通しなさい。」


「......わかったよ。」


「あなたは、一人じゃない。」

そう言うとモイラはきびすを返す。


去り行くモイラの背中を、

いつきはただ見つめる。


陽が落ちる。


それは黄昏時。


———


———街の裏路地を歩くモイラ。


その軽い足音が、裏路地で反響する。

そして、呟く。


「言い過ぎちゃったかしら....」


その表情は、ほがらかに。

落ちる夕日が、その顔を赤らめる。


———


———神域、神の社


その廊下には、杖をつく音が、静かに響く。


コツ——

コツ——


長い廊下の先にあるのは、

血と汗の匂いが漂う闘技場。


心地の良い金属音が聞こえてくる。


「アレス様。」


そこには、汗を流すアレスとイニュオ。


「おう、どうした順風耳じゅんぷうじ。」

アレスはその腕で、額の汗を拭う。


順風耳は静かに報告する。

「この世の禁忌が、破られました。」


「どういうことだ?」

アレスの眼は鋭く順風耳を捉える。

その瞬間、周囲の空気が軋む。










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