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エイシスト  作者: 翔陽
35/38

夜に堕ちる太陽

———東の荒野


荒野の夜が、静まり返っていた。


誰も動かない。


空には"神"。

地には人。


その中心に立つ少年。


いつき。


そして空には——

天照。


その瞳が、静かに細められる。


視線は、少年へ向けられていた。


「人間が——」


声は低い。

だが、世界に響く。


「"神"を知れ。」


いつきは静かに答える。


「神なんていない。」


その言葉に、荒野の空気が凍りついた。


オリエントが呟く。


「……おい。」


アリトンは震えていた。


「まずい……」


サタンだけが笑う。


「素晴らしい———」

腕を組み、呟く。


「さすがだな。」


その瞬間だった。


天照の"光"が変わる。


今までの"光"ではない。


より重い。


より圧倒的。


荒野の———


砂が、焼け始める。


風が、止まる。


空が、明るくなる。


夜のはずの荒野が、昼と化す。


ペイモンが血を吐きながら、かすれた声で言う。


「……やめろ……」


「......世界を……」


呼吸が途切れる。


「……壊す気か……」


天照の声が落ちる。


「人間よ。」


ゆっくり腕を広げる。


「太陽を見たことはあるか。」


その瞬間。


空に、巨大な"光球"が生まれた。


——"太陽"。


荒野が、白く染まる。


熱が、地面を焼く。


岩が、割れる。


砂が、溶ける。


アリトンが叫ぶ。


「無理だ!!」

「街が消える!!」


オリエントの歯が鳴る。


「……くそ。」


サタンは小さく呟く。


「なるほど。」


空を見上げる。


「これが本気か。」


天照が宣言する。


「これは罰だ。」



——円卓の間


光も影もない空間。


そこに座す六柱神。


だが今、


二席が空いている。


沈黙が流れる。


やがて、一人が口を開いた。


「——どうする?」


軽い口調———ロキ。


「このままだと」

「ヒカリノから希望がなくなるぞ。」


別の声が続く。


低く、重い声———オーディン。


「いや……」

「ヒカリノ大陸そのものが、消える。」


静かにアテナが問う。


「天児は?」


答えたのは、一人の男。


「見当たらない。」


アテナが視線を向ける。


「ヘルメス。」

「止められるか?」


円卓の間に足音が響く。

ヘルメスが歩み出す。


「承知。」



——ヒカリノ東の荒野


空の太陽が、


ゆっくりと降り始める。


荒野を焼きながら。


世界を滅ぼす、熱。


だが——


その時。


少年が一歩、前に出た。


いつき。


空を見上げる。


眩しそうに目を細める。


そして言った。


「そんなの、」

「誰も救われない。」


荒野が静まる。


オリエントが叫ぶ。


「逃げろ!!」


だが、いつきは動かない。


ただ、右手を上げる。


空へ。


ゆっくり。


その瞬間——


世界の空気が歪む。


サタンの目が細くなる。


「……ほう。」


天照の光が、わずかに揺れる。


いつきが呟く。


「止まれ。」


右手が、何かを"削る"。


それだけだった。


次の瞬間。


太陽が止まる。


完全に。


落下が止まる。


熱だけが荒野を焼く。


"神"の瞳が、揺れた。


それは怒りではない。


理解不能。


そして——


ほんの僅かな、


恐怖。


サタンが笑う。


低く、楽しそうに。


「ははは……」


腕を組む。


「いい。」


いつきを見つめる。


「最高だ。」


荒野の夜。


"神"。


サタン。


そして、"神殺し"の少年。


太陽はまだ、空にある。


世界は今、

神と人間の境界に立っていた。


その時。


天照の背後に、一つの影が現れる。


「ヒカリノを消す気か。」


静かな声。


「神域に戻るぞ。」


現れたのは——ヘルメス。


天照が振り返る。


「……まだ溢れる。」

「問題ない。」


ヘルメスはため息をつく。


「冷静になれ。」


その時、いつきがヘルメスを見る。


「あいつは……」


ヘルメスが笑う。


「久しぶりだな。」

「だが、また今度だ。」


次の瞬間。


二つの影が消えた。


空の"太陽"が崩れる。


光が夜へ散った。


「——っ……!」


その時、ペイモンが血を吐く。


オリエントが駆け寄る。


「ペイモン!」

「大丈夫か!?」


アリトンも膝をつく。

「手当しないと……」


サタンが歩み寄る。

「紹介してやろうか?」


オリエントが睨む。

「だったら早く教えろ。」


そこに近づくいつき。


「ねぇ、大丈夫?」


オリエントが笑う。


「なんだ。」

「仲間になりたいのか?」


「そういう訳じゃない。」

「ただ、心配だから。」


オリエントの目が細くなる。


「余計なお世話だ。」


ナイフを握る。


「"神"は、俺達が堕とす。」


その言葉に、いつきが返す。


「その想いは、叶わないよ。」


「なんだと?」


アリトンが割って入る。


「いいから!」

「今はペイモンが先だ!」


その時、荒野に"黒い裂け目"が現れる。


サタンが振り返ると、オリエントが言う。


「次、舐めたこと言ったら」

「殺すぞ。」


サタンは笑う。

そして"裂け目"へ———


オリエント達も続く。


荒野に残されたのは、

いつきだけだった。


少年は、空を見上げる。


「……あれが」


小さく呟く。


「天照———かな。」


その瞬間、いつきは、確かに認識した。


——六柱神。


その存在を。


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