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エイシスト  作者: 翔陽
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動き出す歯車



———天上。

世界の法則が、静かに固定されている場所。


六つの座が円環えんかんを描く。


そこに集うのは——

世界を管理する側。


———


沈黙を破ったのは、観神アテナ。


「……確認された。」


六柱神ろくちゅうしん一柱ひとはしらが、淡々と告げる。


「サタンが、“神殺しの少年”と接触した。」


その瞬間。


空気が一段、冷えた。



「確かなのか?」

犠牲神オーディンが問う。


順風耳じゅんぷうじが捉えた。」

「その会話を——。」




「……さすが"地獄耳"だな。」




「なんの話をしてたんだ?」

ロキは興味を示す。

その声は軽い。



「サタンは少年の“力”を知った。」

「仲間に入れる気よ。」



「だが、まだ少年は迷っている。」

祈神天照が口を開く。


「殺されてはいない」

「連れ去られてもいない」



「それが一番、危険じゃな。」

重い口をオーディンが開く。



一瞬の沈黙。



「サタンは“余白”を作る」

天照は続ける。


「選択肢を与え、考えさせる———」

「そして——自分で世界を疑わせる」


「我々にとって、最悪の教育者よ。」



オーディンが続ける。


「神殺しの少年は、まだ未熟だ」

「判断力も、覚悟も——」


「だからよ」

天照は視線を上げる。


「未熟なまま"思想"に触れた。」



その言葉に、

場の緊張が一段階上がった。



「……放置は出来ないな」

動神アレスが言う。


それを、アテナがさえぎる。

「だが、直接手を出せば——」


「観測違反」

「干渉過多」

「均衡崩壊」


次々と言葉が重なる。



そこで、


今まで沈黙していた存在が、

ゆっくりと口を開いた。



「——遅い。」


声の主は無神ハデスだった。


全員の視線が集まる。


「すでに、“道”は見え始めている。」



「どういう意味だ」

アレスが問う。


ハデスは淡々と答える。


「少年は、拒まなかった」

「だが、選びもしなかった」


「———一番危険な状態だ。」



「中立か」

誰かが呟く。


「いいや———」



「“揺れている”。」


———


その言葉に、

六柱神の誰もが理解した。


揺れる存在は、最も崩れやすい。




天照が、静かに息を吐く。


「……次にサタンが動けば」


「少年は、戻れなくなる。」



沈黙。


世界の歯車が、

わずかに音を立てた気がした。



「結論を出そう」

誰かが言う。


「神殺しの少年を——」



アテナが遮る。


「監視を強化する」

「干渉は、まだだ」


「だが——」



「サタンが“答え”を与えた瞬間」

「その時は——」



言葉は、最後まで語られなかった。


だが、

六柱神全員が理解していた。



これは偶然の接触ではない。

反逆の歯車は、すでに回り始めている。


———そして。


それを止められる存在は———。



その時、一つの座が、わずかに軋んだ




———場所は廃工場。


そこには、いつきとましろの影があった。



「ましろ、話ってなに?」

「まさかっ、こんな時間に特訓じゃないよね?」

いつきは、普段通りの声だ。



「うん、特訓じゃないよ。」

「心配になっただけ。」


ましろの声は重い。


「心配?」


「うん。アルゴスと何を話してたの?」


「別に.....。」

いつきはうつむく。


「それにさっきの。」

「絶対、ただの男の人じゃなかった。」

「———私たちと同じ。"力"を持ってる。」


「そんな事ないよ。」


「なんで話してくれないの?」

ましろは一歩、いつきに近づく。


「......。」

いつきの口は重かった。


「じゃあ、今からでも彼らを追いかける。」

ましろの表情は本気だ。


「だめだっ。

ましろ、君は巻き込みたくない。」

いつきは地面を見たまま言葉を返す。


「奴らは、"神"を堕とす気だ。」

「それで、俺の"力"を求めてきた。」


「"神"を堕とす⁉︎そんなの許されないわ。」

いつきの話を聞き、驚くましろ。


「そんな危ない人達と関わっちゃダメよ。」


「でも———

俺は少し嬉しかった。」


「神を信じてない。」

「俺だけじゃなかった。」


「そんなこと———。」

ましろは言葉に詰まる。


「君は秩序を保つ者。なんでしょ?

"神"をどう思ってるの?」


「私は、"神"じゃなくて、この世界を見てる。」

「この世界の、秩序を保つ。」

「でも、その為に、"神"は必要だと思う。」


「そうか.....。」

「じゃあ、君にとって俺は邪魔者だ。」

言葉を吐き捨てるいつき。


「邪魔者なんかじゃないよ。」

「君も私の世界に含まれてる。」

ましろの瞳は、真っ直ぐいつきを見る。



「———でも、俺が"力"を使えば、

世界は壊れるよ。きっと。」


「アルゴスから何を聞いたの?」



「....."力"の代償。使えば、世界のどこかで、誰かが死ぬかも。もしかしたら————」


いつきはそれ以上を言わなかった。



「じゃあ、"力"を使わなきゃいいわ。」


「でも、また狙われたら?」

いつきは問う。


「その時は、私が守る。」

堂々とした表情のましろ。


「でも、それは"神"と敵対するってこと?」


「.....それは.....。」

ましろはうつむく。


「また"神"に狙われた時は、

彼らの方が守ってくれる。」


「どうせ、戦う気なんだよ。」



「もういい。」


そう言うと、

ましろは何も言わずに廃工場を後にした。




———いつきは天井の隙間から、

夜空を見上げた。


(これでよかったのかも....。)



———星が夜空を駆ける。


まるで何かを探すように。

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