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エイシスト  作者: 翔陽
23/39

反逆の道


———街の中心にある、崩れた広場。




いつきはつぶやく。


「——まだ、誰も死んでないよね。」



「誰が死んだって?」


いつきは驚き、

その声の主を見る。


そこには、4人の男が立っていた。


スキンヘッドの男。

長髪の男。

ベロを出した男。


一人だけ異質な空気感を漂わせる男。


(...さっきの声はあの人かな...。)


「なんの話?」

いつきは話をはぐらかす。


「おいおい...てめぇが言った言葉だろ?」

ハザエルはいつきをにらむ。


「これだからガキは。」

アリトンは呆れた表情を見せる。


「おい、ガキ、お前"力"あんだろ?」

オリエントは単刀直入に聞く。


「"力"?なんの話?

まだ重いもの持てないよ?」


(この男たちは?神の家臣?

でも、今までの人達と雰囲気もまるで違う。)


「おい、バカにしてんのか?」

「あんま大人を舐めるな。」


———「"神殺し"の少年。」

首を掻きながら話すオリエント。


(...."神殺し"....どこかで....

———あの時だ...。)


言葉に詰まるいつき。


「時間がもったいない。

ペイモン———。」


「あぁ、任せろ。」


そう言うと、一歩踏み出すペイモン。


いつきは"神"とは違う圧力を感じる。


(なんだこれ...ビリビリする。)


それはペイモンからあふれ出していた。


恐怖が黒いもやのように形取る。

そして、一歩踏み出すごとに、それは溢れ出る。


黒い靄がいつきに降りかかる。


「———っ......。」

(動けない。身体が重い...。)


いつきは"右手"で身体に触れようとする刹那。

アルゴスの言葉が頭をよぎる。


———


「誰かが、死ぬかも知れない」


———


いつきは右手を握りしめた。


「なんだ?抵抗しないのか?」

笑うハザエル。


「違う...。出来ないんだよ。」

呟くアリトン。


「お前は"神殺し"の少年だよな?」

低く鋭い声でペイモンが聞く。


「答えろ!」


(———この人達の目的はなんなんだ。)

いつきは必死に考えた。

だが、答えが出ない。思考が回らない。

足が震える。


それは平常心とはかけ離れた状態。


「なんだ、しゃべれないのか?」


ペイモンはいつきに近づき、

首を掴んで持ち上げる。


いつきは左手で必死に抵抗する。


「....や、やめろ...。」


「なんだ、喋れるじゃないか。」


それも束の間。


———ドンッ。


「———っ.....。」


肺の空気が一気に吐き出され、

視界が白く弾けた。


いつきは地面に叩きつけられる。


そこに近づくハザエル。


ナイフをいつきの首元にやる。


「おい、少年、殺されたくなかったら、

"答えろ"。

お前が"神殺し"か?」


唇を噛み締めるいつき。


だが、その抵抗も虚しかった。


「....俺だ...。」



「いいねぇ。」

それを聞くとオリエント、ハザエルは喜んだ。


ペイモンは鼻で笑う。


アリトンはというと、相変わらずの無表情だ。


「離してやれ。」

息を吐く様にオリエント。



ペイモンとハザエルは大人しく従う。


喉を押さえながら、咳込むいつき。


「乱暴してすまなかった。」

「俺はオリエント。」

「こいつがペイモンで、こっちがハザエル。」

「あそこにいるのがアリトンだ。」


「俺たちはお前を探しに来たんだ。」

「仲良くなりたくてな。」


座ったままいつきは答える。

「仲良くなる?」「何の冗談。」

4人とは目を合わせない。


「ホントだよ。」

「なんたって、すげぇ"力"持ってんだろ?」

「どんな"力"だ?」

オリエントは目を見開く。


「お前らなんかに教えるかよ。」


「あんま乱暴な真似したくないんだ。」

「教えてくれよ。」

オリエントの声は低くなる。


残りの3人に目を配るいつき。


(———みんな危ない目をしてる。)


自分の"右手"を見る。


そして、———首を横に振る。


「人の想いが———矢印になって見える。」

「それを、消せる。」


途端、3人の目が明るくなる。


「おいおい、聞いたか!?」

「矢印が見えるってよっ」

「お前見えるか!?」


「見えねーよ。」


「お前は見えんのかよ!?」

「見える訳ねーだろっ」


オリエントとハザエルがはしゃぐ。


咳込むペイモン。


「お前見えるのか...それはすごいぞ。」

「しかも見えるだけじゃない。」

「干渉まで出来る。」

「是非、俺たちの仲間に入れ。」


「見えるって普通じゃないのか?」


それを聞いて笑う3人。



「すげぇ逸材を見つけたぞ。」

「しかもこいつ気付いてねぇ。」


「———その"力"がどれだけすげぇか。」


笑いが止まらないオリエント。


「お前はなんでここにいる。」

「なんで"神"のところにいかねぇ。」



「どう言うこと?なんで"神"のところに行かなきゃ行けないの?」


「おい、どう言うことだよ。」

オリエントはペイモンを見て問う。


ペイモンは首を振る。

「俺にもさっぱり...。」


「普通な"力"が発現したら、"神"から誘いが来るんだよ。」

「僕たちの"処"に来ませんか?ってな。」


「まぁ、"力"を持つ奴しか知らねぇことだけど。」


「俺たちは誘われてないぞ?」

ペイモンがイタズラの様に聞く。


「バレる前に俺が誘ったじゃねーか。」

呆れた様に笑うオリエント。


「まぁ、その様子じゃ、誘われてねぇみたいだから、俺らが誘ってやるよ。」


———「俺たちと来い。」

「"神"を潰す。」


「"神"を潰す?」


「そうだ。"神"の処にいかねぇ。」

「それがお前の答えなら———」


「"神"が嫌いだろ?」


「———っ.......。」

言葉に詰まるいつき。


「お前には"神"を堕とす"力"がある。」


「もったいないとは思わないか?」

「"力"は、使われるために生まれる。」


「なら、使うべきだろ。」


「...でも...。誰かが死ぬかも。」


「当たり前だ。死なない"人間"はいない。」

「それはこの世の定めだ。」


「"神"に抗うだけじゃなく。

世界にまで抗う気か?」


「別にそんなつもりじゃ———。」

うつむくいつき。


「じゃあ、俺らと来るな?」

手を差し出すオリエント。


「いつき!何してるの!?」

少女の高い声。

その少女はいつきに駆け寄ってくる。


「何?お友達?」

その声の主はましろだった。


「あらあら、可愛いお嬢ちゃん。」

ハザエルがましろに手を差し出す。


「気安く触らないで。」

手を振り払うましろ。


ハザエルがナイフを出そうとする。


「まぁまぁ...——。

今日は帰るわ。」

オリエントがハザエルを止める。


「また遊びに来る。」


きびすを返すオリエント。

背中越しに手を振り、歩き出す。


それについていく3人。



———サタンの背中が見えなくなる。



「ねぇ、あの人達なんだったの?」

「妙な雰囲気だったけど。」

ましろはいつきの顔を覗き込む。


「どうして、ここに?」

いつきは話を逸らす。


「いつきなら、ここにいると思って。」

「話したいことあったんだ。」



「そっか。じゃあ、行こう。」

いつきは立ち上がりましろと広場を後にする。


心配そうにカラスが鳴いた。



———ビルの屋上から街を見下ろすアルゴス。


「やはりな———。」


夜の風は冷たく、皮膚を指す。

まるでこれからの出来事を警告するかの様に。

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