輝く大地
ここはヒカリノ大陸の北西に位置する大陸
——ベルグラド。
他大陸からは
「進軍大陸」
「止まれぬ地」
そう呼ばれている。
⸻
朝日が大地を照らす。
大陸の中心に、ひときわ高く聳え立つ礼拝堂。
内部には、凛々《りり》しく、逞しい男の像が祀られていた。
礼拝堂の正面には、
太く、真っ直ぐに伸びる大路。
——この街は、前に進むために作られている。
⸻
「ジョン、今年もこの季節が来たな」
「あぁ。立派に行進しようぜ」
「……でも、あの匂いだけはな」
「何年経っても慣れねぇよ」
軍服に身を包んだ男たちが、
苦笑しながら言葉を交わす。
⸻
——動神祭。
またの名を、アランリビア。
ベルグラドの兵士たちが、礼拝堂を目指し、街を行進する。
この大陸最大の祭事。
⸻
ベルグラドの中心の街は忙しそうだ。
「おい、リヘ。エールの準備はできてるか?」
前掛けを締めた中年の男が
同じく前掛けを締めた女の子に声をかける。
「お父さんも手伝ってよ」
「酒蔵から運ぶの、大変なんだから」
「なら男手を雇うか」
「あと三日しかない」
「今日も客が押し寄せるぞ」
「もう……」
リヘはため息をつきながらも、手を止めなかった。
⸻
街の酒蔵もまた、慌ただしい。
「おい、エール足りるか?」
「蔵の分は全部出しちまったぞ」
「分からん」
「隣の蔵も、もう空らしい」
「まぁ、なんとかなるだろ」
「……俺たちの分は?」
「…………」
「酒屋に走るか」
「おいおい……」
⸻
街の一角にある一軒家。
とある夫婦が会話をしていた。
「母さん、用意は?」
「ええ、全部整えましたよ」
「ジョンの晴れ舞台ですもの」
「立派に育ったもんだ」
「俺は引退したが……羨ましいよ」
「本当によく頑張りましたね」
「……あぁ」
⸻
——ここは街から然程遠くない場所に位置する、ベルグラド第一基地。
「ジョン、第一で良かったな」
「他だと選抜だった」
「参加できない可能性もあったしな」
「確かに」
ジョンは壁掛け時計を見る。
「そろそろだ」
「行くぞ」
⸻
基地広場。
三十万——
いや、五十万を超える兵士が、寸分の狂いもなく整列していた。
圧倒的な光景。
観閲台に立つ指揮官が、号令を放つ。
「——アローガ!」
一斉に歩調が揃う。
地鳴りが、まるで歓喜するかの様に大地が震える。
———
「——へーロ!」
途端、地響きが止む。
指揮官は言い放つ。
「動神祭は三日後!」
「気を引き締めろ!」
そして、統制された声が響き渡る。
「——ルソ!」
その声は、大陸の外にまで届いた。
⸻
——ヒカリノ大陸。
街中、高層ビルの屋上。
そこには、アルゴスと、ましろの姿。
「昨日、ずっと探してた」
「……やっと見つけた」
ましろの視線が、アルゴスを射抜く。
「……」
「昨日、いつきと一緒にいた四人」
「知ってるでしょ?」
「あぁ……」
「居場所を教えて」
「危険だ。」
「だからよ」
「いつきが危ない」
「私が止める。」
「全員、“力”を持っている」
「それでも一人で行くのか?」
「関係ない——」
ましろを見たアルゴスは、
静かに答えた。
「ここから東へ三十キロ」
「荒野の中心に、礼拝堂がある。」
「……ありがとう。」
そう言うと、ましろは走り出す。
⸻
ビルからビルへ
朝日に向かって駆ける姿は——
まるで、
何かに歓迎されているかのように、
ましろを照らした———




